女性目線でアプリを“進化”させる仕事

Photo by MARIA

私たちの生活は、さまざまな「ソフトウェア」によって成り立っている。たとえばオンラインショップや映画やチケットのネット予約、レシピ検索アプリやゲームアプリ……。パソコンで閲覧するウェブページやスマホアプリを動かすソフトウェアは、日々新しいものが開発され、進化を遂げている。

そんなソフトウェアの開発にかかわる仕事の代表格が「エンジニア」だが、実は同じくらい重要な役割を果たす「テスター」という仕事があることをご存じだろうか。

ソフトウェアの“最後の砦”

ソフトウェア開発は、大きく分けて3段階。まずは、内容の企画を考える「設計」。次に、実際にプログラムコードの記述を行う「実装」。最後に、設計通りにアプリが作られているか、画面の流れは問題ないか、機能が正しく動くかといった「評価・検証」(テスト)。

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「ソフトウェア開発にかかる時間のうち約4割が“テスト”なんです」と教えてくれたのは、ソフトウェアのテストを専門とする株式会社ヴェスの中島さん。ヴェスでは主に、医療・理化学機器や在庫管理などの業務システム、カーナビやPC、スマホアプリなどのテストを行っている。

「『ソフトウェアのテスト』と聞くとなんだか難しそうですが、要は“間違い探し”なんです」(中島さん)。テストで実際にソフトウェアを使うことで、不具合(バグ)や使いづらい点などを発見することが目的だ。

読書好きが向いている

テスターに必要なのは、ソフトウェア開発に関する専門知識ではなく、細やかで正確なチェック能力だという。膨大な量の仕様書を読みながら進めるため、「読書が好きな人が向いています」と中島さん。

仕様書には「AをすればBとなる」といった「期待結果」がずらりと並んでいる。たとえばショッピングサイトの場合、期待結果は、「カートボタンを押すとものがカートに入る」「買い物ボタンを押すと決済ページに移行する」「ロゴマークを押すとトップページに戻る」といった具合。テスターは実際にソフトウェアを使いながら、期待結果通りに正しく動くかを一つひとつチェックしていく。

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不具合を見つけるには、長年の経験もモノを言う。ヴェスでテスターを務めて9年になる工藤あゆみさん(34)は、「どこで不具合が出そうか、目星をつけて試してみるんです」と話す。「画面を進めた後に前のページに戻れなくなってしまうといった具合に、ソフトウェアには不具合が起きやすい動きがいくつかあります。仕様書にはない“想定外の動き”をしてみることで、開発者の盲点となっている問題も洗い出せるんです」。

女性の感覚が生きる

ソフトウェアのテストは、開発会社が自社で行う場合と、ヴェスのような第三者機関に委託する場合とがある。最近は、“外の目”でソフトウェアの品質を見てもらいたい、自社のエンジニアが不足しているといった理由から、テストを外注するケースが増えているそうだ。

日本でこうしたソフトウェアのテストを専門にする会社は100社以上ある。ヴェスはその中で、女性視点のテストを特徴として打ち出している。ヴェスに勤める30代から50代の「レディーステスター」と呼ばれるスタッフたちが、女性にとって使いやすいかといった視点でもソフトウェアをチェックするのだ。手がけるのは、女性向けアプリやショッピングサイト、銀行系WEB決済代行システム、子ども向け通信教育サービスのコンテンツなど。


テスターの工藤さんによれば、開発を担当するエンジニアの多くが男性。「男性エンジニアは製品の機能を充実させる傾向があるけれど、女性ユーザーは使いやすさや見た目を重視するんです」(工藤さん)。通常のテストに加えて、色味などビジュアル面の改良を提案したり、「検索バーの位置を変えたら購入が増えるのでは」「クーポン機能があったらうれしい」など、一歩先を行く指摘もする。

レディーステスターのほとんどが子育て中のお母さんで、しばらく子育てに専念した後の社会復帰の場として、この仕事を選んだ人もいる。IT業界が未経験の人も多いそうだ。

どんなに進化したソフトウェアでも、ユーザーが使いづらくては意味がない。だからこそ、エンジニアとユーザーの橋渡しをするレディーステスターの存在が、いま注目されている。

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