腸内フローラを育てる食べ物、壊す食べ物

Photo by MARIA

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つい数年前まで、腸内細菌は100種類100兆個と言われていた。ただここ数年で研究が進み、腸内細菌の種類はもっと多いことが判明した。なんと3万種類1000兆個、重さにして約2キロの腸内細菌がおなかの中にいることがわかったのだ。

「数年前までは、便を培養して生えてきた菌の数を数えていましたが、今は菌の遺伝子レベルまで解析できるようになりました。その結果、善玉菌と悪玉菌はそれぞれ全体のほんの1割ずつほど、7割以上は善玉菌でも悪玉菌でもない日和見菌が占めていることがわかった。日和見菌は机の上や肌に付着している菌など、培養しても生えてこないようなどこにでもいる菌です」(東京医科歯科大学名誉教授・藤田紘一郎さん)。

しかし、何の変哲もないこの日和見菌が重要なのだ。

善玉菌のエサは食物繊維

日和見菌はその名のとおり“気”が変わりやすい。善玉菌が優位になるとワーッ“善玉寄り”になり、悪玉菌が優位になると今度はワーッと“悪玉寄り”に。たった1割ずつしかいない善玉菌、悪玉菌のいずれの力が強くなるかどうかのカギは、日和見菌が握っている。

腸内細菌の種類は多ければ多いほどいいのだが、その種類はなんと1歳までで決まってしまう。

「ビフィズス菌や乳酸菌などいい菌だけを取り込んでも、それは全体のほんの一部なので、どうやってもその割合を増やすことはできません。赤ちゃんはおなかの中では無菌状態で育っているので、生後1年の間にいろんなものをなめて日和見菌を増やしているのです」(藤田さん)。

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泥んこ遊びをしている子はアレルギーになりにくい、子だくさんの家や農家、特に酪農家はアレルギーになりづらいというデータもある。さまざまな種類の腸内細菌を持つことで免疫力が高まるため、小さいときにより多くの菌の種類を持つことが大事だ。

とはいえ、大人の私たちはもう手遅れかというとそうではない。

おなかの中にいる菌の種類が少なくても、最終的に全体の数が多くなればいい。悪玉菌もその名前から悪者扱いされることが多いが、悪玉菌の代表格・大腸菌であっても人間には不可欠な菌。腸内環境さえ整っていれば問題はないという。そのためには善玉菌の好きな“エサ”である食物繊維をとる必要がある。

バリア機能を高める

食物繊維は便通をよくするだけでなく、もっとすごいことをやっている。

善玉菌が食物繊維というエサを食べると、腸のエネルギーになり腸壁を守ってくれる「短鎖脂肪酸」ができる。この物質は、代謝を活発にして肥満や糖尿病を改善し、アレルギー反応を抑えたりバリア機能を高めたりもしてくれる。

しかし、普通の人の4%、糖尿病患者の28%の腸に穴が空いている。本当は漏れるはずのない腸内細菌が、血管の中を流れているというのだ。これは、気づかないうちに腸に穴があく「リーキガット(腸管壁浸漏)症候群」。ちなみに食物アレルギーの人は、リーキガットであるケースもある。卵や牛乳などのタンパク質が分解される前にそのまま体内に漏れ、アレルギー反応を起こしてしまうのだ。

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食物繊維が多い野菜をあまり食べないと、腸に穴があいたり免疫力が落ちたりしてしまう。腸内細菌が好むのは、水溶性の食物繊維。ワカメや昆布などの海藻類、ごぼう、キャベツ、オクラなどの野菜。納豆やきなこ、アボカド、バナナにも食物繊維が豊富に含まれている。納豆菌には、日和見菌を増やし、腸内フローラを活性化させるはたらきもある。

腸内細菌のエサが減ると免疫力が落ち、アトピーや喘息、花粉症にもなりやすくなる。さらに食物繊維の摂取量が減ると、幸せ物質と呼ばれるセロトニンやドーパミンが脳に行き渡らなくなり、うつ病など心の病気にもなりやすい。

腸内フローラがいちばん美しい状態は、善玉菌がエサとなる食物繊維をたくさん食べて、短鎖脂肪酸をたくさん作って、腸壁をきちんと修復している状態。食物繊維は単なる便秘解消のためではなく、健全な腸内環境と免疫力アップのためにも重要だ。

遺伝で決まるのは5%

食べるものによってどの菌が増えるかは変わってくる。たとえば、別名“おデブ菌”と呼んでいるフィルミクテス部門の菌が好きな、砂糖ばかりの加工品や精製された白米や小麦を使ったパンやパスタなどを食べているとどんどん太るそうだ。「夫婦は食べるものが似ているから、だいたい顔つきも体型も似てくるんですよ」と藤田さんは言う。

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病気も、遺伝子ではなく腸内細菌が決める割合が大きいのだという。「病気のうち遺伝子で決まるのはたった5%だけ。100歳で死んだ人と50歳で死んだ人の遺伝子を調べても、ほとんど一緒だというデータもある。違うのは生活習慣です」(藤田さん)。

たとえば「糖尿病になりやすい家系だから」と言う人がいるが、それは家族で同じようなものを食べているから。腸がよければ、病気になりにくい体質に変えていくことはできる。

まずは食物繊維たっぷりの食事をとって、善玉菌が喜ぶ腸内環境作りから始めてみたい。

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