仕事復帰の“助走”をボランティアで

Photo by MARIA

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子育て中心の暮らしから“仕事モード”へ―ー。そんなキャッチコピーのもと、乳幼児を育てるお母さんたちが参加している社会貢献活動「ママボノ」。お母さんがこれまでの仕事で培ってきたスキルに、子育てで得られた新しい考え方や物の見方をプラスして社会や地域のために力を貸す。

ママボノに参加するのは仕事復帰を目指すお母さんたちで、復職に向けたウォーミングアップにもなっている。子ども同伴のお母さんたちが集まって、悩みを分かち合いながらプロジェクトを進めていく。

赤ちゃんと一緒にミーティング

職業上の専門的なスキルや経験を生かし、さまざまな地域や社会の課題解決をしようというボランティア活動を「プロボノ」と呼ぶ。ママボノはプロボノのママ版。プロボノワーカーと支援先団体のマッチングを行っている認定NPO法人「サービスグラント」が2013年にスタートさせた活動だ。

11月、都内の会議室に60人近くのお母さんたちが、赤ちゃんや幼い子どもを連れて集まってきた。10月から10のチームに分かれてさまざまなNPOや地域団体の活動を支援しており、この日はキックオフミーティングが開かれていた。

赤ちゃんを抱っこしながらミーティング

赤ちゃんを抱っこしながらミーティング

参加対象者は「育児休業中で復職予定の女性」または「再就職を視野に入れている子育て中の女性」。今年は日本財団からの助成金を得たおかげで東京で66人、大阪で12人ものお母さんたちが参加する大規模なものとなった。

NPOや地域団体から依頼のあったチラシ制作やホームページの改善、マーケティング調査といったプロジェクトの中から、お母さんたちの希望を聞いて参加チームが決まる。メーリングリストなどでのやり取りの後、10月末には事前オリエンテーションとして初めてメンバー同士で顔合わせをして、いよいよプロジェクトのスタートだ。

出産前は第一線で働いていたお母さんたちだからこそ、スイッチが入るとその勢いはすごい。子どもを抱っこしながら、ときには授乳したり離乳食を食べさせたりオムツを替えたりもしながら、お母さんたちはテキパキと話し合いを進めていく。

2人目の育児休暇中、ママボノに参加している大道あゆみさん(中央)

2人目の育児休暇中、ママボノに参加している大道あゆみさん(中央)

0歳の赤ちゃんを連れて参加していた大道あゆみさん(36)はIT系のサービス会社でマーケティングリサーチャーをしていて、今は2回目の育児休暇中だ。今5歳になる1人目の出産時には育休を1年半取った。復帰後、仕事の感覚を取り戻すのに少し時間がかかったそうだ。「今回はスムーズに会社へ復帰できるための“助走”として参加を決めました」(大道さん)。

大道さんはママボノの活動のおかげで、1人目の育休中より充実した日々が送れるようになったと感じている。「パソコンも使いますし、いろいろな出来事にアンテナを張るようにもなりました。メンバーとはすぐに仲良くなれ、これからも長くいいお付き合いをしていけそうです」(大道さん)。異業種のお母さんたちと知り合えるのも、ママボノの大きな魅力だ。

週に5~10時間が目安

支援先の団体が期待するのは、お母さんたちの生の声と、これまでの仕事で培われてきたスキルだ。

NPO法人「子育てネットワーク・ピッコロ」(東京都清瀬市)は、一時預かり保育やファミリーサポートなどの事業が利用者のニーズに対応できているのかを探りたい、と、利用者アンケートの作成を「ママボノ」に依頼した。チームのお母さんたちは、ピッコロを訪問して実際にサービスを体験。自分たちと同じ子育て中の利用者なら、どういうことが気になるだろうか、など仮説を立てながら、アンケートの設問を作っていっている。

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理事長の小俣みどりさんは、「お母さんたちのニーズを探り、今後の活動に生かしたくてお願いしました。仕事と子育ての両方を大事にしながら、やりたいことを実現しようとしている姿勢はとてもすてきです」と話す。

お母さんたちの“仕事”の完成度はすごい。たとえばチラシ制作のプロジェクトであれば、ただ作るだけではなく「どのようなデザインにすれば好感を持ってもらえるのか」「どこに置けば多くの人の手に取ってもらえるのか」といったことまでお母さん目線で提案。ウェブ改善のプロジェクトでは、多くの目に触れるには検索結果で上位に表示されるのが大事、などポイントを伝える。

力が余っている人もいる

赤ちゃん連れでのボランティア活動はたいへんではないのだろうか。

情報システムの会社で営業の仕事に就く奥田英里子さん(29)は、1人目の育休中。「はたらいているときにはできなかった社会勉強もしたいし、自分の力を役に立てたい」という奥田さんは、ママボノでもリーダーとしてチームをまとめている。「育児は大変だと思われますが、力があり余っている人だっています。その力を発揮する場がママボノなんです」。

一時保育のサポートもある

一時保育のサポートもある

何人かのお母さんに、負担に感じることはないのか聞いてみたが、みんな同じ子育て中の立場ということもあって、チーム内でうまく助け合い、活動には無理なく参加できているそうだ。事務局の樫尾直美さんによると、ママボノとしては週5時間から10時間でできる活動を目安とし、つい頑張ってしまうママたちに、「走りすぎない、頑張りすぎないよう」メッセージを出しているそう。

今後は12月に支援先への成果提案、2月に報告会が予定されている。東京会場に今年集まったのは、育休中のお母さんたちばかり。「今後は、出産や育児のために仕事を辞めて、いま主婦の立場にあるお母さんたちにもたくさん参加してもらい、再び仕事を始めるきっかけにしてほしいです」(樫尾さん)。

ママボノで無理なく活動することが、仕事復帰へのきっかけになるかもしれない。

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