自分のやりたいことを実現する「NPO」の作り方

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子どもができると、それまでとは違ったコミュニティや地域の活動に参加する機会が格段に増える。その中で、NPOの主催するイベントに参加したり、同じ悩みを抱える人たちの集まりに参加したりした経験がある人も少なくないだろう。

NPOとは、広義には非営利組織のこと。ある一定要件を満たした任意団体が登記すると法人になる。法人でもっとも作りやすいのが、2人いれば作れる一般社団法人。正会員が10人必要なNPO法人、より公益性が求められる公益社団法人は設立の手続きや毎年の報告など手間が増える分、社会的な公共性や信用性も高まっていく。

いま日本には、1人〜数百人規模まで、全国に5万団体くらいのNPOがあるといわれている。規模を大きくすることで広く普及を目指す団体もあれば、貧困家庭や学習支援のように1拠点で支援対象に深く入り込むことに主眼を置くなど、目指す方向性は団体によってさまざま。

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NPOの支援活動を行っている「NPOサポートセンター」の小堀悠さんによれば、1998年に「特定非営利活動促進法」が制定されたことで、身近なテーマを扱う場や勉強会も増え、最近はちょっとしたきっかけから始める人も増えた。いずれにしても、利益を追い求める企業に対し、NPOの目的は問題解決がベースだ。

「しかも、その課題は人に付随するものが多い。たとえば、障害者の子どもを育てる親の会の場合、最初は家庭内でどう育てるかを解決するために発足したが、子どもの年齢が上がるにつれ、教育や学校生活の問題、卒業後は社会に出るためのサポート、そして、親の死後の問題…と生活面、仕事面など無限に広がります」(小堀さん)

個人で始めるには

小学1年生と1歳児のお母さんである佐山美樹さんは今年11月、NPO法人「フラーリシングエデュケーションジャパン」を立ち上げた。

「5年前、人生を幸せに生き抜くための科学的根拠に基づく教育、ポジティブ心理学(フラーリシングエデュケーション)に出会いました。普段は企業で人材育成の部署に所属しているのですが、人材育成には子どものころからの教育が大切だと感じ、子どもの教育に活かすには、どういう子育てをすればいいか、1年半前から勉強会を開いてきました」(佐山さん)

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そして第2子を出産し、育休中に法人化してしまおうと設立に至ったそう。

「法人化するかどうかの判断は、事業の継続や連携先によって変わってくる。たとえば、学校などの公的機関と組むのであれば、公益性や信頼性が高いNPO法人がいい。ただ、法人化すると事務的なことが増えるので、まだ小さな集まりの場合は、お金の動きも人間関係も個人ベースで問題ない」とNPOサポートセンターの小堀さん。

NPOの相談を数多く手がける「りのは綜合法律事務所」の弁護士・塙創平さんも、「最初は任意団体からのスタートでいい。やることが決まらないと、どういう形がいいかもわかりません。自分たちに何ができるのか、そもそもニーズがあるのか、試行錯誤の期間は法人である必要はない」という。

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「最初に枠組みを作っても、周りの力を得られないと意味がない。最初、個人でやっていて、そろそろ法人化した方がいいのでは?という声が出てきたときが、周囲の力も得やすい。個人の集まりとして1周ちゃんとやってみて、うまくできたら任意団体を立ち上げるのがおすすめ」(塙さん)

今では政府や自治体でも重要案件として検討されるようになった「乳児用液体ミルク」の普及を訴えてきた末永恵理さんも、最初は個人で活動を始めた。しかし、行政へのはたらきかけを行うにあたり法人化したほうが信用度が高まること、また一緒に取り組んでくれる仲間ができたことから、活動開始から2年弱で一般社団法人「乳児用液体ミルク研究会」を設立したそう。

まずはNPOではたらいてみる

塙さんは「どの団体もつまずくところは一緒。同じところで同じ失敗が待っているんです。だからそれを経験してから立ち上げるのが重要。まず動いている団体に参加して、いいところを盗み、悪いところは真似しないのが、意外に近道」と言う。

実際、NPOではたらく人は増えている。正会員としてはたらく人もいれば、リモートワークで在宅勤務したり、掛け持ちするのは当たり前。自分の興味のあるプロジェクト単位でかかわる人、週2回だけはたらく人、ボランティアとして参加する人とさまざま。会社と違い、アメーバ的な組織なので、子育て中の女性でもかかわりやすい。

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「NPO業界はもともと新卒を育てるというよりも、転職市場で成り立っている。そのため、多様なはたらき方の受け皿としても機能していて、間口が広いんです」(小堀さん)。今でこそ変わりつつあるが、30〜40代の男性は結婚して子どもができるとNPO活動を離れる人が多く、そもそもNPOは女性が多い業界なのだそう。

「大人になって真の信頼関係を築くのは難しいが、お金とは関係なく、信頼できる人と出会えるのがNPO。それはいろんな場面で生きてくる」(塙さん)。子どもがいる女性こそ、NPOとうまくかかわって、自分の興味や課題解決をライフワークに発展させていきたいものだ。

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