おカネのプロが考える「103万円の壁」って?


主婦が仕事をするとき「年収103万円以内」ではたらくのは本当に正解なのだろうか。実は金額にとらわれてはたらき方を決めるなんて、とてももったいない。大切なのは、「自分がどんなふうにはたらきたいか」「どう生きたいか」ということだ。自分の軸を見つけてから、おカネを始め、それに合うライフプランを考えるほうが理にかなっている。

おカネの前に考えること

小さな子どものいるお母さんなら、子どもと過ごす時間をきちんと確保したい人も多いだろう。ファイナンシャルプランナーとしてはたらく私自身、子育ても大切にしたいから今は仕事を少しセーブしている。そうしたら自然と、夫の扶養の範囲内というはたらき方になった。

ファイナンシャルプランナーは、その人が望むライフプランを実現するために、おカネに関するコンサルティングをする。私は家計に生かそうと思って結婚後に資格を取った。その後、2人目の子どもが幼稚園に上がった2013年に、「マネーサロンなないろ」を立ち上げて仕事を始めた。今はお母さんや子ども向けのマネー講座で講師を務めたり、個人のお客さんの相談に乗ったりしている。

子ども向けにマネー講座を開催

子ども向けにマネー講座を開催(中央が筆者)

子どもは小学校4年生と1年生の2人で、まだまだ手のかかる年頃。午後3時ごろには帰ってくるから家で迎えてあげたい。

子育てと両立するために私が選んだのは、外へ出掛ける用事は午前中にすませ、午後からは事務仕事などを家でするというスタイル。ママ向けの講座や、起業家や個人事業主の方からの個別相談は、午前中にカフェで行っている。フルタイムと比べて年収は少なくなるが、今の私にとってはベストなはたらき方だ。

生活の中で何を優先したいかは人によって違う。早くマイホームを持ちたいからもっとはたらきたい人もいるだろうし、キャリアアップのためにフルタイムで仕事をする必要がある人もいる。今は子育てを優先したいという人でも、子どもが大きくなったらバリバリはたらくという道もある。

103万円の壁の本当の意味

自分の中で優先順位を決めたうえで、おカネについてプランを立てるとしっくり来る。

私の場合、今は収入重視ではないので、夫の扶養の範囲内を目安にしている。パート勤務など給与所得者は年収103万円が、所得税などの税金を払うかどうかの分かれ目になる金額だ。

普通、仕事をしておカネを得たら、所得税と住民税を払わなければならない。ただし税金には「控除」という“割引制度”がある。会社員やパート勤務など「お給料」としておカネをもらう人(給与所得者)には「給与所得控除」がある。

Photo by MARIA

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所得税を払う必要があるのは、所得(年収から控除を引いた金額)が38万円を超える場合。所得の算出方法ははたらき方(給与所得者なのか個人事業主なのか)によって変わってくるが、給与所得者の場合は年収から給与所得控除(年収65万1000円~161万8999円までは65万円)を引く。この計算式に当てはめると、所得38万を超えない最大限の年収が103万となる(38万円+65万円)。だから年収103万円以内なら所得税を払う必要はない。一方、住民税は年収100万から発生する。

妻の年収が103万円を超えると、所得税と住民税を払うことになる。それに加え夫が「配偶者控除」を受けられなくなる。税金の割引がなくなるので、その分、夫の税負担も増えてしまう。

106万円の壁って?

でも103万円を超えたとしても、実は損になることはない。

税金は発生するし、夫の配偶者控除は受けられない。でも代わりに「配偶者特別控除」が受けられる。

たとえば妻の年収が110万円、夫の年収500万円の家庭なら、妻の年収が103万円だったときよりも、世帯で支払う税金が約3万円分増える。でも妻の収入は7万円増えている。だから税金分と差し引きしても、世帯全体なら約4万円のプラスになる。

ところが、妻の年収が130万円を超えると事情は変わる。健康保険や厚生年金といった社会保険の扱いが変わり、自分で社会保険に入らなければならず、その分税金も増えるので、年収103万円の場合と大して変わらない手取り額となってしまう。

Photo by MARIA

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16年10月に社会保険の対象が拡大し「106万円の壁」が新設された。年収130万円未満でも、「1カ月の収入が8.8万円(年収106万円)以上」、「勤務時間が週20時間以上」、「勤務期間が1年以上の見込み」、「勤務先が501人以上の企業」ならパートでも社会保険に入ることになったのだ。所得に関する税制は見直しが進んでいて、今後も変わっていく可能性もある。まめにニュースをチェックすることを勧めたい。

おカネの制度や仕組みを知ることは、家族の暮らし方を考えるきっかけにもなる。おカネの前にまず自分がどうしたいのか、人生をどう生きたいのかを長い目で考えてほしい。それで豊かな人生が送れれば、短期的な損得を上回る満足が手に入るはずだ。(ファイナンシャルプランナー・串宮由紀子)

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