“帝王切開だと母性が育たない”は本当?

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赤ちゃんもお母さんも元気。でも、「自然分娩じゃなくて帝王切開で産んだこと」を受け入れられなくて、モヤモヤとひとりで悩んでしまうお母さんがいる。

今は5人に1人の妊婦さんが帝王切開で産んでいるけれど、妊娠中の母親学級では自然分娩の話がほとんど。帝王切開について知る機会は少ない。帝王切開で産んだ人の中にはつらい思いを抱えている人が少なくないことも、あまり知られていない。でも、逆子、赤ちゃんにへその緒が巻きついた、お産がなかなか進まなかったなど、さまざまな理由で、誰にでも帝王切開になる可能性はある。

幸せなお産のはずが…

私は4年半前、緊急帝王切開で長女を産んだ。母子ともに無事だったけれど、ただただ悲しかった。マタニティヨガに、ウォーキング。自然分娩のために体力をつけようと気をつけていたのに、まさか突然、帝王切開になるとは思っていなかった。

そんな私の気持ちも知らず、お見舞いに来てくれた義母にかけられた言葉は「立ち会い出産ができなくて残念だったね」。本当は私だってそうしたかった。悔しくて悔しくて、入院中の部屋で一人泣いたことは忘れない。幸せなお産のはずが、とても怖くて嫌な思い出に変わってしまった。

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「身近な人から言われたことで、心が傷つくお母さんは多いですよ。おなかの傷よりも、言葉で受けた傷のほうが深刻です」と、帝王切開カウンセラーの細田恭子さんは話す。

細田さんは3人の娘を帝王切開で産み、長女は25歳になった。2000年に、帝王切開の情報サイト「くもといっしょに」をオープン。10年に始めた「お産振り返りの会」など、帝王切開を体験した人の心に寄り添う活動を続けている。活動を続ける間、医療は進歩したけれど、帝王切開で産んだお母さんたちの悩みは尽きないという。

まったくの迷信

「よく聞くのは『帝王切開で産んだ赤ちゃんは産道を通っていないから我慢強くない』という言葉。傷つく方はとても多いです」と細田さん。細田さん自身、知人から同じことを言われて、自分も赤ちゃんも一緒にけなされているみたいだと感じたという。「自然分娩じゃないから母性が育たない」と言う人もいるけれど、まったくの迷信。赤ちゃんの精神的な発達に悪い影響を及ぼす根拠はないし、帝王切開でももちろん母性は育つ。

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「麻酔がきいて、楽でよかったね」「保険がきいて、お金がたくさん戻ってきてよかったね」。こんな心ない言葉に傷つく人もいる。

「たとえば、胃や腸の手術をした人に『楽でよかったね』とは声をかけませんよね。帝王切開もたいへんな手術です。年配の方や身内ほど専門家の言うことを信じるので、医療従事者の皆さんには命の危険性やお母さんの頑張りをきちんと伝えてほしいと思います」(細田さん)。

産み方よりも育て方

帝王切開でのお産の後、自信をなくして産後うつになったり、子育てに前向きになれなかったりする人もいる。夜泣きがひどいのも、子育てが思いどおりにいかないのも、子どもが反抗するのも、ぜんぶ「帝王切開だから」と考えてしまうケースもあるそうだ。

こんなふうに悩んでしまうのは「気持ちの切り替え」ができていないから。予定はしていなかったのに何らかのトラブルで急に帝王切開になる「緊急帝王切開」だと、お母さんの心の準備ができないまま手術が進む。事前に決まっている「予定帝王切開」でも、納得していないと「手術が本当に必要だったのだろうか」と、あとから悔やんでしまうこともある。

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「大切なのは産み方よりも育て方。産み方は自然分娩か帝王切開かの二通りですが、育て方は100人いたら100通り。赤ちゃんのかわいい、今しかない笑顔を見逃さないでほしいと思っています」と細田さん。もし悩んでいるなら、信頼できる人に話を聞いてもらったり、素直な言葉で感情をノートに書き出したりして、気持ちを整理する方法もある。

帝王切開で産んだというお母さんが周りにいて、もし誰かにお産のことを話したそうにしていたら、「大変だったね。どうだった?」と聞いてみてほしい。ママ友と自然分娩の話で盛り上がるように、帝王切開の話を聞いてもらいたいと思う体験者は多いはずだ。

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