体を目覚めさせる菜の花のパスタ

3月下旬のよく晴れた日曜日、母と子どもたちと一緒に、実家近くの土手まで菜の花を見に行った。

家と畑の間の道を川に向かって10分ほど歩いていくと、畑の向こうに土手が見えてくる。この時期は毎年、その土手の一面に菜の花が咲くのだ。

下から見上げても上から見下ろしても、右も左も、真っ黄色。土手を駆け上がり、菜の花の香りと一緒に春の風を胸いっぱい吸い込むのが最高に気持ちよく、ここ数年その土手を訪れるのが定番になっていた。

すべて自生している菜の花で、背の高いものも低いものもある。黄色い花びらを目いっぱいに開き、太陽の光を浴びてのびのびと風に揺れている。土手を反対側に下ると、川の手前にはハンググライダーの発着にも使われている大きな野原があり、大きな、真っ白いグライダーがゆっくりと滑るように降りてくるのが見える。広々としたこの場所が私も子どもたちもとても好きで、毎年来るのを楽しみにしている。

春ならではの味

菜の花の中に足を踏み入れると、ぷーんと香る油っぽいにおい。そしてあちこちでブンブンと蜂の羽音が聞こえる。ひらひらとモンシロチョウが飛ぶのも見える。暖かい日差しの中、生き物たちも春の訪れを喜んでいるようだ。

菜の花を摘む

ふと母のほうを振り返ると、母はまだ花の咲いていない若い茎をぷちぷちと摘み、持参したスーパーの袋に次々と入れていた。その姿を見てふふと笑い、思い出した。そうそう、確か去年も母が摘んで帰った菜の花を、おひたしにして食べたのだった。

春先の母は外に出ると、道端に伸びる野草をいち早く見付けては立ち止まり、「あ、こんなところにフキノトウがいっぱい生えてるよ」「この葉っぱおいしいのよ」と言いながら摘んで歩く。私には雑草と見分けがつかないが、母は迷いなく摘み取り、ハンカチに大切に包んで持って帰る。

母は野草を使った料理を食卓に並べてくれた

いつだったか取ってきたばかりのノビルをさっとゆで、酢みそを添えて食べさせてくれたことがあった。ぴりっとした辛みはエシャロットによく似て、酢みそによく合っておいしかった。ついさっきまですぐそこで根を張っていたのだと思うと、かむほどにその元気をもらえる気がしてくる。私も小さい頃は友達とノビル取りに行き、袋いっぱいのノビルを持って帰った。今ではもう、母のように見つける自信はなくなってしまったけれど。

新鮮な菜の花をパスタに

菜の花をスーパーの袋いっぱいに摘んで満足そうな母と、土手を後にした。「またおひたしにする?」という母に、何か作ってあげたくなった。そういえば、冷蔵庫にアサリがあったっけ。お昼ごはんに、アサリと菜の花のパスタを作ることにした。

フライパンでオリーブオイルを熱し、スライスしたニンニクを炒めて香りが立ったらアサリを入れる。アサリが開いたたら白ワインで蒸し、さっとゆでた菜の花を加えて塩コショウで味付けをする。ゆでたパスタを入れて和え、塩で味をととのえたらでき上がり。白ワインがなければ料理酒でもいいし、ニンニクもチューブでもいい。菜の花の新鮮さが何よりも肝心だ。

菜の花の苦みがまたいい

ちょっぴり苦みの残る菜の花のパスタを、母はおいしいと食べてくれた。春の山菜や野草の苦みには、冬の間に体にたまった老廃物を出し、体を目覚めさせてくれるはたらきがあるという。コートを脱ぐように、体の中もスッキリ軽やかにしたい春。花たちが咲き誇り、緑が美しくなる季節ももうすぐだ。

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