「好き」をちゃんと食べていける仕事にする

自分の「好き」を仕事にして、食べていける人はごくわずか。でも、好きな気持ちは、はたらく原動力にきっとなる。三沢真実さん(35)は、3歳の男の子を育てながら、大好きなキャンプを仕事にしたお母さん。フードコーディネーターの三宅香菜子さん(32)とユニット「cammoc(キャンモック)」を組み、手ぶらで誰もが気軽に参加できるキャンプをプロデュースしている。

たとえば0~5歳の子どもとお母さんを対象にした「ママキャンプ」。コンセプトは「ママのためのリラックスキャンプ」だから、お母さんは子どもと一緒に、お泊まりグッズだけを持ってキャンプ場へ出かければよい。テントの設営、料理の準備はすべてスタッフが担当。お母さんは自然の心地よい空気を感じながら、子どもと一緒の時間を存分に楽しめる。参加するのは親子6組程度。「自然の中にいる効果なのか、参加者同士、何でも認め合えて、温かい雰囲気です」(三沢さん)。

独自の世界観が人気の秘密

今年で設立して6年目になるcammocだが、人気の秘密は2人が作り上げる独自の世界観にある。クリエイターの三沢さんは装飾担当で、お花見やクリスマスなど季節やテーマごとにディスプレーを作っていく。ポイントは、自然の中にもう1つ、自分の家を持つような居心地のよさ。テントの中にはふわふわの絨毯やクッションが用意され、ハードなアウトドアのイメージとはほど遠い。

三沢さんのInstagramには独自の世界観が詰まっている

一方の三宅さんは料理を担当。お花見キャンプなら宝石箱のように色とりどりの食材をちりばめたちらし寿司、旬の野菜の自家製ピクルスなど、手の込んだ料理の数々を用意する。夜はフルーツたっぷりのサングリアやお手製のおつまみを並べ、たき火を囲んでゆったりと大人の時間を演出している。

もともとキャンプ仲間だった2人は、自然の中に1から自分たちの“家”を作っていくキャンプの楽しさに熱中していた。当時からデザインとフードに担当が分かれ、三沢さんいわく「絶妙なコンビネーション」でキャンプを満喫していたという。いつしかこの楽しさをもっとたくさんの人と共有したいと思うようになった2人は、誰でも参加できるキャンプを企画してSNSなどで告知。手ぶらで気軽にオシャレなキャンプに参加できるのはもちろん、設営から一緒に手作り感を楽しめる点も喜ばれ、年に数回、イベントとして開催するようになった。

やがて、三沢さんの妊娠・出産を機に「ママキャンプ」もスタート。ウェディングや女子会などイベントとしてのリクエストにもこたえ、最近はショッピングモールのイベントなどでディスプレー展示やワークショップ開催の依頼も相次ぐ。

本気で食べていける仕事へ

一見すれば、憧れのライフスタイル。けれど三沢さんは「“好き”だけでやっていたときは、自分たちは楽しかったけれど、どれだけやっても収入に結びつかず、もがいていました」と振り返る。

立ち上げ当初は別の仕事を持ち、休暇を使ってcammocの活動をしていた三沢さん。しかし活動を始めて3年目のころ長男を授かり、出産直前に退職。さらにシングルマザーとなって、自分の手一つで子どもを育てていかなければならなくなった。

そのとき思ったのは、どうすればcammocの仕事でちゃんと食べていけるのか、ということ。自分たちのやりたい思いだけでは、仕事として成り立たないのは明らかだった。「ある人から言われたんです。世の中から必要とされるものでなければビジネスとしては成立しない、と」(三沢さん)。

自分たちだからできる、ほかの人にない強みは何だろう――。2人は理念やターゲットを徹底的に見直す作業を何度も繰り返した。ビジネス書を読んで勉強するだけでなく、三沢さんは女性向けの起業スクール「日本ママ起業家大学(ママ大)」に通って、cammocのコンセプト「キャンプのある暮らし」に磨きをかけていく。

cammocのキャンプが、初心者に入り口的な役割を果たしているのは間違いない。でも、もっと伝えたいのは、キャンプではミニマムな持ち物で最大限、心地よい空間と料理を作り出し、その日、その場所ならではの楽しみ方ができること。再利用できるもので作るディスプレー、動線を考えたレイアウト、無駄のない料理……。キャンプで実践してみせる工夫やアイデアは、参加者の日々の暮らしにも生かしてもらえるだろう。それは、普段から「暮らし」に敏感な女性だからこその強み。ママキャンプなら、自然の中でおおらかに子どもと過ごす時間の素晴らしさも伝えられるはず。女性目線、ママ目線で作るキャンプだから、唯一無二の存在になれると確信した。

「いろいろな人の話を聞いたり、ママ大に通ったりして、考えを固めていったのはすごく大事なステップでした。何となくこれでいいのか、と思っていたことが整理され、キャンプを仕事にして、食べていく自信を持てるようになりました」(三沢さん)。

三沢さんには、まだまだ夢がある。全国にママキャンプの事業を広げたり、ホームとなるキャンプ場を作ったり、自分の体験をブログにまとめて最終的には本として出す……。これからも一つ一つ、着実にステップを踏んでいくつもりだ。

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