「モヤモヤお母さんの駆け込み寺」始めます

Photo by EMIKO SUZUKI

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はじめまして、酒井菜法と申します。私は僧侶ですが、3人の子どもを育てるママでもあります。この度、ご縁をいただいて、『ハレタル』でお悩み相談をさせていただくことになりました。

とはいえ、私もみなさんと同じように育児に悩み、奮闘する毎日を送る母。ここでみなさんと一緒に悩みながら、人生を豊かに歩むヒントを探していきたいと思います。

まずは私の自己紹介から。私は3人きょうだいの長女として、日蓮宗の高応寺というお寺に生まれ育ちました。9歳で得度(とくど:師匠となるお坊さんに弟子入りすること)しましたが、生活は普通の子どもと同じ。大学時代にも具体的な夢や目標があったわけではなく、就職活動時には「私っていったい何なんだろう」「何がしたいんだろう」と悩みました。

一般企業から内定をいただきましたが、「自分は会社に貢献できるかな」と考えたとき、ふと自分の原点を振り返ってみたのです。そして「自分が生まれ育ったお寺という世界の中で仕事がしたい」と思い、日蓮宗の宗務院というところに勤めることにしました。

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宗務院は日蓮宗の中枢機関。お寺の世界ですが、組織ですから上司や部下がいて、昇格もあって、一般の会社と同じです。私は伝道部という、いわゆる営業部のような部署に配属されました。

所属するお坊さんは全員男性で総合職、女性は一般職として事務を担当します。営業部なのでお坊さんを出張に送り出したり、偉いお坊さんたちの会議でお茶を出したり。たくさんの刺激がある部署でした。

25歳でお坊さんに転身

宗務院に勤務して3年目、「私がお坊さんになったらどんなことができるんだろう」「ちょっとやってみようかな」という気持ちで修行に行くことにしたんです。それまで一般職の女性で修行に行った人はいなかったので、有休をすべて消化し、欠勤も使って35日間の修行に行きました。
今まで女性では誰もやったことがないことをする……周囲からは「いったん辞めたら」「そこまでする必要あるの?」という意見もいただきました。新しいことに挑戦する私に期待して応援してくれる人もいれば、疑問に思う人もいる。その間に立たされることが苦しく、生理が止まらなくなったり、嘔吐してしまったこともあります。

それでも頑張れたのは、私の両親が一番に応援してくれたから。両親は私が周囲に何を言われても、それが結果として「後輩にレールを敷いてあげられることになるから、ここは耐えどきだよ」と言ってくれました。また、「周りの言葉を気にせず進みなさい」と応援してくれた上司もいたため、頑張って進むことができました。

お坊さんだって悩む

そんな中、27歳のときにサラリーマンの夫と結婚。子どもが生まれると、宗務院で初めての育休を取ることになりました。でも、復帰後の保育園が見つからない……。そんなときも「これが後輩へのレールになる」と気持ちを奮い立たせ、しばらくはマンションの一室にある無認可保育園に預けて復帰しました。子どもが生後10カ月のときでした。

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当時は夫の社宅のマンションに住んでいたのですが、子どもが歩き出すと下から「うるさい」と言われたり、知り合いのいない土地で一日じゅう誰とも会話しない日があったり。子どもの泣き声に耐えられず、耳をふさいで部屋の隅でうずくまったこともあります。友だちと会いたくても、育児の話しかできない自分が恥ずかしく、バリバリ働く華やかな友人たちに対してトゲトゲしい思いを抱くこともありました。

十分な幸せを得ているはずなのに、私自身は生活の変化に戸惑い、悩んでも誰にも相談できない日々。僧侶という自覚を持たなければならないと思うけれど、実際は僧侶らしくない自分……。それなら「還俗(げんぞく)(僧侶でいないこと)したほうがラクだな」と思うようにもなりました。僧侶でいなければ、どんなに悩んでも恥ずかしくないんじゃないか、と。

そんなとき、実家のお寺に帰ると、四季折々の草花が咲き、小鳥のさえずりや小川のせせらぎが聞こえて。そこが“清浄なる場所”であることを実感して、涙があふれてきたんです。そして「涙があふれるほど、自分の心が苦しかったんだ」ということにも初めて気づきました。そんな苦しみを受け止めてくれるのがお寺という場所。

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「同じように苦しみを抱えているお母さんたちにこのお寺を開放してあげられたら、何か変わるかもしれない」……そんな気持ちで、お寺で育児支援を始めることにしました。

お母さんたちに寄り添って

私は1人目の育児中、「せっかく育児をするなら資格の一つでも取ってみよう」と思い、育児アドバイザーの資格を取得していました。だから最初はベビーマッサージ教室から。そのうち友人がヨガを教えていると聞き、「お寺ならお母さんたちが集まって子どもを遊ばせながらヨガができるスペースがあるし、子育ての経験者が話も聞いてあげられる」と、親子ヨガも始めました。その後も介護者サロン、がんカフェ、マタニティ瞑想、子ども修行など活動が広がり、現在に至ります。

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このように私自身、みなさんと同じように悩み、奮闘してきました。でも、悩むからこそ自分の成長が感じられるし、その成長は母になったからこそ得られるものと実感しています。母になるって大変なこと。悩みは尽きません。私もなかなか毎日は笑って過ごせないのが課題です。こんな私ですが、このお悩み相談を通して少しでもみなさんのお力になれればうれしく思います。

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