一年でいちばん過酷な冬を乗り切る漢方養生の知恵

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今年は観測史上初めて11月に東京都心で雪が積もり、いつもより早くインフルエンザがはやり始めた。この冬はなんだか手ごわそう。つらい冬を乗り切る知恵があるならぜひ知りたいと、漢方養生の専門家、小野満幹彦さんの元を訪ねた。

暖房の使いすぎは逆効果

夏や秋の記事でも紹介してきたように、漢方養生では36.5度の体温を維持することが健やかに過ごす大きなポイント。だから、気温の下がる冬は一年で最も過酷な季節なのだ。

「体温を維持しなければならないから、冬はずっと体を燃焼させている状態。燃やすために酸素を使うので体は酸化し、“傷んで”しまうんです」(小野満さん)。冬は暖かいところで、ゆっくり過ごすのが一番よいそうだ。でも、忙しいお母さんはそうもいかない。

大事なのは体を冷やさないことだけれど、暖房の使いすぎには注意が必要だ。理由は「温度差」。漢方養生では、寒い季節を乗り切るエネルギーを外へ漏らさないよう、冬は毛穴が閉まると考えられている。でも暖房で暖かくしすぎると春のような状態になって毛穴が開く。毛穴が開いた状態で外へ出ると、冷えをより強く感じてしまうのだ。

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暖房で外との温度差を作れば作るほど、季節の変わり目のような状態を何度も体感することになる。それが体の不調を招くので、とにかく「外との温度差を作らないよう、暖房は控えめにするのがベストです」と小野満さん。

暖房の使い方にもちょっとした知恵が必要だ。上半身は心臓や脳を守るため血の巡りがよく体温を維持しやすいけれど、下半身は冷えやすい。でもエアコンやファンヒーターなどを使うと、温かい空気は上に、冷たい空気は下にたまりやすいので、ただでさえ冷えやすい下半身をさらに冷やしてしまいがち。

「お勧めはこたつです」と小野満さん。空気を乾燥させることもないし、下半身を温めて「頭寒足熱」の状態を作りやすい。「昔ながらの“こたつでみかん”って、健康にいいんですよ。みかんには保温や血流改善の働きもありますし、甘くてさわやかな皮の香りが気の巡りもよくしてくれます」。

体を温めて潤わせる食事

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食べ物で体の内から全身を温めることも大切だ。ネギやショウガといった体を温める食材をうまく使うことがポイントだけれど、「乾燥」に備える食材も意識したほうがいい。特に肺は潤いが必要な臓器なので、乾燥すると免疫が落ちて風邪を引きやすくなるという。「体を温めるのは東洋医学で言う“陽”、体を潤すのは“陰”。陰と陽のバランスをうまく取ることが、冬の食事のポイントです」(小野満さん)。

スパイスを多用したエスニック料理や辛い料理は体を温めてくれるけれど、体が乾いてしまうという。南国の湿気が多い地域の料理は体を乾かす作用が強い。その食べ物がどこから来たのか、イメージすることも必要だ。

その点、和食には陰陽のバランスの取れている料理が多い。

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たとえば秋から冬にかけて旬を迎えるサバには体を潤す“陰”の作用があり、それを焼いて食べると“陽”になる。陰陽のバランスが自然とうまく取れる料理だ。“最強料理”はいろいろな食材をバランスよく取ることができる鍋料理。

魚の“あら”の部分を使った石狩鍋やアンコウ鍋などはまさしく全身を潤してくれる。体を温める酒かすやすりおろした山芋を普段のおみそ汁に入れるのもいい。肉を食べると滋養強壮になるけれど、消化に時間がかかるのでなるべく日中に食べるのがお勧め。

また、ほかの季節よりも朝ごはんを意識したほうがいいという。「菓子パンなど軽いものを食べただけで出掛けていく人もいますが、それでは体は温まりません。病気になって当たり前ですよ」と小野満さん。朝ごはんにお勧めなのは、燃焼効率のよいお米。それに温かい具だくさんのおみそ汁、タンパク質が多くとれる卵料理や納豆、魚の切り身などを添えると効果的だ。

夜はしっかり眠る

睡眠にも気配りを。寒さに耐えようとがんばった体を休めるため、夜はしっかり寝たほうがよいけれど、何かと忙しい年末年始は生活も乱れがち。

「飲み会などが増える時期ですが、不養生をしてしまったあとは胃の負担を軽くする料理を食べ、たくさん寝られる時は寝るなど、自分でバランスを取ることが大切です」(小野満さん)。家の中で簡単な体操やストレッチをして、体を動かすのも忘れないようにしたい。

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過酷な冬の先には春が待っている。「しっかり免疫を高めた状態で春を迎えられたら体も楽だし、気温の上昇につれて気分も上がっていきます。これこそ四季がある国に生まれた醍醐味です」と小野満さんは話す。

日々の生活にちょっとした漢方養生の知恵を取り入れ、冬を健やかに乗り切りたい。

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