じんわりと温かい、トスカーナのまき暖房

わが家の暖房は、全て薪(まき)を使った暖房だ。

スイッチ一つで温風が吹き出し、あっという間に部屋の中が温まってしまうエアコンと違い、まき暖房は、まきを切ったり割ったり、火をつけたり追加のまきをくべたりと、結構手がかかる。家全体を暖めるのにもかなりの時間を要する。

それでも、炎が生み出すじんわりとした暖かさは格別だ。

電気代が高いイタリア

日本と比べると、イタリアの電気代はとても高い。

イタリアには原子力発電所が1つもなく、電力の大部分をフランスやスイスといった周辺の国から購入しているということが大きな理由の一つだ。

市街地の家庭では、ガスでボイラーの水を沸かし、それを各部屋のラジエーターに回して、部屋を暖めるというパターンが一般的。ただし暖房にガスを使えるのは、都市ガスが通っている地域に限定される。

イタリアの郊外ではまき暖房が一般的だ

イタリアの郊外ではまき暖房が一般的だ

イタリアでは市街地を外れると、県道沿いを除いて都市ガスが通っていない地域が多い。都市ガスがない場合は、GPLという充填式のガスタンクを使うのだが、これが本当に高い。GPLガスで暖房をすると、暖房と調理だけで、ガス代が1カ月で500ユーロ(6万円)なんて言うこともありうる。

だからガス暖房で家を温めることなど考えられない。イタリアでは、わが家のような郊外の一軒家では、まき暖房に頼るのが普通だ。

再生可能な森づくり

私が住んでいるフィレンツェの北側の郊外では、深い森がある山に囲まれていて、まき用の木は豊富にある。1年を通じて山から木を切り出して、夏の間に乾燥させるのは、「ボスカイウオーロ」と呼ばれる木こりの仕事。ボスコ(bosco)とは森という意味。木こりはまさに森の守人である。

木こりは大きなチェーンソーを使い、木を切り出してトラックに積み、乾燥させる場所に積む。秋前になると乾燥した木を再びトラックに積み、オーダーのあった家庭に持って行く。厳しくて危険も伴う仕事だが、イタリアの山間部では需要のある大切な仕事だ。彼らの年齢層も幅広い。

森にはまきの材料となる木がたくさんある

まきはひと冬使える分をまとめて買う

木こりは森の手入れを兼ねて定期的に木を切る。だから数年たって新しい木が育った頃に再び切り出すという、自然のサイクルがうまく回っている。森の掃除をすることで、残った木はより葉を茂らすことができるしより多くの酸素を出してくれる。人間がまきを燃やして排出する二酸化炭素の量とうまい具合に釣り合うのだ。

切り出す種類の木は、ナラやカシ、アカシアなど。マツ科の木だと火のつき始めはいいのだが、マツの脂(やに)が煙突を汚すのでまきには向かない。

まきの相場は、1メートルの長さの丸太が100kgで12ユーロ、そのまま暖炉に入れられる大きさに切り分けたものが100kgで16〜18ユーロ。

わが家では、安い1メートルの丸太をひと冬で4トン分買って、1週間ごとにまとめて自分たちで切り分けて使っている。買った丸太は濡れないようにビニールシートで覆って保存しておく。

まる太を切り分けるのは、夫、アントネッロの仕事

まる太を切り分けるのは、夫、アントネッロの仕事

わが家で丸太を切り分けるのは夫のアントネッロの仕事だ。束ねた数本の丸太を、上からチェーンソーで一気に切り分ける。大きすぎる丸太はさらにおので割る。かなりの運動になるようで、真冬でもまき割りをした後はアントネッロは汗でびっしょりになっている。割ったまきは、ボイラーがあるキッチン前の屋根付きのまき置き場に運んで積んでおく。

まきを切って運んで。スイッチ一つで済ませていた「暖をとる」という行為が、まき生活をし始めて変わった。人間にとって、冬の住居空間を暖めるということが、どれだけ大変であるかを実感するようになったのだ。

暖を取るのは大変な仕事

暖を取るのは大変な仕事

都市空間ではなかなか難しいかもしれないが、ここは森に囲まれている環境。再生可能なエネルギーであるまきを、森から受ける恩恵として、これからも大切に使い続けたいと思う。

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