子どもに伝えられるような仕事観を持ちたい

明日香,ビビット,荻野みどり,ブラウンシュガーファースト

Photo by Koichi Imai

2016年のオープン時からハレタルの“顔”として活動してくださっている料理研究家の和田明日香さん、有機エキストラバージンココナッツオイルなどの輸入・卸を手掛ける株式会社ブラウンシュガーファースト代表取締役の荻野みどりさん。母であり、はたらく女性であるお二人は、人生観や仕事観で共感し合うところがたくさんあるそうです。対談の1回目では、お二人が今どんな思いではたらいているのかについておしゃべりしていただきました。

◆和田◆
お久しぶり! 今日はみどりさんとお話できるのを楽しみに来ました。

◇荻野◇
私も楽しみにしていました! 最近お仕事の調子はどう?

和田明日香さんは、食育インストラクターとしてレシピ提案をしたり、情報番組『ビビット』でコメンテーターを務めたりと幅広く活動しています。

◆和田◆
この間、『Re島CHANNEL』というWEBサイトの仕事で長崎の五島列島へ行ったんだよね。いま旅のレポートを執筆しているところ。3人の子どもたち(6歳、4歳、2歳)を小学校や保育園に送り出してからが仕事の時間で、お迎えの17時以降は母親に戻る。最近は、仕事でどうしても帰りが遅くなることもあるので、夫に子どもたちの帰宅後の世話をお願いすることもあるけれど。

◇荻野◇
私も平日は5歳の娘を保育園に預けて朝9時半に出社して、18時半くらいまでは会社で仕事をしていることが多いかな。海外にもよく行きます。先々週は1泊2日で上海、先週は福岡と高知に1週間、来週にはフィリピンの工場を視察しに行きます。

◆和田◆
すごいねー!

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和田明日香さん Photo by Koichi Imai

◇荻野◇
“おかあちゃん”がやってる食品メーカーとして、日本中、世界中の生産地を自分の目でちゃんと見るっていうのをすごく大事にしているんです。日本のおかあちゃん代表として、自信を持って子どもたちに食べさせたいかどうかを問いかける。ブラウンシュガーファーストのラベルが、このクオリティ(品質)なら間違いないという安心につながればいいなと思っているの。

◆和田◆
うん、うん。母親として、子どもに食べさせる食品を買うとき、「おいしい」より「安全」「安心」のほうが、選ぶ上で重要。

◇荻野◇
生産地にいくと現地の人たちはすごく情熱を傾けていいものを作っているのだけれど、それを伝えたり売ったりするのが難しくなっている。いいものだから残したいし、何より子どもに食べさせたいという思いでやっています。オーガニック食品は、数が限られていて大量生産ができない。それでも歩み寄ってくれる流通業者さんがいたり、お客さんが支持してくれたりすることに励まされます。

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荻野みどりさん Photo by Koichi Imai

◆和田◆
私も一昨日まで仕事で屋久島に行って、サバブシ(サバで作るカツオブシのような保存食)を作る加工場を訪ねたんです。加工場ではゆでた煮汁さえも余すことなく使う、炊くときに使った灰も肥料にするという無駄のない仕組みがあって、愛を傾けて作っている。「こんなにおいしいものをいただけるんだから感謝して使うのが当然」と言う加工場のおじさんの言葉は、現地に行ったからこそ実感できた。子どもたちにも、お母さんたちにもこの気持ちを伝えなきゃ、と思いました。

はたらく母の背中を見せる

和田さんは23歳で長女、25歳で長男、27歳で二女を出産後、4年ほどは専業主婦をして仕事に復帰しました。荻野さんは出産を機に「子どもに安心して食べさせられるおやつ」を売るビジネスを思い立ち、お子さんが生後4カ月のときにブラウンシュガーファーストを立ち上げました。二人の話は、子育てをしながらはたらくことについて移っていきます。

◆和田◆
実は、仕事を始めたての頃は、専業主婦だったときとは別の意味でモヤモヤしていました。自分が社会で必要とされているかなんてわからなかったし、みどりさんと違って「絶対にこれをやりたい」という何かがあるわけでもなかった。こんなことで子どもといる時間を少なくしてしまっていいのかなと。ただ、子どもも大事だけれど、一人の人間として自分も大事。今は、一人の人間として社会でどうやって生きているかを見せるのは、親としての使命だと思ってる。

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Photo by Koichi Imai

◇荻野◇
わが家では、はたらくお母さんの姿を背中で見せるということも教育の一つだと思っているよ。

◆和田◆
子どもに恥じない生き方をするにはどうしたらいいか。子どもが大きくなったとき、一緒に仕事の話をしたいじゃないですか。そのときに彼らに話せるような仕事をしたいし、伝えられるような仕事観を持ちたい。そう思い始めてから迷いなく、仕事の時間は仕事に専念できるようになりました。

相手の正義はまず受け止める

◆和田◆
この間、ある大きなプロジェクトの最後の日、帰りが夜になったことがあったんです。帰り道でふと家を見上げてみたら、窓に明かりが灯っていて、率さん(和田さんの夫)がご飯を作って待っていてくれる。その経験が実に新鮮で。あそこが私の家で、私の帰るところなんだと思ったんです。でもホッとするのと同時に、「今度は家族の時間か、もうひと頑張りだ」という感情がわいてきたんです。

そのとき、もしかしたら家庭をかえりみずに仕事人間でいるほうがラクなのかもしれないと思って。仕事で疲れて帰ってきたパートナーに、「ご飯ないから」「早く子どもをお風呂に入れて」なんて優しくない態度で接するのはよくないぞ、と。それは私が仕事を始めたからこそ気付けたこと。ずっと家にいて必死だった専業主婦時代はそれどころじゃなかった。

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Photo by Koichi Imai

◇荻野◇
私は母として子どもを育てながら、社長としてブラウンシュガーファーストという会社も育てています。毎日のようにさまざまな立場の人に会う中で学んだのは、みんなの正義を一度受け止めるということ。もちろん私には私の正義があるので一応主張はするけれど、押しつけないことがすごく大事だなと。

特に子育てに対する価値観は人それぞれだから、「はたらくお母さんに育てられる子どもはかわいそう」と言われることもある。それはその人の正義だから、「気をつけます」と一度受け止める。でも私は私で自分の正義をしっかり持っていればいい。それに気づいてから、子育てでも仕事でもフラストレーションがなくなった。

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Photo by Koichi Imai

◆和田◆
すごいなぁ。私はなかなか受け止められないし、イライラして言い返したくなる(笑)。そんなときは家に帰って、「率さん(和田さんの夫)、聞いて! 絶対おかしいよね」と話す。相談すると高いところから優しい風が吹いてきて、「そっかー」って、クサクサしていた気持ちが成仏する(笑)。

うまく頼れば楽になる

◆和田◆
少し前までは、人に弱みを見せたくなかったし、全部自分でできるからやるって思っていたんです。何に対しても自分のやり方でないと気持ち悪くて頼れないという理由もあった。でも最近は、会社の人や近所のママ友なんかでも、「お願いします!」と言えるようになった。そうしたら気持ちがラクになったし信頼できる人も増えている。

◇荻野◇
私はもともと、得意なことに偏りがある人間だという自覚があるから、どんどん人に頼るしかなかった。始めから不得意なことを全部さらけだして、「頼む」「助けて」といった声はどんどんあげてきた。

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Photo by Koichi Imai

◆和田◆
みどりさんみたいな考え方のほうが、周りも助けたくなるし、まったく格好悪くない。何でもかんでもできないわけじゃなくて、できるところはプロとして誰よりも格好よくやるというのがいいよね。

◇荻野◇
私はすぐ白旗を揚げる。「もう無理~」って。「でもここ助けてくれたら、私もっといい仕事する」って(笑)。

◆和田◆
大事、大事。それがあるから周りもみどりさんを助けるし、一緒にやりたくなるんだろうね。

対談の2回目は、4月下旬の掲載を予定しています。
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