母から子への願いを込めるひな人形

『ハレタル』では、子育て中の女性がはたらきやすい会社、子育て中の女性こそが活躍できる仕事のベストプラクティスをよりすぐって取材しています。その会社で人材の募集をしている場合、求人情報を掲載していますが、これは求人広告ではなく編集部による取材記事です。

私たちの時代のひな人形は、細おもての輪郭に切れ長の目。段飾りにしても親王飾りにしても部屋の一画を占領し、出すのもしまうのも一苦労だった。

子どもの頃、飾ってある人形のすまし顔はどことなく近寄りがたい雰囲気で、おそるおそる手を伸ばしてみると「さわっちゃダメ」なんて怒られた経験さえある。

自分の娘にも、親の財布で豪華絢爛なひな人形を買ってはみたものの、きちんと飾ったのは初節句のときくらい。

人形店をはしごして、いちばん気に入ったものを買ったつもりなのだけど、今では衣装の色もよく覚えていないという情けなさ……。

だから、「ふらここ」のひな人形を初めて見たときは衝撃を受けた。

ふっくらとした丸い輪郭にぱっちり目。赤ちゃんのようにあどけない表情で、パステルカラーの衣装に包まれている。小ぶりなサイズは5歳くらいの子どもの手のひらにちょうどおさまる大きさだという。

とにかく、かわいらしい。

11月から注文が殺到

「ひな人形はお母さんが生まれた子どもへの思いを込めて選ぶものなんです」

ふらここの原英洋社長は言う。原社長が生まれ育ったのは、100年以上続く東京・浅草橋の有名人形店。跡取りとして20年以上、ひな人形の販売に携わってきた。

自ら店頭に立ちながらつねに感じていたのは、作る側と買う側の間に横たわる深い溝。

「お客さんの多くは『どうせ1年目しか飾らないから』と言いながら商品を選びます。1回しか飾らないのは、大きくて飾りにくいから。

でも小さい商品には『安物』というイメージがある。おじいちゃん、おばあちゃんが孫に贈るギフト商品という意味合いが強いから、大きいものこそ満足度が高いんです」

作り手も売り手も、ひな人形を買っていったお客さんが、それを家庭でどう飾ってどう楽しむかなんて考えたこともない。

「お客さまが本当に欲しいと思うひな人形を作りたい」

原社長がそう決心して実家を飛び出し、ふらここを設立したのは2008年のこと。

以来、ふらここのひな人形は、20~30代の若いお母さんたちの間で、口コミを中心にじわじわと人気を広げてきた。販売はネット通販だけ。

業界ではいまだに「ひな人形がネットなんかで売れるわけがない」と口にする人は多いというが、そんなことはない。

いまや11月の販売開始とともに注文が殺到し、業界が商戦ピークを迎える1月にはほぼ完売。その年に買えなくて、次シーズンの販売開始を待ちわびている人も多い。

注文の際、多くのお客さんがひな人形に対する思いを書いてくる。

「ひな人形は嗜好品ではあるけれど、子どもの無事の成長を祈って買うもの。普通のモノを買うのとは違うのでしょう」(原社長)

昨シーズンもひな人形2200セット、五月人形1000セットを売り切った。

創業以来、クレームはゼロ

春から夏にかけて、節句人形業界は「オフシーズン」。1月から始まるひな人形商戦に続き、2月下旬から始まる五月人形商戦が終わると、小売店も職人もしばしの休息期間に入るという。

ところが、だ。ふらここには、そんなオフシーズンなどない。4月中旬ともなれば職人から続々と来シーズンのひな人形が納品されるからだ。

実は多くの節句人形の小売店では、人形を買ったお客さんからのクレーム率が1割近くに上る。その大きな原因が、業界慣習として続いてきたこの「オフシーズン」にあるという。

多くの職人が仕事を始めるのは夏以降。小売店が商品を仕入れるのは商戦が始まる直前。じっくり検品している時間はない。

ふらここでは、検品に力を入れるために、職人に1年を通じて仕事をしてもらう。だから創業以来、これまで不良品によるクレームを受けたことがない。

7月上旬、東京・東日本橋の本社を訪れると、10人ほどのスタッフが一体一体、慈しむように人形の検品作業を行っていた。

小さなはさみで前髪をそろえ、髪飾りの結び目を整える。着物から出ているほんの1mmにも満たない糸のほつれを取る――。

その作業は、「検品」というよりも人形の最終仕上げ。

検品作業に当たるスタッフの半数以上が実は子育て中のお母さん。購入したお母さんの気持ちになると、人形のほんの小さな乱れも見えてくるのだという。

オフィス内には小さく音楽が流れ、ときおりスタッフの談笑が聞こえるなごやかな雰囲気。手元に集中していると、あっという間に時間が過ぎる。

今年2月からここで働き始めた女性は「このお仕事は何時間やっていても飽きることがありません」と笑う。

ふらここのスタッフは、正社員8人にパートナー社員(時間給で働くパートタイム社員)10人。10人のうち2人は現在、正社員への「チャレンジ期間中」だという。

今年4月、新しい人事制度がスタートした。それは、これまで約1年3カ月にわたって、社長とスタッフが話し合いながら作ってきたもの。

会社が将来にわたって「ありたい姿」をみんなで話し合い、それを一つひとつ、制度に落とし込んできた。

そんな話し合いの中で生まれたものの一つが正社員へのチャレンジ制度。パートナー社員でも目標を定めて一生懸命仕事に励めば正社員になれる。

勤務時間の短い「時間限定正社員」の制度もあるため、女性がさまざまなライフステージを経ながらも、無理なく働き続けることができる。

今年は、福利厚生や教育研修の制度を作るプロジェクトが動いている。こちらもまた、社長とスタッフが話し合いながら一つひとつ決めていく。

少子化でもまだまだ伸びる

節句人形業界全体の売り上げは年々減っていて、もう何年も「少子化だから仕方がない」「生活スタイルが変わったのだから仕方がない」なんて口にする関係者はたくさんいる。

でも、原社長に言わせれば「少子化といっても毎年100万人の赤ちゃんが生まれているんです。100万人の市場に、私たちはまだたった2000セットを売っただけ。まだまだです」。

これからも、ふらここの思いに賛同してくれる職人をさらに増やし、もっと数多く販売できる体制を整えていきたいという。

「ひな人形を飾る文化がすたれてしまわないように、私たち商人の力でなんとか守っていきたい」と原社長は力を込める。

◆ふらここではひな人形と五月人形の検品スタッフを募集しています。
・勤務先:ふらここ(節句人形の製造販売)
・仕事内容:ひな人形と五月人形の検品(最終仕上げ)
・雇用形態:パートナー社員
・給与:時給1000円(昇給あり)
・勤務地:東京都中央区東日本橋3-9-8 furacoco house
(都営地下鉄「馬喰横山」駅、「東日本橋」駅徒歩1分、JR総武快速「馬喰町」駅徒歩3分)
・勤務日数:週5日
・勤務時間:9:00~16:00(休憩1時間含む、残業はほぼなし。9:30~16:30を希望の場合は応相談)
・休日:土日祝日、年末年始、有給休暇あり
・待遇:交通費全額支給、社会保険完備、服装・髪型自由、フロア禁煙
・問い合わせ先:03-6231-1359(担当/原、杉本)

※掲載内容は取材時点のものであり、実際とは内容が異なる場合があります。

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