脳の仕組みを知って「うっかり忘れ」を防ぐ

Photo by MARIA

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冷蔵庫の前に立ち、何かを取り出そうとしたのに思い出せない。「あれ?何を取りに来たんだっけ?」――。

アラフォーを迎えた私の周りにもそんな「物忘れ」と闘う人たちが増えてきた。脳の衰えは40代から始まると聞いたことがある。その波がついにやってきてしまったのだろうか。

うっかり忘れは脳の老化

「脳も体の一部です。衰えるのは当たり前。いくら筋力を保つ努力をしていても、まったく衰えないことはない。それと同じことです」と話すのは、脳の神経ネットワークなどが専門の早稲田大学研究戦略センター教授の枝川義邦さん。

枝川さんによれば、さっきまで覚えていたのだけど、なんだか忘れてしまったという「うっかり忘れ」は脳の加齢によるもので、ごく自然な症状なのだという。

子どものスケジュール管理に自分の予定、日々の献立など、子育て世代の私たちの頭の中は生活タスクでいっぱい。自然な症状だと言われても、「うっかり忘れ」がそう頻繁に起こるようでは困ってしまう。何かよい方法はないのだろうか。

整理整頓が大事

脳の中にはデータを保管する場所が二つある。一つ目は、引き出しのようなところに整理して入れる場所で、こちらは長期保管がきくと言われている。幼少期の思い出などは、この部分に保管されている。

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二つ目は一時的に保管してくれる場所。こちらは「ワーキングメモリー」と呼ばれ、新しいことを覚える場合に使われる。引き出しに対して机の上をイメージするとわかりやすい。この机は、一時的に情報を広げておくことができるが、容量に制限がある。

「うっかり忘れ」に関係するのはこちらの部分。「机の広さが年齢とともに狭くなると考えてください。必然的に載せられる量が減るわけです」と枝川さん。

社会人としてバリバリはたらいていた20代を振り返ってみると、名刺交換した人の名前と顔はすぐに覚えられた。あのときのような記憶の詰め込みができないのはこのためなのだ。

「机に物を置きすぎないことでうっかり忘れは防げます」と枝川さん。いったいどういうことなのか。

「ワーキングメモリー」のパフォーマンスを上げるには、机の整理整頓がカギとなる。乱雑にプリントが広がる机の上では、お目当ての書類を見つけ出すのに時間がかかるのと同様に、たくさんの記憶がありすぎると脳はどのデータを呼び出したいのかわからなくなるのだ。

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枝川さんのおすすめはメモを取ること。なるべく脳に情報を保管しないようにするためなのだという。

記憶することは 「メモを見る」ということだけ。「なす」「牛乳」「ケチャップ」「ひき肉」……と買うものすべてを覚えるのでは、脳に保管する情報量が多くなる。ほんの些細なことのように思われるが、これで脳内にスペースが生まれる。

「ワーキングメモリーの無駄遣いをなくせば『うっかり忘れ』は減るはずです」(枝川さん)

脳を休めよう

もう一つ、効果的な方法は「ボーッとすること」。

何も考えていないときによいアイディアが浮かんだという経験がある人も多いのでは。これは脳が休まり、脳のスペースにゆとりが生まれることが原因ではないかと考えられている。

「10分から15分昼寝をするのも認知能力が高まると言われています」(枝川さん)。時間にゆとりのある生活は脳の劣化を防いでくれるようだ。

ただ、同じ物忘れでも、どこかに行ったことや家族と食事をしたことなど、そのこと自体がすっぽり記憶にないような「すっかり忘れ」なら注意したほうがいい。「若年性認知症」という病気の可能性もある。最近は「物忘れ外来」という専門の診療科を置いている病院も増えてきたので、安心材料に受診してみてもいいかもしれない。

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