やり抜く力を磨けば未来は変わる

5児の母であり医師・研究者である吉田穂波さんによる、『やり抜く力 GRIT(グリット)』の読書コラム。「情熱を『やり抜く力』に変えるには」に続く今回は、どんなふうにやり抜く力を付けることが出来るのかをつづっていただきました。

一つの物事に粘り強く取り組み、やり抜く力を表わす「GRIT」。この概念が登場し、定義されたことは、私たち女性にとっても男性にとっても、大きな福音だと思う。

最近は“女性活躍”“子育て支援”という言葉もよく聞かれるようになったけれど、実態としてはまだまだ男性中心、仕事中心の社会だ。

子育ては本当に“ハンデ”?

私が以前勤めていたような病院であれば、子どもがいる女性は休みの日や夜遅くまではたらきづらいし、上司からすれば子どもの病気など“予測不能”なリスクも抱えている。こうした理由もあって、自分のやりたい仕事に手を挙げられなかったりと、悩んでいる人はたくさんいると思う。

私が子どもを産んだ頃は、職場にいる時間が長い=「やる気」とみなされる雰囲気があったため、自分が二軍落ちし戦力外とみなされたような、やるせない気持ちを感じていた。だがもちろん、経営者側の事情も分かるので、仕方がないとあきらめていた。

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母であるという私の属性や、またいつ妊娠・出産で仕事を離れるかもしれないという可能性が評価に影響するのなら、女性としての“ハンデ”を感じざるを得ない。自分の努力不足を棚に上げて処遇に不満を言っても格好悪いと思い、仕事を辞めて留学したり研究職に転向したりしたけれど、子育て中の女性が期待されないということがずっと心の中で引っかかっていた。

ただ、はたらく人材の評価基準が「やり抜く力」だったとしたら、状況はガラッと変わったはずだ。やり抜く力をはかる指標であるグリット・スコアが高い人は、一つのことを長く、粘り強くやり遂げられる。母であるがゆえに日々の仕事で融通が利かなかったり、職場に長時間いられなかったりしても、中長期的なプロジェクトにおいて、未来の可能性にかけてもらえる可能性が高くなる。

どんなふうになれば理想?と聞いてみる

グリット・スコアは生まれつき決まっているわけではなく、環境を変えたり経験を積んだりすることで自ら伸ばすことができる。本の中では、「興味を持ち、掘り下げること」、「目標を設定し練習をくり返すこと」、「目的意識を持つこと」、「希望を持つこと」という4つのステップを紹介している。

これだけでも納得のいく提案だけれど、子育て中の女性は、「やり抜く力」を内側から伸ばす方法に加えて、本にも書かれている通り、周りからのサポートなど「外側から伸ばす方法」も強い味方になる。

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目標に向かって邁進していても、辛いことや壁にぶつかることは必ずある。あきらめずにやり抜くには、家族や友人、メンター(指導・助言をしてくれる人)から「あなたならできる」と励まし導いてもらうのがいい。

周囲にそういう人がいなければ、自分から粘り強くやり抜く人を探して友だちになることもできるし、先人が書いた本を読むこともできる。自分自身に、「私はどんなふうになれば理想? その先にどんな未来が待っている?」と奮い立たせるような質問を投げかけてみるのもいい。

頼れる人を見極めるには

「やり抜く力」を高めるために、メンターになってくれる人をどうやって見極めればいいのだろう。

私は、「この人!」と思う人がいたら実際に“会ってみる”ことをお勧めする。ブログでもフェイスブックでもいい。その人の発信する言葉から勇気や自信、希望が湧いてくるのであれば、彼もしくは彼女はあなたのメンターだ。

ブログやフェイスブックの投稿からも“メンター”は探せる Photo by MARIA

実際に話をしてみて、相手が自分を尊重してくれる人かどうかも重要。自分のキャリアや生き方にとって直接のかかわりがない人であっても、人間の欲求のうち、高次元にある「自己実現」や「自己承認」といった欲求を満たし、刺激してくれるのであればありがたい。

あるとき、新幹線で3時間の道のりをゆられてメンターになってくれそうな方に会いに行った。ご多忙にもかかわらず時間を30分いただき、人生やキャリアについて教えてもらったばかりでなく、実行力やコミュニケーション力、先達としての感覚など、五感を研ぎ澄ましてその人の素晴らしいところを吸収した。

おまけに、私の頑張りをねぎらう言葉をかけてもらえて、もう、とてもうれしくなり、目標へ突き進もうという気持ちを新たにすることができた。

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メンターは女性に限る必要もないし、本の中の人でもいい。私は本で出会った印象的な言葉を手帳に書き写しては見返すようにしている。そうすると、自分の生活の中にそのポジティブで力強いマインドが刷り込まれ、いつしか自分の血となり肉となるのだ。

子育て世代には素地がある

やり抜く力は、自分にはハンデがある、と感じている人々にとって大きな財産となる。

自分で自分の道を切り開くために「ハンデがあるからこそ、自分にはほかの人にはないやり抜く力がある。絶対にチャンスはある」とあきらめずに続けることが、後ろに続く人の「けもの道」を作り、それがいつか舗装されてもっと歩きやすい道路になることだってあるかもしれない。

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本の最後には「私がやり抜く力を指導するための一番の強みは、よい父親であることだよ。必ず、もしこれがうちの子だったらどうする?と考えるんだ」という言葉が引用されている。子育て世代は、子育てを通じて、今まさに、自分の「やり抜く力」を育んでいる。「やり抜く力」は自分を助けてくれるだけでなく、自分が誰かを助ける時の強みにもなる。

読者の皆さんには、やり抜く力の素地がある。後は自分に合った方法で、力を磨いてほしい。

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