未経験でも“コミュ力”を生かせる会計業界の仕事

Photo by MARIA

都内で開かれた女性の再就職を支援する合同会社説明会に、業界大手の辻・本郷税理士法人が出展した。同法人が主婦向けの再就職イベントに参加するのは今年が初めて。税理士法人は専門職のイメージが強い職場だが、資格を持たなくてもはたらきたいと思っている女性の採用も積極的に行おうとしている。

女性だけのチームを結成

全国に支部を持つ同法人の女性比率は3割。そのほとんどがパートタイマーとして勤務する。今は税理士や会計士の資格を持った人が多いが、資格のない人の採用を始めようというのだ。徳田孝司理事長はこう話す。「会計事務の仕事はやっていけば覚えられる。お客様がいる仕事だけに、資格の有無にかかわらず、人とのコミュニケーション能力が高くてやる気のある人に来てほしい」。

同法人内には、「TAX GIRL」という女性士業グループがある。家庭と仕事の両立ができるはたらき方を開拓しようと、法人内の女性たちで2015年に結成された。実は、再就職イベントに出展したのも、TAX GIRLの活動の一つ。女性ならではの視点で相談者に寄り添える人材を見つけたかったのだという。

Photo by MARIA

税理士法人は規模が大きいほど男性中心のところがまだまだ多い。実際、決算期には多忙を極めるため残業も多くなりがちで、家庭と両立しながらはたらき続けるには厳しい環境なのだ。しかし、そのままでは優秀な人材が次々と辞めていってしまう。そこで、女性ならではの視点を活かし、女性税理士、会計士の活躍の場をつくり出そうと動き出した。TAX GIRLの代表を務める浅野恵理さん(46)は「能力のある女性のはたらく場を作りたいという思いがあります」と話す。

TAX GIRLはまた、対外的な活動として、女性起業家向けのセミナーや、相続に関するセミナーなども計画している。「税の話」と聞くと難しい気がしてしまうが、相続をはじめ、税金は誰しも関係があること。主婦にとって身近な配偶者控除など、税に関する法律の改正も話題になる今だからこそ、女性が税について学ぶ必要はある。

「相続相談ではじめて税理士と話すという女性の方もいらっしゃいます。セミナーを通じて、税をもっと身近に感じてもらえたらと思います」と話すのはTAX GIRLメンバーで、同法人のヘルスケア事業部部長としてはたらく大谷朋子さん(50)。

PTAの経験が職場でも生きる

約1400人もの専門家を抱える同法人では、税理士や会計士がチームを組んで担当する案件も少なくない。チームプレーを円滑に進めるために必要となるのが、士業をサポートし、チームの業務が円滑に進むように事務全般を引き受けるサポートスタッフの存在だ。

Photo by MARIA

実は、前述の大谷さんもこうした税理士を支える事務から入り、税理士資格を取得した。「会計データの入力や資料作成は資格がなくてもできる部分があります。また、ここを入り口に資格取得を目指すことも可能です」。

大谷さんによれば、子育ての経験がある人だからこその強みもあるという。「主婦の場合、社会人経験が少ない人でも子どもがいれば、子どもを通じて幼稚園や学校といったコミュニティに入ります。ここで培った力は職場でも役立つと思います」。

実際、はたらく前は小学校のPTAで広報係をしていた大谷さんは、再就職の際にこの経歴を履歴書の自己PR欄に書いた。PTA活動はいろいろな考え方の人とコミュニケーションを取りながら物事を進める必要がある。この経験が仕事を始めるうえでよい助走になったと言うのだ。

Photo by MARIA

「PTAの係をしていた時は、主催イベントでの講師手配、当日の役割分担などをリーダーとともに考え計画を立てて進めて行きました。先を見通しながら進めなければ効率的な動きにならないことを、ここで学びました」。大谷さんは6年前に同法人に入り、現在は部長職。「チームをまとめる際、PTAでの経験が生きました。現在は、自分がサポートされる側になりましたが、PTAのような経験がある人にきてもらえると心強いと思っています」と話す。

資格の情報も

同法人では2013年、女性からの相談が多い相続分野について、女性専門の相談窓口を設けた。内容がデリケートなだけに、受付の段階で相談者の話が長くなるケースが多い。現在は資格を持つ人が窓口の電話対応に当たっているが、最初の問い合わせに応対する人については、資格を持っていなくてもコミュニケーション能力の優れた人を起用し、話がまとまったところで専門家につなぐという流れを検討中だ。

Photo by MARIA

また、税理士や会計士以外にも、税理士法人ではたらくのに役立つ資格がある。たとえば、医療経営士。聞き慣れない言葉だが、病院経営をマネージメントするのに役立つ資格だ。このように、現場に出ていなければ知らない資格もいくつかある。「税理士の資格はもちろんですが、医療経営士などほかの資格についても情報を共有していますから、いくつものチャンスに出合えると思います」と大谷さん。

税理士の仕事を間近で見ながら力を磨ける職場は、出産や子育てでキャリアにブランクのある女性にとって、やりがいのある仕事を新たにつかむチャンスをみつける舞台となるだろう。

  • この記事をシェア
トップへ戻る