「今を生きる」ってどういうことだろう

Photo by MARIA

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2007年に結婚したとき、私たち夫婦は指輪にメッセージを彫って交換した。そのとき夫が贈ってくれた言葉が「Seize the day(今を生きる)」。

当時はもっとロマンチックな言葉のほうがいいのにと思っていた。でも今ではわが家の家訓になり私たちの人生のテーマになった。

「今を生きる」。

この言葉を聞いてどんな意味を思い浮かべるだろう。

最初にこの言葉に出合ったのは、独身時代に学んでいた心理学の授業だった。その頃はまだ20代。もともと前向きで明るい性格だったこともあり、「今を楽しく、ネガティブなことは考えないで後悔しないように過ごす」という意味合いだととらえていた。

でも今ではもっとずっと深い意味があると考えるようになった。そのきっかけは、二女が先天性の病気だとわかったことだった。

真心のこと

2010年に生まれた二女・真心(まこ)は、6歳になった今も歩いたりしゃべったりすることができない。

生後6カ月のとき「福山型先天性筋ジストロフィー」と診断された。筋力が低下していく進行性の病気で、何をするにも誰かの助けがなければ生きていけない。やがて寝たきりになっていき、若くして亡くなる方が多い。

それまでも身内が亡くなったりということはあった。誰にでも寿命があると頭ではわかっていたけれど、自分にはまだまだ遠いことだと思っていた。でも、真心に病気があると診断された後、必死で調べたインターネットや本ではどこにも「寿命は10代(※)」という言葉が記されていた(※現在は医療ケアのおかげで長く生きられる方が増えたため、平均寿命については削除されている)。

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自分の子どもが10代までしか生きられないかもしれない――。

30歳でその事実に直面して、このとき初めて「寿命」や「死」というものをはっきり意識した。どこか他人事のように思っていた寿命というものを、自分のこととして考えるようになった。

寿命って何?

そして11年3月、二女の1歳の誕生日前日に起こった東日本大震災。ほんの短い間にたくさんの人が亡くなるのを目の当たりにした。病気でなくても思いも寄らず突然、命を落とすこともある。

寿命って何だろう。自分がいつ死ぬかなんて誰にもわからない。「寿命は10代」と言われていても、実際に亡くなる年齢は患者さんによって異なるという。平均寿命は単なるデータでしかない。

私自身、漠然と60歳くらいまでは生きるのではないかと思っていたけれど、それだって実は何の根拠もない。

今あることがすべて

先のことなんてわからない。そんなことを思ったら、確かなのは「今」という時を過ごしていることだけだと気づいた。そしてその「今」という瞬間は、誰にでも平等に与えられている。

20代の頃のようにポジティブなことにだけ目を向けるのではない。ネガティブなことも含めて「今」がある。そういう今を大切に精いっぱい生きること、それが「今を生きる」ことなのかもしれない。そして、「今」あることがすべてなのかもしれない。

そんなふうに、今を大切に生きようと決めたとき、何げなく見ていた2人の子どもたちの姿にはっとした。

子どもって何てあっけらかんと生きているんだろう。長女のゆとりも二女の真心も、感情のままに精いっぱい生きている。

自分に素直に

嫌なことは嫌だとだだをこね、ほんの小さなことにも全身で喜ぶ。そのときそのときに感じたことをありのまま素直に表現する、その姿にとても幸せを感じた。

夫、ゆとり、真心、私

夫、ゆとり、真心、私

それに比べて私は? 今を一生懸命に生きているって言える? 自分の感情にきちんと向き合って生きてきたのかな? まるで自信がなくなってしまった。

私たちだって子どもの頃は、「ありのままに」過ごしていたのかもしれない。それがいつの間にか、無意識のうちに他人の目や価値観を気にするようになっていた。

嫌なことも嫌じゃないフリ。世間体ばかり気にして自分自身に向き合ってこなかった。何か素晴らしいことをしなきゃいけない、他人に認められなければいけないと思い込んでいる。

でも子どもたちの姿を見ていたら、そうやって周りに合わせて生きるよりも、自分に素直に生きるほうが幸せだと思うようになった。

今の悩みは意外と少ない

そうは言っても、「今」に集中するのは私たち大人には簡単なことではない。悩みだっていろいろある。

そんなとき私は、その悩みごとを「過去に対してのもの」「今のもの」「未来に対してのもの」の3つに分けて紙に書き出している。そうすると、意外と今すぐ悩まなければいけないことは少ないことがわかる。

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「今」悩まなくていいことがはっきりすると、意識を「今」に集中できるようになり、自分の感情と向き合う余裕が生まれる。

うれしいときには思い切り喜び、悲しいときには泣く。ポジティブなこともネガティブなことも、喜怒哀楽すべてを素直に感じて表現する。

そんなことが、自分にうそをつかず、一生懸命に生きることにつながるんだろうと思っている。

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