「家族の笑顔」を目標に家庭を支えるプロの主夫

Photo by MARIA

交際相手からプロポーズされ、“家庭に入ること”を決意。2人の娘の子育てと家事を一手に引き受け、毎日大忙し――。

という「男性」がいる。中村シュフさん(37)。日本唯一の「主夫芸人」だ。

主夫になったきっかけは、付き合っていた彼女(現在の妻)から「家庭に入ってくれませんか」とプロポーズを受けたこと。大学卒業後、お笑い芸人として活動していたが、当時は、組んでいたコンビを解散し、芸人を続けるかどうか悩んでいたのだという。そんな時にプロポーズされ、目が覚めた。「『ふつつか者ですが、よろしくお願いします』と家庭に入る決断をしました」(中村さん)。

家事を一手に引き受ける

以来、中村家のほとんどの家事は、夫のシュフさんの役目。

朝5時に起きて妻と2人の娘のために食事を作り、妻を仕事に送り出した後、長女を幼稚園に送る。掃除、洗濯をする一方で、二女を公園や児童館に連れて行ったり、買い物をしたりするうちに、気がつけばもう幼稚園のお迎えの時間だ。一家の夕食を準備して、子どもたちと食事、入浴。19時には寝かしつける。20時ごろ妻が帰宅すると、一緒に食事をとるが妻は22時に就寝。シュフさんはみんなが寝静まった夜に書き物などのデスクワークをこなす――。

本格的な「主夫」だが、シュフさんは、家事自体は苦にならないという。実は、シュフさん、大学の家政学科を出ていて、中学・高校の家庭科教員免許を持っている。いってみれば家事のエキスパートだ。

主夫生活でわかった主婦の気持ち

そんなシュフさんだが、ここまで8年間の主夫生活を送ってきて、初めてわかったことがある。それは多くの主婦が感じている「孤独感」だ。

子どもがいくらかわいくても、日中子どもと2人きりで過ごすお母さんは社会から疎外されている気分になる。それを増長させているのが、「目に見える評価がないこと」とシュフさん。

「外ではたらいていると、昇進や昇給、あるいは仕事の成果が目に見えるけれど、家事や子育てにはそれがありません。わが家の場合は、奥さんによく『ありがとう』と言ってもらえるので僕はその言葉にずいぶん救われている。これがなければしんどいですよ」

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だから、多くの女性たちが専業主婦を経て、はたらきに出たり、地域活動に励みたくなったりする気持ちが、すごく理解できるようになったという。

「外に出てはたらくに当たって、おカネよりも大事なのは自分の理解者や味方に会えることなんじゃないかな。それが理解されずに、『なんで大したおカネももらえないのにそんなことをするんだ』とか、『家のことをおろそかにして』と旦那さんに言われてしまう……。こうなると、打つ手がありません。最近は、政府がさまざまな子育て支援制度を充実させていて、それはそれで非常にありがたいのですが、本当に重要なのは、理解者をつくることのような気がします」

家族の笑顔をMAXにしたい

一時は芸人として芽が出ずに、主夫になったシュフさんだが、最近は、テレビ出演、単行本の出版、講演活動やイベントMCなど、さまざまな仕事を手掛けている。だが、あくまでも仕事は「ムリのない範囲で」を心掛ける。

中村家にとっていちばん大切なことは「家族の笑顔がMAXになること」。それを最大の優先事項と考えると、シュフさんが家の中のことを担当し、妻が外にはたらきに出掛けるという役割分担がベストなんだとわかったという。

中村シュフさん

ただ、この役割分担が今後もずっと続くかというとそうとも限らないそうだ。

「僕が外ではたらいたほうがいいなら、喜んで外に出たい。子どもが成長すればまたベストなバランスは変わるかもしれない。家族の形はいろいろあっていいし、目的に合わせてダイナミックに変化していい。誰が『シュフ』を務めるかだって固定化する必要はないし、家族の中に複数いてもいいと思うのです。その家ごとの正解を探すことが大切ではないでしょうか」

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