ゴルファーのスコアを上げるお母さんたち

ゴルフコンディショニング

Photo by Fumishige Ogata

休日の朝、愛知や岐阜にあるいくつかのゴルフ場でプレイヤーたちを出迎えるのは制服を着た女性。ゴルフ場では珍しい、ラウンド前後にマンツーマンで行うストレッチがプレイヤーたちの評判を呼び、ゴルフ場のリピーター増加にも一役買っている。

このサービスはCS・グループ代表の梶谷隆之さんが手掛ける「ゴルフコンディショニング」。プレイヤーの中には、普段は体を動かしておらず週末だけゴルフを楽しむという人もいるが、凝り固まった体でプレイしてもいいスコアは出しにくい。

ストレッチをするとスコアが変わる

プレイヤー向けに独自に開発したストレッチを行うことで、まるで魔法にかかったかのようにその後のプレイが変わってくるという。「かつてないスコアを出すことができた」「体の動きが驚くほど軽い」と、プレイヤーからの人気は上々だ。「ラウンド後に市街地へ下りて行けばいわゆる格安マッサージ店はたくさんあるが、ゴルフ場でラウンド前後にストレッチを施すサービスは珍しい」と梶谷さんは話す。

朝の時間を有効活用

実はこのストレッチを担当するスタッフのほとんどがお母さんだ。

Photo by MARIA

昨年11月から愛知県豊田市のゴルフ場ではたらく伊藤めぐみさん(仮名・35才)もその一人。6歳と8歳の子を育てながらはたらいている。

「子どもが小学生なので、学校から帰ってきたときには家で迎えてあげたい」(伊藤さん)と、平日は朝9時から午後2時までフードコートでアルバイトをしている。そして週末は近所の実家に子どもたちと泊まり、休日の朝は両親に子どもたちを預けてゴルフ場に出掛ける。

ストレッチのサービスはラウンド前後にあるが、伊藤さんは主にラウンド前の3時間を担当。朝6時半に家を出て7時にストレッチルームに入るとお客さんがやってくる。1人当たりの施術時間は10分~20分。3時間で施術する人数は10人前後だ。

お母さんにはハングリー精神がある

梶谷さんがゴルフコンディショニングのサービスを始めたのは今から15年前。当初は学生もスタッフとして採用していたが、今はあえて“お母さん”を積極的に採用しているそうだ。「子育てを頑張っているお母さんは背負うものが違う気がするんです。子どもがいるからこそガッツがあって、ハングリー精神があるのではないか」(梶谷さん)。

Photo by Koichi Imai

こだわっているのは時給だ。「おカネは、はたらくエネルギーに変わる大切な要素。地域で一番の高い時給額を目指している」(梶谷さん)。よくマッサージ店で「時給1800円」とうたっている求人情報があるが、これは「施術した場合に時給1800円」であることがほとんど。お客さんが来なければ収入はゼロになってしまう。一方、CS・グループのゴルフコンディショニングは、お客さんの数にかかわらず、業務時間である3時間分の時給が支払われる。

採用後の研修会では、具体的な仕事内容や、ストレッチの一連のパターンを教本やスタッフ相手に教え込む。「未経験者可」と募集することもあって、新しいスタッフの大半はストレッチの施術をした経験はない。だから研修は1カ月半かけてじっくりと行い、はたらき始めてからも3カ月に一度の勉強会で技術の再チェックを欠かさない。なお研修会に参加している時間もきちんと時給が発生する。

安定して稼げる仕事

仕事は1日3時間、週1回からOK。基本的に土日、祝日のみの仕事とあって、スタッフのほとんどがダブルワークだ。ほかの仕事を優先してシフトに入れるよう、翌月のシフトを組むのは、その月が始まる1週間前だ。

「仕事は、まず人ありき。何よりお母さんが求めているのは“安定”です。シフトに入りたかったのに削られた、という事態にはならないように注意している」と梶谷さん。シフトを決めるときは、「どのくらいはたらきたいか」を聞いて最大限反映する。
ゴルフコンディショニング
スタッフの多くが「短時間で高収入を得られること」に満足しているそうだ。と同時に、「普段生活していると出会えないような年代の人からいろいろな話を聞けるのも魅力」と伊藤さんは言う。「お客さんは紳士的な人たちばかり。旅行の話だったり、夫婦の話だったり、人生の先輩としてためになる話が聞ける」。お客さんから勧められた場所に家族で足を伸ばすこともあるそうだ。仕事帰りの疲れた夫にもストレッチを施してあげるようになり、家族の笑顔も増えた。

ゴルフコンディショニング始めて15年、これまで子育て中のお母さんが辞めた例はない。現場に信頼を置く梶谷さんは、採用面接も教育も基本的にスタッフに任せているという。「同じ立場のお母さん同士だからこそ子育てや家族の問題もわかりあえるし、アドバイスもできる」(梶谷さん)。

お母さんが長くはたらける企業には、お母さんの思いを酌み取った企業努力があったのだ。

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