女性ホルモンと“質のいい”眠り

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30~40代の日本人女性は、ほかの世代や男性に比べて睡眠時間が短いらしい。

日本人の平日の平均睡眠時間は、7時間15分。しかし、30代女性は7時間05分、40代女性は6時間41分と、女性の睡眠時間は短い(2015年NHK放送文化研究所「国民生活時間調査」)。そもそも日本人の睡眠時間は世界的に見ても短く、睡眠時間がいちばん長いフランス人と比べると60分も違うんだとか(OECD調べ)。

家事や育児で眠れない

「日本では、家事や子どもの世話、親の介護にいたるまで女性が抱え込むことが多い。女性たちは睡眠を犠牲にして対応しているんです」。そう話してくれたのは、スリープ&ストレスクリニック院長の林田健一さん。

夜遅くに帰宅する夫の世話、朝5時に起きて子どものお弁当作り、夜中に寝ぼけて起きてきた義母の介護……。夜中に介護や授乳で起きると眠りを中断することになるので、睡眠のリズムはおかしくなるし、もちろん睡眠不足にもなる。

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睡眠障害にはいろいろな種類があるが、世界的に見ても男性より女性のほうが多い傾向にあるのが「不眠症」と「むずむず脚症候群」。

睡眠不足は絶対的に睡眠時間が足りていない状態だが、不眠症は寝たいのに寝つけなかったり、夜中に何度も起きてしまって脳が休まらず、昼間の行動にも支障が出てしまう状態を指す。むずむず脚症候群は、その名のとおり、脚にむずむずするような不快感を生じて、じっとしていられなくなり、夜なかなか眠れなくなる。貧血や妊娠中の人に起こりやすい。

女性ホルモンと睡眠が関係?

ではなぜ、女性は不眠になりやすいのだろう?

「女性は月経周期によって体温やホルモン分泌が異なるため、均一の条件でデータをとることが難しく、成人女性を対象にした研究が難しく、科学的な解明が十分とは言えません」(林田さん)

女性の体は、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が増減しながら、月経〜排卵〜月経を毎月繰り返している。

不眠や眠気にかかわるのはプロゲステロン。排卵後に増え、眠気や倦怠感を出す。さらに「ヒトは体温が下がると眠くなりますが、排卵日から月経までは高温期が続くので、体温が下がりにくくなる。そのため、排卵日から月経までは一般的に眠りづらく、眠気を感じる女性が多い」(林田さん)

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また、妊娠するとプロゲステロンはずっと分泌され続ける。「そういえば妊娠初期はいつも眠かったな」という人は、それはホルモンの仕業だったということ。妊娠した女性に激しい運動をさせず体を休ませようとして、わざと眠くさせる役割が体にプログラムされているのだとか。

女性の睡眠データの解析がなかなか進まないのは、この女性ホルモンの働きのため。「女性ホルモンは、脳から卵巣に指令を出して分泌されているので、寝不足やストレスの影響を受けやすい。」(林田さん)

女性ホルモンの乱れは、眠りに何かしらの影響を与える可能性があり、十分な睡眠時間や規則的な生活、ストレス対策は重要だということ。

減点を減らす

さらに夜トイレが近くなる、腰が痛くて長時間眠れない、更年期のホットフラッシュでなかなか眠れない……と、年齢とともに、質のよい眠りができない理由はどんどん増えていく。

では、質のよい眠りとはどういうものだろう。

「中には4~5時間の睡眠で平気な人もいますが、普通の人に必要な睡眠時間は7時間。6時間では持たない人のほうが多い」(林田さん)

睡眠に大切なのは「量」「リズム」「質」の三つ。

「量」は必要な睡眠時間が取れているか、「リズム」は週末と平日でずれていたり、夜型生活になっていたりしないか、ということ。夫が休みの週末に少し長く寝るというくらいでは、平日に足りなかった睡眠をカバーすることはできない。「最近寝ても疲れが取れていない」と思ったら、2週間から1カ月くらいかけて、十分な睡眠を取り戻すことが必要になる。

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「質」は上げることを目指すよりも、下げないことが重要だそう。

「いつもより1.5倍いい睡眠ってないんですよ。オリンピックの採点競技でなかなか10点満点が出ないのと同じように、睡眠も減点方式。睡眠の質は、年齢とともに悪くなります。だからそこから減点項目をいかに減らすかが大事なのです」(林田さん)

たとえば飲酒。寝つきはよくなるが、4~5時間後にアルコールが抜けると目が覚め、睡眠の質が低下するので“減点”。ほかにも夕方や夜にカフェインをたくさん含む緑茶やコーヒーを飲んだり、寝る直前にスマホやテレビを見たりすることもよくない。そして、不眠のいちばんの大敵・ストレスになる悩みごとも減らせるなら減らしたほうがいい。

睡眠の質は年とともに悪くなるけれど、「年相応の睡眠が取れていれば問題はありません。途中で起きてしまっても、その後すぐにまた眠りにつければ大丈夫」(林田さん)

たかが寝不足と思わずに

睡眠の役割は「心と体の休息」。眠ることで体温を下げて体を休ませ、脳も休ませる。さらに、寝ている間に女性ホルモンだけではなく、成長ホルモンや免疫などを活発にして、自律神経を調整する。毎晩こうした調整をして、体をリセットしているのだ。

寝不足や不眠で脳の休息がとれていないと、うつになりやすい。交感神経が優位になるので血圧が上がり、空腹ホルモンのバランスが崩れて体重が増えることも。きちんと眠れていないと、心身ともに影響が出る。

たかが寝不足、と思わずに、今日から家族も巻き込んで「7時間睡眠」を目指してみては。

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