2000人の主婦が裏で支える家計簿アプリ

Photo by MARIA

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「今年こそ家計簿をつけるぞ」と新年の誓いを立てた人もいるだろう。さて2月現在、その誓いは守られているだろうか――と聞きたくなるくらい、家計簿を記帳し続けることは難しい。レシートを管理して転記するのは面倒で挫折しやすいのだ。

そんな中、紙の家計簿より簡単に“記帳”できる家計簿アプリが注目を集めている。たとえばレシートのデータ読み取り機能。レシートをスマホのカメラで撮影するだけで、数字や文字を読み込み記録してくれる。

ただし機械がスキャンすると誤入力も多い。結局レシートを片手に手で入力する羽目になった、という声も聞く。

99%以上の精度

そんな中、入力精度の高さで大人気なのが、2013年にリリースされた無料の家計簿アプリ、「Dr.Wallet」だ。Dr.Walletの特長は、レシートのデータを正確に移行してくれること。「二度手間にならなくて助かる」と口コミが広まり、30代~40代の主婦を中心に約150万人ものユーザーに使われている。日用品や食品メーカー20社と提携しており、対象商品を購入してレシートを登録すればクーポンを入手できる点にも特徴がある。

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レシートを撮影するだけでデータを移行してくれる

Dr.Walletをリリースしたベアテイルの社長、黒﨑賢一さんは、「人の目で確認して手入力しているから精度が高いんです」と明かす。データ移行の精度はなんと99%以上。1日に約10万枚分のレシートデータが届き、2000人の在宅オペレーターが一項目ずつ確認しながら入力している。

在宅オペレーターのほとんどは20代~40代の主婦で子育て中の人も多い。ベアテイルがクラウドソーシングなどを通じて募集し、タイピング能力のテストなどを経て採用した。地方に住んでいる人が多く、中には海外在住の人もいる。

使う人もはたらく人も主婦

ノルマはなく、空いた時間にパソコンを立ち上げてレシートのデータを入力するだけ。短ければ、1枚処理するのにかかる時間は30秒ほどだ。

おもしろいのは、Dr.Walletを使う人も、その裏側ではたらく人も主婦だということ。双方が動き出す時間は、夕飯が終わって一息つける夜7~8時ごろ。オペレーターがパソコンを立ち上げればいつだって仕事が待ち受けている。人にもよるけれど、時給に換算すると平均800円くらいになり、月に数千円程度をお小遣い代わりに稼ぐ人もいれば、10万円以上を稼ぐつわものもいる。

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Dr.Walletを立ち上げた当初、黒﨑さんはクオリティの高いオペレーターに固定の時間ではたらいてもらうことも考えたという。しかし戦力となりそうな主婦は、日中、子どもの世話や家事で忙しく、もっと自由なはたらき方を求めている。「少人数に長時間はたらいてもらうのではなく、大人数の細切れ時間を活用できるようなオペレーションを整えていきました」(黒﨑さん)。

と同時に、顔の見えない人を雇うことも増えたから、高い品質を保つ工夫も必要になった。1枚のレシートは2人のオペレーターが担当し、2人のレシート情報が一致すれば正しい情報と判断され、2人に報酬が支払われる。一致しなければ別の人が情報を入力し、正しい情報を入力した人にだけ報酬は支払われる。間違った数が一定の割合を超えると、システム上、自動的に仕事が割り振られなくなる。

優秀な人は“引き抜き”

ベアテイルは、2016年2月、企業向けの経理精算システム「Dr. 経費精算」をリリースした。ゲームサービス会社など上場企業を中心に約160社が導入している。

Dr. 経費精算もDr.Walletと同様、レシートや領収書のデータをスキャンで読み取り、人の手で入力を行う。ただ入力項目が多いうえ、機密性が高いデータを扱うため、オペレーター選びは慎重にしている。今いる2000人の中から、ある程度の量をこなせて、精度の高い仕事ができる人を100人選んだ。

マネージャーも3人採用し、オペレーターからのさまざまな質問に答える管理業務を任せている。24時間体制のため、3人は8時間ごとのシフトではたらく。日本在住の2人に加え、時差のあるドイツ在住の1人をあえて採用したという。ドイツ在住の橋本かおりさん(仮名、32)は、ドイツ人の夫と2歳の子どもの3人家族。現地で仕事を探すのが難しいと悩んでいたとき、ベアテイルの仕事に出合った。「パソコンとネット環境さえあれば仕事ができる。子どもの都合に合わせてフレキシブルにはたらけるのが魅力」と橋本さんは言う。

大人気の家計簿アプリも、企業の経理担当者を助ける経費精算サービスも、主婦のはたらきによって支えられているのだ。

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