ほめ方一つで子どももお母さんも変わる

Photo by MARIA

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「もうおしまいね」と言ってもなかなかやめない。「走らないで」と言っても走り出す。「イヤだ!」と大声で泣いて怒る……。子どもは得てして、大人の言うとおりにならない。そんな子どもを、ついイライラして感情的に怒ってしまい、そんな自分自身にいらだってしまう。親なら誰しも、大なり小なりそんな経験があるだろう。

でも実は、親が「伝え方」を変えるだけで子どもの行動が変わり、そのことで親自身も気持ちよく過ごせる。ペアレントトレーニング(ペアトレ)は、そんな気づきを与えてくれるプログラムだ。

子育て以外にも使える

ペアトレはもともと知的障害や自閉症などの子どもを持つ家族のためのプログラムで、1960年にアメリカで始まった。日本では医療の現場で取り入れられ、最近では一般家庭向けのプログラムへと広がりを見せている。

お母さんが子どものサポート法を知ることは大切

お母さんが子どものサポート法を知ることは大切 Photo by LITALICO

子どもの学習教室を運営するLITALICO(リタリコ)も、今年4月、親向けにペアトレのプログラムを始めた。「お子さんが学習教室に通うのは週に1回。それ以外の多くの時間を過ごすのは家庭です。かかわりの多い保護者の方が、お子さんの力の伸ばし方やサポート法を知ることが大切だと考えたんです」(ペアレントサポートグループ・ファシリテーターの井田美沙子さん)。

ペアトレのいいところは、子どもが変わることで親も変われること。ペアトレを受けた後、家で実践してみたら1週間で子どもがみるみる変わった、と明るい表情で学習教室にやってくるお母さんもいるという。「子育てはもちろん、夫や友人など、ほかの人たちとのコミュニケーションにも使えるスキルが身に付きます」と井田さんは話す。

“褒める”が効かないことも

リタリコのペアトレは鳥取大学で応用行動分析、臨床心理学を専門とする井上雅彦教授が作成にかかわったのだそう。講座は、自分と子どもを紹介するところから始まる。子どもだけではなく、親自身の好きなこと、得意なこと、苦手なことをワークシートに書き出していく。「たとえば、“私は褒めるのが得意みたいで子どもの反応もよかったから、言葉で褒めることを意識しよう”とか、自分に合ったやり方が見えてくるはずです。苦手なところはできる範囲でいいんです」(井田さん)。

ちなみにワークシートに子どものことはすらすら書けても、自分のことが書けないお母さんがたくさんいるという。筆者が受講したときも同じで、いかに視点が子ども中心になっているかに気がついた瞬間だった。

Photo by LITALICO

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子どもの困った行動について「困った」と思う前に、「ここまでできたんだね!」など、まず褒めるところを見つける。行動しやすい環境を整え、伝え方のコツを学ぶ。そして困った行動が起こるきっかけやその後の対応をしっかりと観察できるようなスキルを身に付ける。全6回の講座はこんなふうに進み、講座の合間に家庭でトライしてみることでお母さん自身も少しずつ変わっていく。

「褒める」と一口にいっても、「すごい!」「上手だね」が必ずしも正解というわけでもないらしい。私もこれまで通り一辺倒な褒め方はしていたが、娘は納得のいかない顔をよくしていた。だが講座で「言葉よりも体で示したほうが効く場合もある」ということを知り、さっそく「ハイタッチ」で実践。すると、途端に娘の笑顔が増え、私もハッピーになれた。

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さらに、子どもに“困った行動”があるなら、「なぜだろう」と考え、準備と工夫ができないか考えてみることも大切だ。

たとえば食事中に立ち上がってしまう行動があるのは、机の上に遊びを連想させるおもちゃが置いてあったからかもしれない。食事の前に子どもとゲーム感覚で片付けをしてみると、楽しく取り組めて褒めてあげることもできる。ちょっとした準備と工夫で、子どもの行動もお母さんの心の持ちようもまったく変わったりする。

夫婦関係にも使える

ペアトレのこうした考え方は、夫婦関係にも応用できるそうだ。

ある夫婦は、子どもの1週間のスケジュールを書き出して“見える化”することを始めた。すると夫が妻の大変さや困りごとについてわかるようになり、忙しい日には手伝いをかって出てくれるようになったそうだ。

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夫婦の「得意なこと」「苦手なこと」を互いに知り、どんな「褒め方」なら相手が喜んでくれるかを考えてみるのもよさそうだ。たとえば妻に直接ではなく子どもに向かって「お母さんの料理って本当においしいよね」と言ったり、夫に家事の協力を頼むとき怒りをぶつけるのではなく「手伝ってくれると助かる」と言ったりすれば、互いに気持ちよく過ごせるのではないだろうか。

統計を取ると、子どもの困った行動が減れば、親の育児ストレスも明らかに下がるという。「お母さんたちの自己肯定感をもっと上げたいんです。はっきりとした“困りごと”がなかったとしても、ご自身が思い描いている母親像との隔たりがあるならペアトレのエッセンスを生活に取り入れてもらいたいです」(井田さん)。日々続く子育てはもちろん、これから続いていく人生においても人間関係を整えるうえで役に立ちそうだ。

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