イメージをプロデュースする仕事

Photo by MARIA

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自分ではきちんとしているつもりなのに、なんだか人間関係がうまくいかない。言葉にも気をつけているのに、なぜかトラブルになってしまう――もしかしたらそれは、“イメージ”のせいかもしれない。

お葬式で赤やピンクの服を着た人を見かけたら、どう感じるだろう。たとえその人が深く悲しんでいても、周りには伝わりにくい。どんなに「悲しい」と言葉を重ねても、明るい色の服では説得力がない。

カギは「見た目」が握っている

見た目が人間関係に影響するのなら、うまくコントロールすればコミュニケーションの手助けになるということでもある。

その方法をアドバイスするのが、イメージコンサルタントという職業だ。都内でカウンセリングやレッスンを行っている近藤奈津子さんもその一人。

近藤さんによれば、コミュニケーションのカギを握るのは「見た目」。「コミュニケーションがうまくいかず悩む人は少なくありません。でもそれは自分に能力がないのではなく、方法を知らなかっただけだと思うのです」と近藤さんは話す。

きっかけはケネディ大統領

イメージコンサルタントは、ファッションやヘアメイク、表情など言葉以外のコミュニケーションを使って好印象をプロデュースする。注目されるようになったきっかけは、ニクソンとケネディが争った1960年の米国大統領選だという。

テレビが一般の家庭でも見られるようになってから初めての大統領選。経験も人気もあるニクソンに対して、若手のケネディは徹底したイメージ戦略で戦った。

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選挙の結果に大きく影響したと言われるテレビ討論会で、ケネディはテレビ映えするスーツやネクタイにこだわって好印象を残し、大統領に選ばれた。

イメージコンサルティングという手法が目指すものは、単に”見た目を整える”ことではない。「好印象とは、まず相手に違和感を持たせないということがポイントの一つになります。“なんか違う”と感じる相手に重要な仕事は頼みたくないですよね。その違和感を取り除くのがイメージコンサルティングです」(近藤さん)。

エステティシャンや大手企業の受付などを経験した後、好きなことを突き詰めていったらこの仕事に出合ったという近藤さん。「美容が好き、人を美しくする仕事が好きな方には向いているかもしれません」。

似合う色からプロデュース

近藤さんのイメージコンサルティングでは、カウンセリングで悩みを聞いた後、似合う色や骨格のタイプを見極め、それをベースにメイク方法やコーディネートをアドバイスする。話し方や表情のつくり方をレッスンしたり、ショッピングに同行することもある。

コンサルティングの中心になるのは、似合う色を探す「パーソナルカラー診断」。

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人は髪や肌、目の色によって「スプリング」「サマー」「オータム」「ウインター」と季節になぞらえた4つのタイプに分けられる。顔の下に色布を何枚も当てて見え方を比べ、どのタイプに当てはまるかを見ていく。それまで自分では似合わないと思っていた色が、実は魅力をいちばん引き出す色だったということもあるという。

子どもの卒業式に着ていく服に迷い、実際にコンサルティングを受けてみた。すると、普段から黒、グレー、紺の服ばかり選んでいる私に、意外にも赤やピンクが似合うことが分かった。黒は目立たない色だと思って選んできたが、かえって私自身を浮き立たせていた。一方で紺を着ている私はとても落ち着いて見え、好印象だ。

体型が変わってしまったことも、服の選択に迷った原因の一つだった。けれど近藤さんは「骨格は持って生まれたものだから、体重の増減に左右されることはない」と言い、お互いの骨格を比べながら丁寧に教えてくれた。

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「骨格診断」も近藤さんがコンサルティングで使う方法の一つ。人間の体をラインや質感によって「ストレート」「ウェーブ」「ナチュラル」の3タイプに分けるもので、それぞれスタイルがよく見える服の形や素材がある。

私の骨格では、シンプルでカチッとしたジャケットを着ているとスタイルよく見えるらしい。逆に、好んでよく着ている天然素材のフワッとした服は、ボテッとした印象を与えてしまうのだそうだ。私がボテッとしていたのは、私自身という素材ではなく、洋服の素材の問題だったのか。気持ちが一気に明るくなった。

「自分らしく」をお手伝い

近藤さんのもとを訪れる顧客の中には、「なにかを変えたい」と漠然とした思いでやってくる人も少なくない。けれど、鏡の前に立って近藤さんと一緒に自分を客観的に見ることで新しい発見をし、自分や社会に対する思いこみを軽減させて、軽やかな気分で帰っていくという。

イメージをうまく使えばコミュニケーションしやすくなるが、それだけでは十分ではない。何よりも大切なのは、自分自身を認めて受け入れることだとも話す。

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好感の持てる印象をつくることができても、それが本当の自分とかけ離れていたら、日々の生活がつらくなる。けれど自分自身のことを好意的に、客観的に見ることができれば、新しい冒険もできる。

「私の仕事は、ご自身が相手に見せたいイメージ、相手に思ってもらいたいイメージに、外見から寄せていくためのサポートです。その人がよりその人らしく生られるようお手伝いすることが、イメージコンサルタントの仕事だと思っています」。

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