語学ボランティア講座で“広がる”世界

Photo by Koichi Imai

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日本を訪れる外国人観光客が、一段と増えた。

東京の駅では、見るからに乗り換えに迷っている外国人を、ときどき見かける。「Can I help you?」の一声が出せたら、なんとなく会話は続くだろう。でも、その一歩がなかなか踏み出せず、横を素通りしてしまう――。

そんな私のような人が、当たり前のように、自然と外国人に話しかけられたら、東京は今よりもっと“温かい街”になりそうだ。

簡単な英語でも大丈夫

来日する外国人に触れ合う機会が増え、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックでは自分も何かかかわりを持ちたい。そう思っていたところ、東京都が「外国人おもてなし語学ボランティア」の育成講座を開いているのを知った。

この講座は、「日々の生活の中で困っている外国人を見掛けたら、簡単な英語でいいから話しかけて、道案内など手助けをしてあげてほしい」という趣旨で昨年から始まった。対象は15歳以上で、都内在住・在勤・在学の人たちだ。

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修了者は「外国人おもてなし語学ボランティア」として東京都生活文化局に登録される。今のところ活動として決まったものはないけれど、日常生活の中で、外国人の手助けができるようになることを目指している。

オリンピックのボランティアとは異なるものの、かなりの人気を集めている。毎回講座には申し込みが殺到し、多いときは12~13倍もの倍率になるそうだ。

「自分なりのペースで、何らかの形でオリンピックにかかわりたい、という人は多いはず。活躍できる機会はたくさんあると思います」。そう話してくれたのは、東京都生活文化局の山崎利行さん。自分にできる範囲でオリンピックにかかわるヒントをくれるのがこの講座だ。

ジェスチャーで伝えるには?

講座は「おもてなしコース」と「セットコース」の2種類。おもてなしコースはTOEIC 500点以上など、簡単な日常会話に不自由しない人が対象。一方、セットコースは初心者レベルの人向けで語学講座もあるので、あまり英語に自信がない人でも気軽に参加できる。

語学

テキストを使って実践的な内容を学ぶ

9月中旬、セットコースの最終日にお邪魔した。セットコースは、5コースを3日間に分けて開いている。取材した日は最終日だったので、およそ35人の受講者はすでに打ち解けた雰囲気。参加者の約7割は女性で、年齢層はシニアから学生まで幅広いが、子育て中の人もチラホラいた。

セットコースでは、1日目に「おもてなし講座」を受け、外国人とのコミュニケーションの取り方や、ボランティアの精神などについて学ぶ。どうすればうまく、言いたいことが伝わるか。自分だったら、外国でどういうふうにおもてなしされたらうれしいかなど、グループワークで考えを出し合う内容が多い。

2日目と3日目は語学講座。あいさつや道案内など、実際のシチュエーションを想定しながら、英語での言い回しを教わる。日本文化や、日本でのマナーについて外国人にわかりやすく伝える方法に加え、ジェスチャーで気持ちを伝え合うノウハウなどについても、知識を深められる。

受講者どうしのコミュニケーションも活発

受講者同士のコミュニケーションも活発

この日の講座は、パスポートをなくしたり、具合が悪くなったりした外国人観光客をどう手助けするかがテーマ。テキストの例文を参考に、隣の席の人と会話の練習や、意見の交換をする。「救急車を呼ぶとおカネがかかる国もあるから、先にちゃんと説明しないと不安がられませんか?」など、講師の先生への質問も相次いだ。

受講者の一人、31歳の女性は、「今までよりずっと知識が広がりました」と話してくれた。普段からよく外国人に道を尋ねられるが、片言の英語ではなくきちんと答えられるようになりたくて受講を決めた。3日間の講座を受けてみて、初対面の人への話しかけ方や、よくある質問への答え方などが幅広く身に付いたそうだ。

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受講のきっかけでは、「オリンピックを意識して」という声が多かった。41歳の女性も、「普段は3人の子どもの育児と仕事の両立に忙しいが、リオのオリンピックを見ていて、私にも何かできることはないか考えるようになって」、講座を受けたという。この日も会社を休んで参加したが、「思っていたより本格的な内容で、やりがいがあります」と笑顔を見せた。

セットコースでは随時、席替えも行っていて、いろいろな人と話をするきっかけが作られている。講座の合間に昼ご飯を一緒に楽しむほど仲良くなる人も多い。

託児サービスも

「街で困っている外国人を見かけたら、完璧な英語じゃなくていいから、もっと気軽に声をかければいいんだ、ということをわかってもらえたら。一人一人の声掛けが、日本に来てよかった、と思う外国人観光客を増やすことにつながります」(山崎さん)。

2017年1月からは託児サービスの設置も予定されていて、子育て中でも参加しやすくなりそうだ。

悩ましいのは、倍率の高さ。でもこの講座はもともと、2019年までに3万5000人を育成するというスケールの大きなもの。市区町村でも似たような講座が開かれているので、挑戦してみてほしい。受講がきっかけで広がる世界は、きっとある。

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