たまには「初心」を思い出すのも悪くない

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同窓会の幹事をしている大学の同級生から講演を頼まれた。大学の卒業生に向けたミニ講演で、「交通費も出ないし、講師料もないけれど、母校のためにお願い」と言う。一瞬考えたけれど、「たまにはこういうのもいいかも」と、京都の北山にある母校に向かった。

大学の近くまで行くと、18歳から22歳の頃の私を思い出す。30年も前のことが昨日のことのようによみがえってきた。「ここでデートの待ち合わせしたよなあ」「この喫茶店、まだあったんだ」。景色とともに、いろんな過去の物事が浮かんでくる。

「あなたのは、感想文で、論文やリポートじゃない」と、ゼミの先生に厳しく言われたこと。くやしくて、先生に認められるリポートを書きたくて勉強したこと。「大学生になったからには恋愛しろ。片思いも両思いも振られることも振ることも経験しろ。そうしたら、文学がわかるようになる」と言ったのは大好きだった男性の先生。

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「世界の文学を勉強したい」
「英語を生かして、世界中を旅したい」
「国際交流の仕事がしたい」

いろんな夢と希望があった。限りない未来と可能性を信じていた。あの時の私には、できない言い訳なんてなかった。

誰かに「そんなこと無理よ」と言われても、「やってみなけりゃわからない」と言い返していた。それがいつの間にか、できない言い訳を考えている。それだけじゃない。ときには夢を語る仲間に「その考えは甘いかも」なんて否定するようなことを言ってないだろうか。「初心」って何だったろうか。大学のカフェに座りながら、いろいろ考えてしまった。

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女子大生を前にしてのミニ講演。「ちやほやしてもらえるのは、あと3年くらいよ」で、みんな爆笑。

「私たちにだって、みんなと同じ時代があった。でもあれから30年。独身でバリバリ仕事をしている人もいれば、結婚したけれど離婚したり、夫に浮気されたり、介護に追われている人もいる。私だって、阪神・淡路大震災に東日本大震災など、みんなの年齢では、想像できなかったことがいっぱい起こったわ。でも、今だからみんなに伝えたい。人生、いろんなことがあって、嫌なこともいっぱいあるかもしれないけれど、そんな時に変えられるのは、行動だけだ。だからこそ、落ち込んだ時、つまずいた時に行動を変えられる人になっておくことが大切。そのためにも学ぶこと、好奇心を持つこと、興味を持つことも忘れないでね」と、かなり熱く話をしてしまった。

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「こんなおばさんの話、聞いてくれているのかなあ」。話をしながらちょっと不安にもなった。でも、帰り際に1人の女子大生が言ってくれた。「この話、入学式に聞きたかったです」。うれしかった。少しは、響いてくれたかなあ。そして、私も少しだけ初心に戻れた。やっぱり世界をつなぐ仕事をまだまだやりたい。

子育てや家事に追われていると、初心なんて簡単に忘れてしまう。でも、たまには、思い出すのも悪くない。

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