幸せホルモンは腸から生まれる

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女性ホルモンや睡眠について調べていると、かならず出合う「ホルモン」がある。“幸せホルモン”とも呼ばれる「セロトニン」だ。セロトニンは、脳が細胞から細胞へ情報を伝える「神経伝達物質」の一つ。うまく分泌されていると安らぎを感じさせることから“幸せホルモン”と言われている。

セロトニンは女性の健康に深く関係している。睡眠不足とセロトニンの分泌が深くかかわっていたり、ストレスをコントロールしようとセロトニンが大量に放出されて枯渇すると片頭痛が引き起こされたりもする。

幸せ物質の90%が腸に

セロトニン不足が引き起こす問題はほかにもある。最近増えているうつ病もその1つだ。うつ病の人は脳のセロトニンが少なくなっていて、治療にはセロトニンを“再利用”する薬が使われている。

ところが、脳内にあるセロトニンは、体全体でみるとほんのわずかだという。「脳の中にあるセロトニンは2%だけ。90%は腸内にあるんです」と、東京医科歯科大学の名誉教授・藤田紘一郎さんが教えてくれた。ちなみに、残りの8%は血中にあるらしい。

「進化の過程から考えると、生物にとって最初にできた器官は腸。脳は後からできた器官で、腸にあったセロトニンの一部を脳に渡したのです。腸90%、脳2%というセロトニンの割合がその証拠。脳のたった2%のセロトニンが、私たちに“幸せ”を感じさせたり“心の病”を引き起こしたりするのです」(藤田さん)

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うつ病が急激に増えだしたのは、2000年ごろから。その背景には、腸内環境の悪化があるという。

セロトニンは、卵や魚、大豆製品、乳製品などに含まれている必須アミノ酸「トリプトファン」を原料として合成される。このとき腸内細菌によって作られるビタミン類が必要になるため、ちゃんと腸内細菌が機能していなかったり、ビタミンが不足していたりすると、いくらこれらの食材をとってもセロトニンは生まれないのだ。

腸内細菌がうまく機能するためには、エサとなる食物繊維が欠かせない。ところが日本人の食物繊維の摂取量は戦後減り続け、今では戦前の3分の1にまで落ち込んでいる。特に2000年以降はガクッと減少し、反比例するようにうつ病の発症が急増した。

腸が「賢い」ワケ

セロトニンを増やして健康を保つには、どうしたらいいのだろう。

藤田先生いわく「脳にある2%のセロトニンを薬を飲んでもう一度取り込もうとするくらいなら、90%を持っている腸がもっとたくさんセロトニンを作ればいいんです」。足りないなら自分で作ればいいということらしい。

セロトニンを増やすには、早寝早起きをし、朝きちんと太陽光を浴びて体内時計を整えることが大切。ウォーキングや、よくかんで食べることも効果がある。腸内で作るためには、とにかく善玉菌のエサである食物繊維をとること。必須アミノ酸「トリプトファン」を含む卵や魚、大豆製品、乳製品も意識してとりたい。

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腸は体内の器官の中で、唯一、脳からの指令がなくても独自に命令を出すことができる器官だという。たとえ食べ物が腐っていても脳は食べろというが、食べると腸は拒絶反応を起こす。食べ物に対してだけではなく、ストレスを受けると便秘や下痢を繰り返すのも、腸を守るための防御反応だ。

「『脳はバカ、腸はかしこい』という本を書いたことがありますが、私たちは“暴走した脳”に操られています。脳が欲しがるものを求めて、それに満足してしまう。腸には大脳に匹敵するほどの神経細胞がある。脳にだまされず、体をコントロールするには腸が大切なんです」(藤田さん)

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よく「ストレスで食べ過ぎてしまう」というが、これはまさに「脳が欲しがる」から食べていたということ。脳が自分の欲求を満たして快感を得ると、その快感を得ようとまた自分の脳の欲望を満たそうとしてしまう。しかし、腸にとって、ドカ食いや甘いものは腸内環境が乱れてしまうので、実はいい迷惑。

私たちは何でもついつい「頭」で考えがちだが、「腸」の立場から考えてみると、今まで感じていた「なんとなく調子が悪い」ことが改善されるかもしれない。

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