中古物件をすてきに生まれ変わらせる仕事

住宅関連の専門職といえば、「インテリアコーディネーター」や「整理収納アドバイザー」などが有名だが、今、「ホームステージャー」という新たな仕事が注目を集め始めている。

ホームステージャーの仕事は、片付けからインテリアまでトータルコーディネートで住宅を魅力的に演出すること。中古住宅をより高く、かつ早く売却できるよう魅力的な物件に生まれ変わらせる。

ホームステージングは1972年にアメリカで誕生した手法。アメリカでは今や、中古物件を売却する際には当たり前のように活用されているという。

日本ホームステージング協会が日本の住環境に合わせた資格制度を始めたのは2014年2月と最近だ。しかし注目度は高く、基礎を学べる2級取得者はすでに700人を越えた。

演出して2日で売れた

国土交通省の資料によれば、日本で流通する住宅のうち中古住宅の流通シェアは15%に満たない。アメリカやヨーロッパの5分の1程度というから、どれだけ低い水準かがよくわかる。

こうした状況から国も中古物件をもっと流通させようと動き出している。国の後押しもあることから、住宅関連業界がその方策の一つとして注目しているのがホームステージングなのだ。

片付けや掃除に始まり、インテリアの提案、必要に応じて家財の保管やゴミ処理、遺品整理、戸建てなら庭など建物の外側まで、ホームステージングのかかわる分野は多岐にわたる。あらゆる角度から物件の魅力を高めるだけあり、ホームステージングを取り入れれば部屋は見違える。

たとえば、天然石素材を一部の壁面に使った分譲物件のホームステージングでは、壁面素材の雰囲気に合わせビンテージ調家具や大きなスタンド照明を置いて、住むイメージが湧きやすい空間に変えた。すると演出してからわずか2日で売れたのだそう。

壁面素材に合わせたインテリアコーディネートで見違えった

壁面素材に合わせた演出で魅力的な空間に

「2年売れなかった物件が希望価格かつ1か月で売れた」「賃貸マンションの空室が埋まった」「家賃を上げることができ満室が続く」といった声も寄せられている。

「大手デベロッパーや物流業者の中にはホームステージングの専門部署を作ったところもあります。今年は実務として導入する不動産会社も増えるのでは」と、日本ホームステージング協会代表理事の杉之原冨士子さんは話す。

主婦の感性が生きる

杉之原さんは「女性に向く仕事だと思います」と後押しする。「日頃から家事をしていれば、家を購入するときに主婦がどこを気にするかがわかる。宅建(宅地建物取引士)やインテリアデザイナーの資格を持っている人がホームステージャーの資格を取ると、復職の選択肢も広がるのでは」(杉之原さん)。

小塚陽子さんはまさにキャリアと主婦経験を生かしてホームステージャーとして活躍する女性だ。

結婚前にアートの企画やプロデュースを展開する会社で6年間経験を積み、退社。起業して、行政や企業などの依頼でまちづくりや空間演出などを手掛けてきた。

ただ、ずっと仕事一筋だったわけではない。起業して数年後に結婚、出産、そして夫の転勤により米国へ移り住んだ。できる範囲で仕事は続けていたが、ママ友とのお付き合いや子育てが楽しく、主婦である時間も大切に過ごしてきたという。

ホームステージャーの小塚陽子さん

ホームステージャーの小塚陽子さん

一方、思いきり仕事ができずモヤモヤしたことも。だから、「腕が鈍らないよう気をつけていました」と、小塚さん。アメリカでは子育てのすき間時間を使って美術館に行きセンスを磨いた。帰国後も社宅のママ友親子を招いてのホームパーティなど、身近な場所で、飾り付けやテーブルコーディネートを実践し続けたという。

そのうち小塚さんのセンスにほれたママ友から「引っ越しを機に食器を整えたい」と相談されるように。手持ちの食器の整理や新たな食器の購入、テーブルコーディネートのアドバイスをすると喜ばれたという。今までは公共施設などの仕事が多かったが、これを機にママ友の紹介などで個人宅の室内演出も少しずつ手掛けるようになった。

「やってきたことはまさにホームステージャーの仕事」。資格の存在を知ったとき、小塚さんはそう思ったという。早速ビジネス的な要素を組み込んだ1級まで取得し、今は協会のセミナー講師としても活動している。

未経験者でも

経験値やセンスがモノをいう仕事なので、小塚さんのようにさまざまな経験や努力を積み重ねてきた人が即戦力となるのはいうまでもない。

しかし、まだそんなに知られていない仕事だけに、未経験者も比較的トライしやすい。実際、住宅関連業界での経験はないものの資格を取り、現在フリーランスとして仕事を広げている女性もいるとか。

未経験者でもチャレンジできる

片付けからインテリアコーディネートまで、トータルで提案する例も

協会のバックアップ体制も未経験者のチャレンジを後押ししている。2級を取得すると、協会会員として1年間無料でセミナーが受けられ、ホームステージャー同士の交流会(有料)にも参加できる。

首都圏はもちろん地方でもホームステージングのニーズは高まっていきそうだ。住宅関連業界ではたらくことに興味があるなら一度チェックしてみるのもいいかもしれない。

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