ラジオの時間と、父のこと

Photo : Eisho Kasuga / Hair&Make : Misako Okada(kind)

Photo : Eisho Kasuga / Hair&Make : Misako Okada(kind)

朝、子どもたちを送って、いざ出勤。と言っても、わたしの場合、いったん家に帰ることが多い。

起きてから子どもたちを送り出すまでの時間は、バタバタの極み。それはもう、仕方ないのだけれど、頭が家事や子どものことでいっぱいになってしまう。スムーズに仕事を始めるには、一度頭を切り替える時間が必要。

というわけで、いったん家に帰る。

一人作業の“友”はラジオ

そして、その日その週のスケジュールを確認しながら、どう動くかをシミュレーションするようにしている。メールの確認や、資料の準備なんかをして、時間に余裕があれば、残っている家事を片付ける。そうこうしているうちに、打ち合わせや撮影へ出発する時間になり、今度こそ本当に出勤、というわけ。

打ち合わせや撮影がない日もある。そんな日は、料理の撮影に向けて、味付けや盛り付けの実験、テーブルスタイリングのイメージ作り、レシピの整理をしている。主人のオフィスに出向いて、パソコンに向かい、こうして文章を書いたりもする。

普段使っているPCと手帳

普段使っている手帳とPC

外へ出かけて、誰かと話したり、撮影で動き回ったりしていると、1日はあっという間だ。それに比べて、家やオフィスで黙々と何かを生み出す時間は、決して嫌いじゃないのだけれど、ちょっぴり寂しいし、たまに退屈。

ひとり静かに作業するようになって、思い出したのが、ラジオだった。なんとなく集中が続かない日に、「そういえばこういう時は、よくラジオをかけてたよなあ」と、ラジオが聴けるアプリをインストールしてみた。すぐにJ-WAVEが聴けた。

スピーカーにつなげる。音もいい。実家の自分の部屋に置いていたオンボロのラジカセとは大違いだった。

仕事中に使っているスピーカー

仕事中にラジオを聴いているスピーカー

わたしは、中学生の頃からラジオが大好きで、自分の部屋にいる時はつねにラジオをかけていた。周りには、ラジオを聞いている友達なんかいなかった。誰かに「ラジオっていいよ」なんて勧めることもなかった。ただ、父だけが、ラジオ仲間だった。

父は、ライターの仕事をしているので、取材に出掛けているとき以外は、自宅の書斎で文章を書いていた。

あるとき、用事があって父の書斎に入ると、わたしの大好きな曲が流れていた。「なんでこの曲聴いてるの!?」。若干の気味悪さを感じながら聞いてみると、「何の曲? これ、ラジオだから。知らない」と言われたのを覚えている。

アイデアが生まれる

そうして、ラジオからはふいに好きな曲が流れてくるんだということを知り、「それってなんだか素敵じゃん」と、ラジカセを買って聞き始めたのだった。何度も聞いた曲なのに、ラジオでかかるとなんだか新鮮に聞こえたし、知らない曲やアーティスト、自分じゃ絶対選ばないようなジャンルの音楽に出合えることが、すごくうれしかった。

音楽の間に流れる、シンプルなニュース。誰かのインタビュー。はやりのアイテムやフードの紹介。わたしにとって、テレビよりラジオのほうがずっと面白かった。

久々に聞くようになった今も、同じことを思う。ふと耳に入った音や情報に、感性のスイッチを押されて、新しいアイデアが思いつくこともある。わたしにとって、ベストなBGMなのだ。父にとっても、そうだったのかな。

息子を抱く父と私

私、長男、父

話は変わるが、父つながりで、書いておきたいことがある。わたしが何かに迷う時、つまずいた時、落ち込んだ時に、必ず思い出す、父の言葉のこと。

「目の前のことを、素直にしあわせだって思えることが、何よりものしあわせだよ」。妊娠がわかり、仕事を辞めざるをえなくなって、どうしたらいいかわからず泣いてしまったわたしに、言ってくれた一言。

自分の人生を、どうしていきたいのだろう。そうやって悶々と悩むとき、この一言を思い出すと、冷静に目の前の状況と向き合えて、救われる。

頭や気持ちを切り替える方法は、人それぞれ。自分の中だけで切り替えなければいけないわけじゃなくて、聞こえてくる音や、誰かの一言が助けになってくれることもある。ちょっとふさいで自分の声をよく聞いてみた後は、思いっきり開いて周りの音を聞いてみる。その繰り返しで、少しずつ上手な生き方を見つけていくんだろうなあ、と思う。

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