10年後の「わたし」を考える――母でも妻でもない自分って?

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Photo by Koichi Imai

これまで2回にわたって、料理研究家の和田明日香さんと、株式会社ブラウンシュガーファースト代表取締役の荻野みどりさんの対談をお届けしてきました。最終回となる第3回は、一人の女性としてどんな生き方をしていきたいかについて、お二人に語り合っていただきました。

◇荻野◇
最近、“一人の女性としての自分”をすごく意識するんです。周りの女性たちから悩みを相談されることがあるのだけれど、彼女たちは“女性としての悩み”、“妻としての悩み”、“母としての悩み”が全部グチャッとなっていることが多い。だから出口が見えないというケースが多いんですね。

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荻野みどりさん Photo by Koichi Imai

私自身もそうでした。去年の8月に離婚したのですが、今、「娘の父親」である彼とはとてもいい関係ができているんですね。一時期は、それこそグチャッと悩んでいたのだけれど、“妻としての自分”が悩んでいるのだと気づいてからは、ベストな選択をするために二人で話し合いました。パパとママという関係では私たちはとてもいい感じに続いている。今朝も彼が家に来て親子丼を作ってくれたし。

◆和田◆
親子丼! おいしそう……

◇荻野◇
そうなの。子育てしているからというのもあって、自分の味方を切り離していくことがいい選択ではないから自然とそうなったのかもしれないけど(笑)、でも実際うまくいっている。悩んだり傷ついたりしているのは、その人の役割のうちの一つかもしれなくて、それに気付けば悪循環から抜け出せるかもしれない。

◆和田◆
あるかも。悩みが大きいとすべてに悩んでる気がするけれど、実はある一つのことで心を痛くしていて、そのせいで全部がしんどいというときはあるよね。今度からは、悩みを分析してみる。

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和田明日香さん Photo by Koichi Imai

◇荻野◇
特に女性の場合は役割が多いから、役割を切り分けて考えるのがお勧め。

◆和田◆
分析した結果、「なんだ、私求められてないじゃん」って気付くのもいいことかもしれない。母親としての自分や妻としての自分は、勝手に作り上げた理想なのかもしれなくて。自分じゃなくてもいいんだと気付いたら、頼めるところは誰かに頼んでみるとか、子どもや仕事仲間を信じてみるとか……。理想の自分が持っているものをちょっとずつ手放していくと、これだけは大事にしたいというところに気づける気がする。

◇荻野◇
そうやって手放していくことって意識的にやらないといけないよね。

ただの女の子だった自分を思い出す

◇荻野◇
役割で物事を考えてみたとき、いちばん最後に「そうだ、ここ大事にしなきゃダメじゃん」と思ったのが、実は女性としての自分。母として、妻として、みたいな社会的な役割が先にきてしまうから、一人の女性としての私の優先順位がいつの間にか下がってしまっていた。

でも、一人の女性としての自分が本当に傷ついてないかどうか、本当に心から満足しているかどうかはとても大事。もし問題があるのであれば、すぐに改善策に着手してほしい。そうしたらすべてがうまく回り出すような気がしている。無意識にフタをしてしまっている人が多いけれど、あえて一度ちゃんと見てみる。

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Photo by Koichi Imai

◆和田◆
ただの女の子だった自分を見てみるということだよね。いつの間にか、母だったり妻だったり、仕事も始めたりでこんなに大忙しになって。それは決して悪いことじゃないんだけど、たまに思い出してあげるといいのかも。

◇荻野◇
まじめな人ほどそれぞれの役割に求められる仕事をきちんとこなそうとして、いっぱいいっぱいになる。そのせいで子どもに辛く当たったり、自分に余白がなくなっちゃったりするのかなと思うことも。もっと不真面目になって、周りに頼っていい。

それぞれの「私」が気持ちいいバランスで

二人の話は、「一人の女性としての自分」を考えたとき、5年後、10年後の自分はどうありたいか、についても及びました。

◆和田◆
とはいえ私はやっぱり、お母さんとしての自分が思い浮かぶ。私にとって、お母さんであることが今いちばん大事にしたいこと。だからそれは、喜ばしくて誇らしいことなんです。お母さんである私や仕事をしている私、嫁であり妻である私、何でもない私のそれぞれが、その時々で気持ちいいバランスで生きていればいいかなって。

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Photo by Koichi Imai

仕事で言えば今、伝える私と受け取る人に距離があることが課題だと思っています。SNS上でコメントをもらっても、私の伝えたいことが伝わっているかどうかまではわからない。5年後10年後に自分の経験や思いをもっと伝えられる人間になっていたとしたら、より近い距離で伝える仕事がしたいですね。

店を持つのがいいのか、ワークショップをするのがいいのか、今の時点で形はわからないけれど。最近、仕事でいろいろなところに行って人が好きになってきたし、人を信用できるようになったし。食堂でもやろうかな(笑)。

◇荻野◇
明日香さんの食堂に行ったら、みんな元気になれそう。

◆和田◆
目の届くところ、地べたを歩きながら、高みを目指さない。まずは子どもたちのおなかを私のご飯でいっぱいにしながら、できる時間で食にかかわる仕事をしたい。前提としては、私は子どもたちのお母さん。私のご飯を食べてくれるうちは、きちんと食材を選んで自分の手で作って、彼らを大きくしたい。

なくしたくないのは母の愛

◇荻野◇
私はブラウンシュガーファーストという食品の会社を運営しているので、30年後の未来の食の環境はどうなるか、ということをいつも考えています。人工知能(AI)が出てきて、DNAやさまざまな情報から何を食べるべきかをデータが教えてくれるかもしれない。そうなると、食事はお母さんが作るものじゃなくなるかもしれないという危機感がある。

それでも私は、お母さんが子どもにごはんをあげるときの愛情を残したい。合理的ではないし数値化もできないし、無駄もいっぱいあるけれど、お母さんの愛情を未来の食糧のシステムの中に組み込んでいくのがうちの会社の使命だと思っているんですよね。

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Photo by Koichi Imai

◆和田◆
頼みます。みどりさんは本当にかっこいいなあ。片や私なんて「食堂かな〜」なんて言っているのに。

◇荻野◇
明日香さんが言っていることとも通じてる。なくなって欲しくないのは母の愛。だから5年後10年後も間違いなく食に関わる仕事をしてると思いますね。

◆和田◆
母の愛、大事だね。私もそれを守れるような、伝えられるような人になっていたいと思います。

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