お母さんの小さな力を束ねる会社

人生の一大イベントである結婚式を陰ながら支えているお母さんたちがいる。招待状や席次表などウエディング用ペーパーアイテムのネットショップ、アラース。30~40代の子どもを持つお母さんたちが一つひとつ手作りするアイテムが人気を集めている。

アラースはウエディング用ペーパーアイテムの先駆け的な存在。2006年のオープンからこれまでにお手伝いした結婚式はなんと1万組以上だという。

アラースのウリは、繊細なレースやリボンをあしらった、乙女心をくすぐるデザイン。中でも「シンデレラ」などグリム童話をモチーフにしたプリンセスシリーズは人気が高く、結婚情報誌を見て一目ぼれしたという人からの問い合わせがひっきりなしにくる。ブライダル関連市場は縮小ぎみだけれど、アラースには多い月で約4300部の注文が入る。

10年のブランクを経て再就職

アラースを運営する会社、プチトリアノンは、社長の山内美穂さん(38)を含め10人のスタッフ全員がお母さん。アパレル企業ではたらいていたこともある山内さんがデザインを担当し、ほかのスタッフが制作や注文管理、商品の発送を行う。

繊細なパーツを、一つひとつていねいに張り付ける

繊細なパーツを、一つひとつ丁寧に張り付ける

制作を担当するスタッフは自宅で作業する。家が近い人は材料を取りに来て、空いた時間に自宅でコツコツと作る。繊細なレースやスパンコールなどの飾りを丁寧に張り付けるなど、手先の器用さが求められる仕事だ。製作スピードは人によって違うものの、多いと1週間に200部を作る人もいる。

出社して顧客対応や発送を行うスタッフは4人。週3日、午後5時までの勤務なので、家事の時間もしっかり持つことができる。まだ子どもが小さいスタッフの中には、週に一度だけ出勤し、それ以外の日は在宅でペーパーアイテムを作る人もいる。

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ペーパーアイテムのかわいさに一目ぼれして入社する人も多い

顧客対応を担当する岡田千恵さん(41)ははたらき始めて4年目。現在、中学1年生と小学4年生の男の子を育てている。

以前は商社で事務職に就いていた岡田さんだが、出産を機に仕事を辞めたため、10年以上のブランクがあったという。下の子が小学生に上がるタイミングで再びはたらきたいと思ったものの、ブランクが長く満足に仕事ができるかどうか悩んでいた。そんなときに求人情報誌でアラースを知ったそうだ。「ペーパーアイテムのかわいさに一目ぼれし、勇気を出して履歴書を出してみたんです」(岡田さん)。

岡田さんにとって仕事はリフレッシュの時間にもなっている。「ただおカネを稼ぐためだけの時間ではない。私がもっと私らしくいられるために必要な時間を過ごさせてもらっています」(岡田さん)。職場ではお母さんスタッフ同士で、子育ての悩みを相談し合うこともあるそうだ。

出産ラッシュが転機に

今は全員がお母さんスタッフのプチトリアノンだが、実は最初からそうだったわけではない。山内さんが26歳でアラースを立ち上げた際には、主に同世代の独身スタッフを採用。かわいいデザインにあこがれて遠くから通ってくる人も多かった。彼女たちが30代になった頃、 “出産ラッシュ”がやってきた。

出産ラッシュを経て考え方が変わったという

出産ラッシュを経て考え方が変わったという

出産を経て通えなくなった内勤スタッフが皆辞めることになり、山内さんは気づいたという。「会社の近くに住んでいて、かつ子育てが一段落したお母さんなら長くはたらいてくれるのでは」。それからは地元の求人誌を使い、子どもが幼稚園や小学校に入学した人を中心に採用したという。

同時期に、山内さん自身が出産を経験したことも大きかった。年子の2人を育てる中で、息が詰まりそうになることもあったという。「家事や育児に追われる主婦は、やりたい仕事に費やすことができる時間が少ない。でも一人ひとりの小さな力が合わされば大きい力になるんです」(山内さん)。

小さな力の積み重ねでできている

小さな力の積み重ねでできている

「お母さんがはたらくには通勤時間が短いのが大前提」と山内さんは言う。子どもが熱を出したとなればすぐ帰れるし、家事の時間も十分取れる。家族のコミュニケーションもおろそかにならない。交通費がかからず、急な仕事が入ったときにすぐ対応してもらえるという、会社側のメリットもある。

山内さんは第3子を妊娠中でこの春に出産予定。出産前後はつねに会社にいるわけにはいかないが、「長く続けてくれているスタッフが多いので、第1子や第2子のときほど心配していません」と笑う。

お母さんの小さな力を合わせて届けられるペーパーアイテム。これからもたくさんの結婚式を華やかに彩り続けることだろう。

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