人の役に立つことは健康にもいい

医師であり研究者であると同時に、5人のお子さんの母でもある吉田穂波さん。“100年ライフ”の生き方を示唆してくれる本『ライフ・シフト』を読み、勇気づけられた点がたくさんあるといいます。「私の人生は『ライフ・シフト』そのもの」「新しい環境があなたの“資産”を作る」に続く、3回目の読書コラムをお届けします。

私たちの寿命はどんどん長くなっている。つい最近も、日本人の平均寿命が過去最高になったというニュースが流れたばかり。100歳以上になる日もそう遠いことではないらしい。

『ライフ・シフト』では、来るべき“100年ライフ”において人的ネットワークが幸せを左右すると説く。キャリアチェンジを重ねつつ、5人の子どもを育てている私も、周りの人たちに助けられながら何度もハードルを乗り越えてきた。だから人的ネットワークの重要さは身にしみてわかっている。

人とつながることで幸せに

ソーシャルキャピタル――人的ネットワークと健康や幸福の関係に関心を持って研究する身としても、『ライフ・シフト』が示すこの考えには大賛成だ。

私たち人間は社会の一員として生きる存在で、職場や地域社会の中で誰かの役に立ったり感謝されたりすることに自己肯定感を抱く。「おいしいものを食べたら幸せ」なのと同じように「人の役に立ったら幸せ」と感じるのだ。

Photo by MARIA

自分が人の役に立つことは、生涯の健康や寿命にも大きくかかわる。

その理由としては、よい人間関係を築くと精神状態がよくなり、元気でイキイキとした生活を送れ、仕事のアウトプットもよくなり、人との交流がますます活発になることが挙げられる。これに比べ収入や資産は、実は寿命にはそれほど影響しないということもわかっている。

子育て真っただ中のお母さんは、“寿命を延ばすチャンス ”をたくさん持っている、と思うことにしよう。子育てにかかわる地域のコミュニティ、保育園や幼稚園、学校での活動などを通じて、つながりがどんどん広がっていく。「今度の運動会、行く?」「最近、どう?」くらいのちょっとしたおしゃべりが人とのつながりによる安心感やストレス解消に貢献しているのだ。

タスクが多いほど負担は減る

いろいろなことにチャレンジすると確かにタスク(やるべきこと)は多くなる。ただその数に比例して単純に負担が増すかというと、私はそうではないと思う。

子育てをしていると時間がいくらあっても足りないから、時間の貴重さが身にしみてわかる。子どもが病気になったら職場に来ることもできないし、何かあれば学校や保育園から呼び出される。だから仕事ができること自体がありがたく、時間は有限でいつ中断するかわからないというリスクを考えると就業時間中はものすごく集中して取り組める。

Photo by MARIA

保育園の送り迎えのため、残業はできないから仕事を自宅に持ち帰ることもある。ただ、夜中も子どもの夜泣きの声で、いつベッドに戻らなければいけないかわからないから、就業時間中に必死で仕事を進めようという気持ちになる。

読者の皆さんも、学生時代を思い出してみれば、難しい試験の最初の5分と最後の5分では時間の密度が違うと感じられたのではないだろうか。子育て中で周囲からの邪魔が入るのは当たり前、という毎日で、次の瞬間には中断しなければいけなくなるかもしれないと思うと、いやが応でも“スタートダッシュの瞬発力”が身に付く。

Photo by MARIA

仕事が終わった後や休日は、夫や5人の子どもたちと過ごす。土日は子どもを連れて公園に行ったり、ときには銭湯に行ってみたりと大忙しだ。銭湯で地域のおばあちゃんたちの人情に触れ、子どもたちとワイワイ湯船につかると、それだけでもう格別なリフレッシュになる。

私の話はほんの一例だけれど、自分にさまざまな役割があると、ベクトルの向きが違うタスク同士がうまく打ち消し合って、負担を減らしてくれることがある。

Photo by MARIA

もちろん、たくさんのタスクを抱え込みすぎると、ストレス相殺効果にならず押し潰されそうになるので、受援力(他者に心を開いて抱え込まないスキル、助け合うことでお互いにパワーアップする力)を身に付ける必要に迫られるが、それがまたソーシャルキャピタルを強化するという相乗効果を生み出す。

ハレタルの読者の皆さんにも、この春は、常識や思い込みにとらわれず、自分に合ったチャレンジのチャンス、チェンジ(変身)のチャンスをどんどん見つけてほしいと思う。

  • この記事をシェア
トップへ戻る