“すき間時間に100%”で主婦を戦力にした会社

Photo by MARIA

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主婦の内職は低賃金。そんな“常識”を覆す、主婦だけの会社がある。

在宅の主婦の力を借りて企業の事務代行や塾の模擬試験の採点を代行する、エデュケーションデザインラボ(EDL)。つくば市を中心におよそ100人の主婦が活躍している。

EDLではたらく主婦は1日数時間、時間の空いたときにPCに向かう。給与は出来高制だが、仕事に慣れた人だと時給換算で1000円くらいになるそうだ。社長の平塚知真子さんは「子育てをしながら片手間にやるのではなく、すき間時間に100%の力を出し切ってもらうからこその高時給です」と話す。

チーム力があればこそ

EDLの事務代行は単純な入力作業などではない。得意としているのは、ウェブサイトの更新や動画の編集・投稿。今、都内の会社を中心に24社をお客さんとして抱える。

たとえばネットを使って学ぶeラーニングを始めたいという企業や団体は増えているけれど、きちんと運営するのは意外と大変。動画の投稿や編集、更新に加えて、不具合が起きたときの対応や視聴者からの問い合わせへの回答といった細かな作業が多いからだ。EDLにお願いすれば、主婦のチームがeラーニングの運営をまるっと引き受けてくれる。

「主婦はITが苦手というイメージがあるかもしれませんが、チーム制にしているので経験のない人でも無理なく仕事を学んでもらえます」(平塚さん)

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一つのプロジェクトを請け負ったら、経験豊富なチーフを中心に3~4人のチームを組んで仕事に当たる。初めてでも無理なくできるのは「ネットコモンズ」を使っているから。ネットコモンズは国立情報学研究所で開発されたシステムで、これを使えばプログラミングの知識がまったくなくてもウェブサイトを作ることができる。学校や協会のサイトを作るときによく使われているのだそう。

もちろん最初のうちは、慣れれば10分でできる作業が30分や1時間かかることもある。それでも数カ月も経てば早い人なら「中堅」として新人を教える立場にもなれるのだ。

モヤモヤが晴れた

EDLで事務代行を始めて1年になる中條真由美さん(仮名)は早くも「中堅」。以前は貿易事務の仕事をしていたが6年前、出産を機に辞めた。子どもが特別支援学校に通っていて毎日会社に通うことは難しいので、在宅でできる仕事を選んだという。

中條さんはつねに3つほどのプロジェクトに携わっている。毎日1~2時間はPCに向かい、急ぎの仕事であれば5時間くらい集中して作業することもある。「“○○のママ”としか呼ばれない日々にモヤモヤしていましたが、はたらき始めたことで自分のアイデンティティがはっきりしました」(中條さん)。

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在宅とはいえチームで仕事をするから一体感も味わえる。

まじめな人は一人だと仕事を抱え込みすぎたりついつい“サービス残業”をしてしまったりする。チーム制であれば「どこまでやるべきか」迷ったらすぐにチームのまとめ役に相談できるし、わからないことがあれば都度尋ねられる。メンバー同士のやり取りは日頃はチャットで、月に一度は顔を合わせてミーティングをしている。

責任感と居場所はセット

EDLでは中学生向けの模擬試験などの「デジタル採点」も請け負っている。

約60人の主婦が教科ごとに7~8人のチームを組み、年間のべ16万人分の採点をしている。スキャンした回答用紙が専用のPCに表示されるので、採点する人は家に解答用紙の在庫を持たなくていい。

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採点は季節仕事。受験シーズンを控えた秋冬や、長期休みの後などは仕事が一気に増える。夏休み後の復習から有名私立校の模試までレベルも内容もバラバラ。記述式問題の採点では「どこまでをマルとするか」など、経験を積まないと身に付けられないポイントもたくさんある。

今いる採点スタッフの4分の1が5年以上勤めており「向いている人にはとことん向いている仕事」(平塚さん)。1枚当たり20~40円の報酬で、時給に直すとだいたい1000円くらいになるそうだ。忙しい時期には寝る間もなく仕事をすることもあり、やり取りも密なので教科ごとのチームの結束は強い。

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「お客さんにとっては、事務代行も採点も“正社員がずっとやるには負担だけれど適当にはできない仕事”。だからこそきちんと仕事をしてくれる主婦チームに依頼がくるのだと思います」(平塚さん)

責任感を持った主婦がチームとして請け負うからこそ、頼む側は信頼して任せられるし、はたらく側も一体感ややりがいを得られる。これまでの“常識”を覆すような仕組みはこうやって成り立っている。

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