子育てにもプラス? 「保育ママ」という仕事

Photo by MARIA

Photo by MARIA

保育士としてはたらき始めても出産や育児で退職し、そのまま戻らない人は少なくない。実際にはたらいていないけれど保育士の資格を持っている人は約70万人。保育士の仕事は、やりがいはあるけれど早朝勤務や残業も多く、育児と両立させるのはなかなか難しい。

尾崎佳代子さん(42)は、子育てと保育士の仕事を両立させている一人。尾崎さんが選んだ道は「保育ママ」。公立保育園に7年間勤めた後、自宅に保育室を開いて保育士を続けている。

ご近所さんに見守られ

保育ママは自治体からの認定を受けて自宅で子どもを預かる仕事。市町村によって多少異なるものの、保育士や看護師などの資格があり、保育経験のある人が条件とされることが多い。3歳未満の子どもを3人まで引き受ける。

尾崎さんの保育室があるのは東京の下町、台東区。通りに面した1階にあり、ガラス戸から中で遊ぶ子どもたちの様子が見える。

毎日3人の子どもたちが尾崎さんの保育室で過ごす。内扉を付けたりと防犯には気を配っているが、「なるべく外との風通しをよくして、ここで保育をしていると地域の皆さんに知ってもらいたいんです」と尾崎さんは言う。

尾崎家はこの場所で昔から家業を営んできた。地域に根差した暮らしをしてきたから、“地域力”のすごさも知っている。

「子どもたちを見るのは私ですが、地域の人が温かく見守ってくれたり声をかけてくれれば、子どもたちが保育室で過ごす時間はもっと豊かなものになると思うんです」

子どもたちを連れて近所を散歩する尾崎さん

子どもたちを連れて近所を散歩する尾崎さん

保育ママになったのは9年前。最初は自宅内で始めたため、子育てを手伝うファミリーサポートと間違えられたり、子だくさんの家庭だと思われたりしたという。その後、家族からの理解もあって自宅の1階に保育室をオープンし、こうした誤解もなくなっていった。

地域力を保育に生かしたいという尾崎さんの姿勢が実を結び、今では散歩途中のお年寄りが立ち寄ったり、地域の看護師さんが気にかけてくれたり、近所のお店から商品をおすそ分けしてもらえるようにまでなった。

何もかも一人でこなす

保育時間は平日の朝8時から夕方6時まで。台東区の保育ママは年末年始と夏期休暇、年間20日間の有給休暇がある。預かる子どものお弁当やミルク、おやつは保護者が持ってくるので、尾崎さんが用意するのは麦茶と自分のお弁当くらい。

とはいえ子どもたちが登園すると休む間はほとんどない。特に子どもがまだ慣れずに泣いてばかりいる4、5月は抱っこしっぱなし。お昼どころかトイレにも行けない日があるという。

保育ママの仕事は幅広くやることも多い。カリキュラムを決めながら、日々の保育、雑務まですべての作業を尾崎さんは一人でこなす。

収入は一般的に、自治体から受け取る収入(補助金、委託料など呼称はさまざまで金額も異なる)と保育料を合わせて月に25万~30万円ほど。保育ママはこの金額の中で、すべての運営をやりくりしている。

自分の子育てにもプラス

一般的に子育てを仕事を両立していると、子どもと過ごす時間が少なくなることを気に病む人は多い。それは、たとえ在宅の仕事であろうと同じ。仕事をしている時間はどうしても子どもは後回しにせざるをえない。

でもその点、保育ママは違う。むしろ自分の子育てにもプラスになると尾崎さんは言う。

Photo by MARIA

Photo by MARIA

尾崎さん自身にも高校生と中学生の息子が2人いる。保育ママを始めたとき二男はまだ小学校1年生。母親がよその子どもの世話をすることをよく思わないのではと心配したこともあったけれど、むしろ保育の手伝いもしてくれるという。

尾崎さんの保育室では、毎年3月に上野動物園へ遠足に出かける。いつも夫が引率者として参加してくれるが、今年は高校生の長男も一緒だった。

「息子たちに小さい子どもたちとのかかわりを持たせられたのも、保育ママをしていてよかったと思うところです」と尾崎さんは振り返る。

Photo by MARIA

Photo by MARIA

たくさん苦労もあるけれど、日々成長していく子どもたちを見守る保育ママという仕事にやりがいを感じている尾崎さん。最近は外国人の家庭から子どもを預かることも増えて、保育のあり方も変わってきた。

「いろいろな家庭があるので、お互いに歩み寄る努力をしても、きちんと理解し合えるまでに1年はかかります。それでも『尾崎先生のところに預けてよかった』と言ってもらえると何よりもうれしいです」

  • この記事をシェア
トップへ戻る