お母さんたちの自分の時間を作り出す仕事

『ハレタル』では、子育て中の女性がはたらきやすい会社、子育て中の女性こそが活躍できる仕事のベストプラクティスをよりすぐって取材しています。その会社で人材の募集をしている場合、求人情報を掲載していますが、これは求人広告ではなく編集部による取材記事です。

10月のある平日、ランチのピークを過ぎた昼下がりのフレンチレストランに、子どもを連れたお母さんたちが集まってきた。店内の個室に設けられた託児スペースに子どもを預けると、それぞれ席に着き、おしゃべりに花を咲かせながら、ランチコースを楽しんでいる。

吉田さんと澤井さんは、お互いが結婚する前からの友人同士。メインの魚料理を食べながら、共通の趣味である芝居の話や友人の近況などを報告しながら盛り上がっていた。その隣のテーブルに着いた野尻さんと横山さんは、実は今日が初対面。お互い1人でこのランチ会に申し込み、0歳児を育てるお母さん同士ということで意気投合した。お互いの職場のことや夫の家事貢献度など、話題は尽きない(いずれも仮名)。

このランチ会は、高級レストランなどと提携して子育て中の女性向けに託児付きの特別プランなどを提供している「ここるく」が企画したもの。代表の山下真実さんは言う。

「子どもは確かにかわいい。でも子育てはいわば『のれんに腕押し』の毎日です。だからお母さんたちは日々『こんなはずじゃなかった』と少しずつ追い込まれていく。子どもの前では笑顔でいたいのに、心のコンディションは最悪。そのネガティブなループを断ち切る必要があると感じていました」

Photo by MARIA

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子どもと一緒にいると、ママ友と会っても話題は子どものことばかり。家族との会話も子どものことが中心。いつしかお母さんたちは「私」という主語で話すことを忘れていく。

「ときどき、お母さんから『子ども』を引っぺがしてあげることも必要」と山下さんは言う。そうして、自分のことを見つめてもらう時間を作ってあげる。女性活躍うんぬんをいうよりもまず必要なことだ。

決して「ぜいたく」じゃない

ランチ会に参加していた横山さん、実はこのことを夫には内緒にしているという。

「夫に説明しても、毎日家にいるということがどういうことなのかわかってくれないと思う。24時間子育ての責任を負っているということの大変さもわからない。だからこんな『ぜいたく』と思われるのが嫌で」(横山さん)

確かに「子どもを預けておいしいランチを食べに行く」なんて、ぜいたくなことに思われるかもしれない。この日のプランは託児付きで6800円と決して安くはない。でも「お母さんたちにとって、それ以上の価値がある」と山下さんは断言する。

Photo by MARIA

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それは、約2時間のランチコースを終えてから、託児スペースに子どもを引き取りに行ったときのお母さんたちの顔に表れていた。手を広げて子どもを迎え、ぎゅーっと抱きしめるその目には、温かなやさしさがあふれている。

帰り際に、子どもを抱っこしながら吉田さんが言った。「普段の私って本当に心をすり減らしていたんだなってわかりました。今日からまた子どもときちんと向き合えそうです」。

山下さんは言う。「都会ではちょっとの間だけでも抱っこを替わってもらう機会さえないんです」。

子連れのスタッフも

その「ちょっとの間だけでも抱っこを替わってくれる」人が、ここるくの「だっこママ」たちだ。お母さんたちがランチを楽しんでいる間、店内の個室や近隣のスペースで子どもたちのお世話をしてくれる。

上田英理さん(30)もだっこママの一人。実は上田さん、今年2月に出産した瑚々ちゃんを連れてだっこママの仕事をしている。

週に1~2回、瑚々ちゃんを連れて、自宅から直接会場となるレストランに“出勤”。託児スペースで準備をすると、参加者が連れてくる子どもを迎え入れる。瑚々ちゃんはいつの間にか、ほかの子どもたちと遊んでいる。「この子にとってもいい交流の場ができて楽しそうです」(上田さん)。

関西の保育園で保育士としてはたらいていた上田さんは昨年、夫の転勤を機に仕事を辞めて上京した。就職活動を始めようとしていた矢先に妊娠が発覚。初めての土地で、知り合いもいないまま、専業主婦になった。

孤独な育児はつらかった。保育士でも自分の子育てにはまったく自信がない。少しでも子どもの体調に変化があると、自分がどうにかなってしまうほど悩んでしまう。

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そんなとき、旧知の友人が「ここるく」で保育スタッフを募集していることを教えてくれた。「子どもを連れてきてもいいよ」という言葉に、二つ返事で引き受けた。

「子どもが大きくなるのは本当に早いというのは、保育園ではたらいていたときから実感していました。だからこそ、今は子どもとできるかぎり一緒にいたいと思っていました」(上田さん)

でも、子どもと2人きりで過ごすうちに、社会から取り残され、孤独を感じる。ぜいたくな話だけれどそれは事実。子どもを連れて週1回からはたらけるなら、それがいちばんいい。

子どもにも特別な時間を

ここるくのランチ会はだいたい2時間。上田さんには「参加したお母さんたちだけではなく、預かった子どもたちにとっても特別な時間にしてあげたい」という思いがある。

預かり予定の子どもたちの年齢が知らされると、瑚々ちゃんを寝かしつけた夜に、保育園時代に使っていた本を開いて下準備をする。そんな時間も今の上田さんにとっては楽しいひととき。また、ほかの子どもを預かるには相応の責任も生じるものだが、そうした緊張感も心地よく感じるのかもしれない。

だっこママたちは、2カ月に1回、定例のミーティングを行っている。それぞれが困っていることを相談したり、季節の遊びについて話し合ったりする貴重な会議だ。だっこママは、保育士資格を持っていなくても子育て経験のある人も多く活躍している(託児には必ず資格保有者を含めた2人以上のスタッフが当たる)ため、こうした機会に全員のスキル向上を図るという目的もある。

上田さん以外にも、定例ミーティングに子連れで参加するスタッフはいて、その和気あいあいとした雰囲気が、みんなのモチベーションにもつながっているようだ。

◆だっこママの仕事
・仕事内容:ここるくサービスご利用者のお子さまの保育
・給与:時給1200円~
・勤務日:1日3時間程度、週1日~
・勤務地:東京都内各所、大阪市内各所
・問い合わせ先:ここるく問い合わせフォーム

※掲載内容は取材時点のものです。

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