20~30代の乳がんは本当に増えている?

Photo by MARIA

Photo by MARIA

若い女性の乳がんが増えている――。最近、そう聞くことが多くなった。先日も有名人が若年性乳がんになったというニュースがあった。若い人の乳がん、「若年性乳がん」は35歳未満もしくは40歳未満で発症した乳がんのこと。私にとっても人ごとではない。

でも自分の周りで乳がんになったと聞くのは、もっと年上の人ばかり。乳がんのピークは40代後半ともいわれているけれど、実際はどうなんだろう?

どの世代でも増えている

「若年性乳がんが増えていると言われていますが、実際はそれほど急増しているわけではありません。心配すべきなのはもっと上の世代です」

がん研究会有明病院・乳腺センター長の大野真司先生はそう話す。

乳がんは女性にいちばん多いがんだ。2012年に日本全国でがんと診断された女性は約36万人、乳がんは約7万4千人と全体の2割に上った。20~30代に絞っても同じで、全体の3割が乳がんだった。

20~30代でも乳がんがいちばん多い。とはいえ、患者が増えているのはこの世代に限ったことではないという。

がんには遺伝も関係するけれど、それよりも生活習慣の影響が大きいとされる。ストレスや運動不足、食生活の変化などでどの世代でもがんが増えた。

Photo by MARIA

Photo by MARIA

「30代の乳がんは20年前に比べて2倍ほどになりました。しかし50代以降ではそれ以上に増えています」と大野先生。「むしろ30代では増加がおさまりつつあり、40代でもその傾向にあります。20代ではこの数十年、患者数はほとんど変わっていません」

今、いちばん乳がんが多いのは60代の女性。この年代は団塊の世代に当たり、人数が多いから、患者の数だけを比べると当然この世代でいちばん多くなる。

「乳がんは、20年前には40代、10年前には50代に多いとされていましたが、それは団塊の世代がその年代だったからです。今後は70代、80代の乳がんが増えるのかもしれません」(大野先生)

“たちの悪い”がんが多い

若年性の乳がんだけが特に増えているとはいえない。でもほかの年代に比べると“たちの悪い”がんが多いという。

大野先生が紹介してくれたのは、日本乳癌学会が発表している約2万4000人の乳がん患者のデータ。34歳以下と35歳以上に分けて、若年性乳がんにどんな特徴があるのかを比べている。

それによると、若年性では35歳以上に比べて進行している乳がんが多かった。進行が早く再発率の高い「トリプルネガティブ」と呼ばれるタイプが多いという特徴もある。

乳がんは副作用の少ないホルモン剤治療が行われることも多いけれど、若年性の場合は強い副作用のある抗がん剤が必要になることが少なくない。

医学の世界では、患者が5年間生き残れば「がんが治った」と考えられていて、「生存率」と呼ばれている。乳がんの生存率はどの年代でも80%以上で、ほかのがんに比べると高いと言えるかもしれない。

それでも、50歳以上90.8%、35~50歳94.6%に比べて、34歳以下では89.8%と、若年性のほうが低い。

Photo by MARIA

Photo by MARIA

それに若年性の場合、遺伝性の乳がんという可能性がほかの世代よりも高い。遺伝子の異常によるもので、40歳未満でがんになることも多いという。すべての乳がんのうち5~10%とそれほど多いわけではないけれど、遺伝性であれば反対側の乳房もがんになったり、卵巣がんになる確率が高くなる。

検診にはデメリットも

心配していたほど若年性乳がんが増えているわけではないことはわかった。けれどもし乳がんになったら、たちの悪いものが多いというから、あまり安心はできない。早いうちから検診を受けたほうがいいのだろうか。

大野先生は、あまり心配しすぎないほうがいいという。

「確かに若年性の乳がんには、上の世代よりも進みやすいものが少なくありません。しかしその発症率はとても低く、40代では乳がん全体の20%ほどですが、30代では約6%、20代では1%もありません」

それに検診にはメリットばかりでなく、デメリットもあると注意する。検診を受けると「がんの疑いあり」とされる人が必ず出てくるけれど、その中で本当に乳がんだという人はかなり少ない。

「がんの疑い」とされれば精密検査が勧められるものの、結果が出るまで余計な精神的ストレスがかかることになり、検査にはおカネもかかる。

心配だからとマンモグラフィを受ける人もいるけれど、この検査も万能ではない。マンモグラフィでは乳腺組織としこりは白く映るため、乳房の乳腺濃度が高いと乳がんが見つけにくい。

若いうちは乳腺濃度が高いので、一般的に30代まではマンモグラフィを受けるメリットはあまりなく、医療被曝のデメリットのほうが大きい可能性もある。

もっと関心を持って

「まずは自分の乳房にもっと関心を持っていただきたいです」と大野先生。乳房の健康を気にしている人は意外に少なく、何年も気にしたことがないという人もめずらしくないという。

家族に乳がんの人がいる場合はもっと積極的に検診を受けたほうがいいかもしれないけれど、そうでなければ場合は検診のメリットはあまり大きくないようだ。

実際、若年性乳がんの半分以上は、患者さんが自分で見つけている。「20代、30代であれば、普段から自分で乳房をよくチェックして、異常を感じたら病院に行くことをお勧めします」(大野先生)。

有名人ががんを患っているというニュースを他人事と思わず、いつか自分がなるかもしれないと日頃から意識を高めておくことが大切なのかもしれない。

  • この記事をシェア
トップへ戻る