お祭りを盛り上げる仕事

はっきりとした統計はないが、日本には大小合わせて30万ものお祭りがあると言われている。最も動員数の多いお祭りは、博多祇園山笠で300万人。次に多いお祭りは青森ねぶた祭の260万人だ。

この青森ねぶた祭を、小さい頃から毎年、祖母の家への帰省がてら見てきた原瀬優子さん(29)。たくさん人が集まって楽しそうにしている様子を見るのが大好きだったという。

そんな原瀬さんが、祭りのパワーを実感したのは2011年。東日本大震災の直後に開かれた青森ねぶた祭だった。

当時の自粛モードも手伝って観客は減っているのは明らか。ところがだ。夜になって祭りが始まると、地元の人たちはいつもどおり、あるいはそれ以上に盛り上がっていた。大学生だった原瀬さんは「お祭りは日本の元気のもとだ」と確信した。

祭りはどこも人手不足

ちょうどその頃から、原瀬さんは友人の父親が幹部を務める商店街で、祭りのボランティアに参加するようになった。その後も何年か運営の手伝いを続けているうち、「うちも手伝って」とほかの地域の祭りからも声がかかるようになる。それまで観客として楽しむだけだった祭りを運営側から見てみると、祭りはどこも人手不足、アイデア不足で困っていることを知った。

会社員との二足のわらじで各地のお祭りをサポートしていたら、企画や制作物などおカネの発生する仕事として頼まれることが増えてきた。そこで原瀬さんは、14年に株式会社オマツリジャパンを設立。祭りの運営サポートを事業として手掛けるようになった。

原瀬優子さん

今や、祭り専門のコンサルティング会社として、関東を中心に大小さまざまな祭りやイベントの企画・運営に携わっている。

祭りを支えるサポーター

オマツリジャパンには現在、約200人の「サポーター」がいる。サポーターとは無償のボランティアで、自分たちも楽しみながら祭りの運営や参加に携わる人たち。

それぞれが自分の興味に合わせて「お祭りプロデュース部」「お祭りツアー企画部」「お祭り情報発信部」に所属している。

「お祭りプロデュース部」は、祭りの企画・運営、露店出店、ポスター制作などを行う。「お祭りツアー企画部」は、各地の祭りに観客として出掛けるツアーを組み、みんなで楽しむ。「お祭り情報発信部」はSNSなどを通じて日本全国・世界各国の祭りを紹介する活動だ。

「サポーターの人たちはそれぞれが好きな分野で活躍しています。それだけでお祭りは盛り上がるんです」と原瀬さんは言う。

地元の人たちが変わる

オマツリジャパンによる祭りの企画・運営によって、活性化された祭りはいくつもある。

たとえば、ある商店街の祭りはハロウィーンのファッションショーで1000人程度の動員だったが、オマツリジャパンのサポートによって妖怪のコスプレやゲーム要素を取り入れ、翌年には1600人、2年後には1万6000人まで参加者を増やした。

とはいえ、祭りの活性化は、依頼を受けてすぐにできるものではない。原瀬さんはサポートの依頼を受けると、祭りまでの間に半年ほどかけて地域の人たちと密に交流しながら信頼関係を築くことから始める。

その後、回を重ねるうちに、地元の人たちの意識が変わり、当人たちからいいアイデアが出てくるようになる。だから、「参加者が増えるのは私たちだけの力ではないんです。私のほうが勉強させられることも多くあります」と原瀬さんは言う。

楽しく稼ごう

オマツリジャパンの収入源は、商店街や自治体など祭りの主催者から支払われる企画料や制作料だ。非営利組織でいいのではないかと言われることもある。

しかし、原瀬さんは「『いいことだから協力して』ではなく、『私たちも楽しく稼ぐから、商店街のみんなも楽しく稼ごう』という姿勢が大事。そうでなければ、お祭り自体が残っていかないと思います」と力強く話す。

「かかわったみんなが楽しく、おカネも儲かり、お客さんにも喜んでもらえる。ここに、楽しくはたらく人を増やすヒントがある」と原瀬さん。現在、社員は原瀬さんただ一人だが、やがて規模を拡大し、社員を増やしていくことも視野に入れている。

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