子育て中の女性とその夫が入社面接に同席する会社

「3K=きつい・汚い・危険」で男性社会というイメージが強い建設業界において、社員の3割近くを女性が占めている企業がある。京都府京都市に本社を置くKMユナイテッドだ。

建築塗装とリフォーム業を展開する竹延の子会社で、塗装・付帯工事、塗料販売等を行っている同社。会社の経営を支えるのは職人の腕だ。

「技術を持ったベテラン職人の高齢化が進み、危機感を持っていました。当初は若く元気で体力がある“男性”を中心に雇っていましたが、中にはやる気のない人もいて定着に苦戦。そこで『やる気さえ、あったらええやん!』と考えたんです」

社長の竹延幸雄さん

そう語るのは社長の竹延幸雄さん。性別、年齢、国籍問わず「やる気のある人」を採用し、その人たちがはたらきやすい体制や環境づくり、作業改善を行うことに大きく舵を切った。その取り組みは多岐にわたり、そしてユニークだ。

女性がはたらきやすい建設現場

全員正社員登用あり、時短勤務や週休2日制、土曜出勤選択制のほか、社員の声を受けて改革を進めてきた。

女性の積極採用にもいち早く力を入れた。朝6時から預かり可能な託児スペースを設置するなど社内のハード面はもちろん、作業現場でも女性用の更衣室やトイレの設置などをはたらきかけ、環境を整えた。

難易度が高い有名建築物の塗装に取り組む女性職人も

「健康への影響が心配」という声を受け、シンナーを一切使用しない安全な水性塗料に切り替えたり、女性や高齢の職人でも扱いやすい軽量の段ボール製塗料容器をメーカーと共同開発したりするなどソフト面も細やかに見直した。

その結果、徐々に女性の応募者が増えていった。「美大出身者や趣味で絵を描いている人など、ものづくりが好きな女性の応募が多いですね」と人財育成事業担当の宮根佐永子さん。条件さえ合えば、仕事内容に興味を持つ女性は少なくないことがわかった。

面接に夫も同席

中でもユニークなのが「夫婦同席面接」。子育て中の女性がはたらきたいと思う時、夫が壁になることが多い。はたらくことに反対だったり、一見理解があるように見えて「家事や育児をきちんとしてくれるなら」と条件付きだったり、いくら制度や環境は整っていても夫や家族の協力が不可欠である。

KMユナイテッドでは、もともと外国人採用の際に書類の読み書きをサポートしてもらえるよう、夫婦同席面接を実施してきた。それを子育て中の女性を採用する際にも応用した。

通常の面接と同じで、志望動機やこの仕事を選んだ理由といった意思を確認し、「現場には8時入り」「現場が遠方の場合は帰りが遅くなる」など実際にはたらき始めてから想定される事項を話す。日頃、家庭では見ることができない妻の姿や気持ちを知ってもらうとともに、仕事を始めてからの生活を、夫にも想像してもらう。

2017年入社の新人職人たち

最後に、竹延さんが「夫のあなたも家事や育児のバランスをとらなければなりません。子どもが熱を出したら、保育園のお迎えに何回かは行ってください。それができないと、奥さんは頑張れませんよ」と夫にも覚悟してもらえるように話す。

しかし、後で夫が電話をかけてきて、「子どもがかわいそう」「姑が反対している」「建設現場は危ない」と言って断ってくる例は多かった。その後、女性から「子どもが小学生になったら、もう1回受けさせてほしい」と泣きながら電話がかかってきたこともあったという。

これまで3組の夫婦に実施して、採用に至ったのは1名だけ。「すぐに入社につながるかどうかよりも、この面接によって夫が妻の思いや考えを知るきっかけになればと種をまく気持ちでいます」と竹延さんは言う。

短期間で“職人”に

いかに短期間で未経験者を“職人”に育てるか。人材育成にも独自のメソッドを開発した。

同社が行う全工程を担える一人前の職人になるのには10年ほどかかるが、職人の仕事を分析してみると、「未経験者でも少しの経験ですぐにできる作業」「ある程度の経験があれば可能な作業」「専門的な作業」の3つの段階から成り立っていることがわかった。

大阪市都島区の事務所近くに開設された研修施設。高度な塗装技術を学ぶ場所に

そこで、社員が担当する役割も3段階に振り分けて、各段階でエキスパートになるまで同一作業を繰り返すことで、効率よく技能を習得できるようにした。高齢で体力的に現場仕事が難しくなった60~70代のベテラン職人が指導役を担うほか、外部の教育訓練施設も利用し、社員の成長をバックアップしている。

その取り組みは確実に成果を上げている。当初は親会社の下請けだったが、社員の技術習得が進み、現在では親会社でも施工できなかった付加価値の高い仕事を受けるまでになったという。

“男性社会”に一石を投じる

建設業界の人材不足を受けて、国土交通省が2014年から「もっと女性が活躍できる建設業へ向けた取組み」を展開するなか、それ以前の2013年から女性の積極採用に取り組んできた同社は、経済産業省の平成28年度『新・ダイバーシティ経営企業100選』をはじめ数々の表彰を受けている。

職種や業種の既存のイメージを取り払えば、工夫次第で女性やお母さんが活躍できる場所はまだまだありそうだ。

KMユナイテッドはDIY塗料ショップも運営。妊娠した社員のはたらき方の選択肢になっている

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