まき暖房は“節約キッチン”にもなる

先日のコラム「じんわりと温かい、トスカーナのまき暖房」でお伝えしたように、わが家ではガス暖房ではなくまきを使った暖房で冬を乗り切っている。

キッチンに置いているのは「cucina economica(クチーナ・エコノーミカ)」、直訳すると「節約キッチン」という暖房機。スイッチを押すだけのエアコンとは違って手がかかるけれど、森の恵みであるまきを十二分に生かして家を暖められる優れものだ。今でもお店には新品のものが売られているので、イタリアではまだまだ現役の暖房システムらしい。

まきを十二分に生かして家を暖めてくれる「クチーナ・エコノーミカ」

冬のイタリアには欠かせない「クチーナ・エコノーミカ」

クチーナ・エコノーミカはコンロとオーブン、まきストーブが一体化したシステム。窯の部分に管が通っていて、そこでまきを燃やした熱を利用して温水を作る。この温水を家中に循環させて各部屋に置いてあるラジエーターを温め、家全体の温度を上げるという仕組みだ。

長靴を履いて庭へ

暖房をつけるときにはまずゴム長靴を履いて、庭からまきを取ってくる。火をおこすには割りばしくらいの大きさのまきが必要なので、細めのまきを斧でさらに細かく割らなくてはならない。

斧を使ってまきを細かく割る

斧を使ってまきを細かく割る

ストーブの窯の中に段ボールを立て、その上に割りばしサイズのまきをふんわりと乗せ、徐々に太いまきを乗せながら火を大きくする。水温が40度になるとポンプが動き出し、温水が循環して各部屋のラジエーターが温まっていく。じんわりと室内が暖かくなるまでには1時間以上かかる。

慣れない頃はなかなか火をつけることができなくて大変だったけれど、まき生活10年目の今ではすぐに火をつけられるようになった。まきをくべるのを忘れてしまうと燃え尽きて暖房が消えてしまうのだが、まきをくべるタイミングが身に付いたのか自然と気がつくようになった。料理や仕事をしながらでも、ちょうどよいタイミングで立ち上がり、忘れずにまきをポンと入れることができるのだから不思議だ。

焼き栗やオーブン料理も

料理作りにも役立つ

料理も作れて一石二鳥

クチーナ・エコノーミカの上部はコンロになっていて、鍋を直火にかけることができる。冬場はここで調理をしたり、お茶や湯たんぽ用の湯を沸かしたりする。

上面に栗を転がしておけば、焼き栗やアーモンドのローストを作ることもできる。オーブンの機能もある。あまり細かく温度調節ができないのでケーキを焼くのは難しいけれど、ラザニアや野菜のオーブン焼きといった冬にぴったりのオーブン料理を作ることもある。料理以外にも、暖房機の上に洗濯物を干して乾かすこともできる。

ナッツのローストも簡単に作れる

アーモンドのローストも簡単に作れる

こうしてまきで暖をとるわが家だが、どんなにまきを焚いても室内の温度が20度を超えることはない。だから冬場は皆、家の中でもセーターを来ている。

普段まき暖房に火を入れるのは夕方6時ごろ、料理を始める時間帯からだ。ヨーロッパの石造りの家はいったん室内を暖めるとしばらくは暖かさが続く。それでも朝はヒンヤリと寒いので、かなり着込んでキッチンへと降りて行く。

木を切り、さまざまな大きさのまきを用意し、火をおこし、忘れないように保ち続ける――。まき生活を始めて、冬に家を暖めるということがどれだけ大変であるかを実感するようになった。再生可能なエネルギーとして、森から受ける恩恵としてのまきを、私はこれからも大切に使い続けたいと思う。

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