子育て経験が存分に生きるシッターの仕事

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保育士資格を持っていなくても、何か特技があれば子どもたちに人気のシッターさんになれるかもしれない。単に子どもを預かるだけでなく、工作や料理、スポーツなどその人が得意なことを子どもたちに教えるというシッターサービスがじわじわと増えている。

育児経験が仕事になる

「シッターは“多様化”しています」と話すのは、キッズラインの東真希さん。

シッター派遣を行うキッズラインには、保育士の資格はないけれど子育て経験を持つ人がシッターとしてたくさん在籍している。面接の最初は「子育て以外は何にもできないんです」と言う人も多いものの、会話を重ねると“輝くもの”が必ず見えてくるという。

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「家事をしながらの育児は、“保育士さんとはまた違う能力”」と東さんは太鼓判を押す。「はたらき直す第一歩」としてチャレンジする人もおり、多い人で月15万円ほどの収入を得ているそう。

8か月前からキッズラインではたらいている伊藤こずえさん(仮名)(51歳)は、専業主婦を経てシッターへ転身した。扶養の範囲内で“子どもに関わる仕事”に就きたいと考えていた伊藤さんは、たまたまキッズラインの募集を目にし、「自分の経験が、子育て中の女性に役に立つのではないか?」と思い登録した。

伊藤さんは1歳から小学生の子どもを中心に、週に数回はたらいている。「特別なことをしているわけではない」と伊藤さんは言うが、以前「冬場の冷たいお弁当を保温弁当箱にするだけで、食が進むようになるんですよ」と伝えてよろこばれたそうだ。小さな経験談であっても、「子育て一年生の母」には貴重な情報になる

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「外遊びを提案して積極的にお子さんを公園に連れ出すと、子どもはイキイキします。シッターも一緒になって子育てをしていけたら」。伊藤さんは子育て経験のある母親の立場だからこそわかる子どもの気持ちと、仕事と子育ての両立に悩む母親の気持ちにも寄り添ったサポートをしている。伊藤さんのほかにも、お菓子作りやクラフト制作など好きで続けてきたものが子どもたちの人気を集める主婦シッターはたくさんいる。

子どもとのささいなやりとりにも、育児経験が生かされる

“体育会系”お母さんが活躍

“体育の先生とお留守番”と銘打って、スポーツに特化したシッターサービスもある。アメリカのプロ野球独立リーグで活躍していた、元アスリートの落合陽さんが経営するスポーツシッター・ジャパンだ。

落合さんはアスリート時代にアメリカに在住し、気軽に子どもを預けるシッター文化を目の当たりにした。帰国後、スポーツインストラクターを経て、「仕事と育児を両立できるためのサポートをしたい」と思い立ち、自分の強みであるスポーツとシッター業と合わせ、このサービスを始めた。

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シッティングの内容は水泳、かけっこ、逆上がり、縄跳びからボルダリングや登山までさまざま。充実した時間になるよう下見や準備は徹底する。2年間水泳教室で同じ級だったが子が、たった数時間でステップアップした例もあるそうだ。

「親が仕事で外遊びに連れて行けずに、幼少期に体を動かす機会を減らしてしまうのは、もったいない。預けるたびに“できた”が増え、成長を感じてもらいたい」(落合さん)

スポーツシッター・ジャパンでは、最初は「シッターはトップアスリートを!」と考えていた。しかし、利用者はシッターの肩書きを気にしていないことがわかったそうだ。「子どもに寄り添い、経験や知識がありコーチ要素がある、“体育系お母さん”にぜひ一緒に働いて欲しい」と落合さんは考えている。

子どもの視点に寄り添う

水野陽子さん(仮名)(41歳)は、もうすぐ小学生の長女と1歳の長男の子育てをしながら、1回2時間程度、多いときは月に5回ほどスポーツシッターとしてはたらいている。

もともとスポーツジムや医療機関の運動療法インストラクターとしてはたらいていた水野さんは、下の子を妊娠したときにこの仕事を知った。

「出産前から親子体操の指導もしていたけれど、子育てを通して、子どもへの指導方法が変わったんです」と水野さん。

子どもの視点に寄り添うことが成功体験につながる

例えば子どもが鉄棒を嫌がるとき、「砂が靴に入るのが嫌」「鉄棒を触ったら冷たかった」と、理由は別にあることが多いのだそう。真の理由をわかってあげると解決することもある。自転車乗りもタイミングよくほめてあげると、一日で乗れるようになった例もあったという。「自分の子育てで子どもの視点に寄り添う経験をし、“思い込みの指導方法”から解放された」と、水野さんは話す。

子育てで子どもと向き合う時間を持ったお母さんたちの経験は貴重。資格がなくても、お母さんたちにはシッターとして十分な価値があるのだろう。

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