市民ライターで街とつながる、仕事につなげる

Photo by MARIA

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誰でも企画を考える会議に自由に参加でき、市民ライターとして記事を書くチャンスがあるタウン情報誌がある。毎号、東京・多摩地域の自治体を一つずつ特集している『たまら・び』(多摩情報メディア発行)。もちろん、子育て中のお母さんたちだって、雑誌作りにかかわれる。

アクションを起こすきっかけに

企画会議は「まちの魅力発信会議」と呼ばれ、参加者同士で街の特徴や、自慢できるところ、まだ知られていないスポットなど、意見を出し合うところから始まる。毎回、まちづくりに関心のある大学生や、地域活動に熱心な高齢者などさまざまな人が集まる。

『たまら・び』の大きな特徴は、誰でも市民ライターとして活躍できるチャンスがあること。ライター経験がない人でも、編集会議を通し、アポ取りの仕方や取材のイロハを教えてもらえる。

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“マニュアル”には一通りの取材の流れが書かれている。

「カメラは撮影の有無に関わらず持っていくと取材時の雰囲気などが記録できて便利」「ICレコーダーで録音するときは事前に必ず許可を得る」といった注意事項がわかるようになっていてとても便利。取材を受けてくれる人の読み方も含めたフルネーム、商品の正式名称や価格(税込みか、税抜きか)など、最低限、確認しなければいけない項目がチェックリストで示されているのもわかりやすい。写真の撮り方や原稿の書き方についても事前に一通りレクチャーがあり、それでも不安があるなら取材に編集部の人が同行してくれる。

街のいろんなことに首を突っ込んで聞けるのが楽しい

街のいろんなことに首を突っ込んで聞けるのが楽しい

三鷹市に住む佐藤千香さん(44)は、『たまら・び』の市民ライターから新しい扉を開けた一人。もともと書くことに興味があり、3人の子どもを育てながら、エッセイを書いたり公募にチャレンジしたりと自分なりに文章を書くことを続けていた。

あるとき気になるお店を取材してリポートしたところ、ブログを読んでくれる人が増えた。文章を書くことに喜びを感じ、次のステップとして『たまら・び』の市民ライターに参加することにした。

「ライターという立場だと、街のいろいろなことに首を突っ込んで、話を聞くことができます。それがとても楽しいんです」と佐藤さん。稲城市の特集号を作ったときは、市出身の作家、窪美澄さんへのインタビュー企画を立てたところOKが出て、ずっと憧れていた作家さんと直接話せる機会を得た。「すごく緊張したんですが、今まで知らなかったエピソードも聞けて“役得”でしたね」(佐藤さん)。

今も『たまら・び』の制作に毎号かかわっているほか、地元のタウン情報を集めた別の冊子づくりでも協力してほしいと誘われている。

子どもを抱っこしながら

八王子市に住み、4歳と1歳の子どもを育てる細野由季恵さん(30)も、『たまら・び』の市民ライターとして活躍する一人。もともとフリーのデザイナー・ライターとして活躍していたけれど、普段は都心での仕事が多い。そこで「もっと自分の住む地域とつながるきっかけがほしい」と、『たまら・び』八王子特集号の企画会議に参加。会議は夜に開かれていたが、子どもを抱っこしながら出席した。

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細野さんは子連れで取材をし、ベーカリーと幼児施設の記事を書いた。発行されたときは、自分の署名入りの記事を見てやりがいを感じたという。でももっとうれしかったのは、地元の人たちと交流するきっかけができたこと。取材先で知り合ったお母さんたちとは、子育てや地元の情報を交換しあう“ママ友”にもなった。

自分自身、まちづくりへの興味も深まったし、うれしいことに地元で仕事のお誘いを受けることも増えてきた。「商店街のイベントをPRするチラシの制作にデザイナーとしてかかわることにもなりました。地元だからこそ、人のつながりがどんどん広がるんですね」(細野さん)。

『たまら・び』

『たまら・び』では市民ライターのお母さんが活躍している

『たまら・び』の編集長で、「けやき出版」(東京都立川市)代表の小崎奈央子さん(38)によると、地域差はあるものの、だいたい毎号、市民ライターとして子育て中のお母さんが参加しているという。さまざまな立場の人が発信する情報、そこに暮らしているからこそ知っている情報が『たまら・び』の魅力を高めている。子育てをしているお母さんたちの意見も、当然とても大事にされる。

「私も2人の子育てをしながら必死に仕事をしてきたので、仕事と子ども、どちらかしか選べないという状態を少しでもなくしたいと、いつも思ってきました。『たまら・び』が、小さなお子さんのいるお母さんたちでも仕事することをあきらめず、何かアクションを起こすきっかけになればうれしいです」(小崎さん)

現在は、2017年1月に発刊予定の多摩市を特集した号の取材、編集が進んでいて、ここでもお母さんたちが活躍している。ちょっと勇気を出して一歩を踏み出せば、新しい世界がきっと広がっていく。

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