イタリアの秋を感じる、ぶどうのスキアッチャータ

9月、10月にしか食べることができないフィレンツェの名物菓子がある。Schiacciata con l’uva。ぶどうのスキアッチャータだ。

柔らかめのフォカッチャの生地でぶどうを皮ごとサンドし、さらに上側にもギュウギュウと押し付け、砂糖を振りかけて焼き上げた素朴な伝統菓子。夏の終わりにぶどうのスキアッチャータが切り売りされ始めると、秋の気配を感じる。

種入りの不思議な食感

パン屋さんではもちろんお菓子屋さんやバールでも、秋になるとぶどうのスキアッチャータが売られ始める。皆、一切れに四角く切ってもらってオヤツとして食べたり、量り売りしてもらって家で食べたりする。スーパーでは、わざわざスキアッチャータ用のぶどうが売られていて、家庭で手作りする人も多い。

スキアッチャータとは「押し潰した」という意味。通常は、オリーブオイルを上に塗った塩味のフォカッチャのことをスキアッチャータと呼ぶが、秋の名物であるぶどうのスキアッチャータは甘いお菓子だ。

ワインにもつかわれる「カナイオーラ」

ワインにもつかわれる「カナイオーラ」

使うぶどうはトスカーナワインの仕込みに使われるカナイオーラと呼ばれる種類で、種が入っている。

種や皮ごとお菓子にしてしまうので、一口食べると、種が歯に当たり、ガリガリするという不思議な食感だ。きっと、日本だったら丁寧に種を取り除いたり、種なしぶどうを使って、“食感のよい”お菓子にしてしまうのだろう。

だがここはイタリア。バリバリとそのまま食べて飲み込む。これに慣れると、たまに遭遇する「種なしぶどうのスキアッチャータ」がとても物足りなく感じる。

旬のぶどうをふんだんに

2層にした生地の間に、隙き間がないほどたくさんのぶどうを並べ、さらには上に乗せた生地の上面にもギュウギュウと隙き間なくぶどうを押し付ける。汁が出て、生地に浸み込み、生地は膨らむどころかねちゃっとしてしまうのだが、それもまたこのぶどうのスキアッチャータのおいしさだ。

ぶどうの収穫で忙しいこの時期、農家のお母さんが手近にある材料で手早く作っていたお菓子なのだろう。大きく焼いたスキアッチャータを、収穫作業の合間に、皆で切り分けて、ぶどう畑でワイワイ食べたら、それはきっと、とびきりおいしいだろう。

ぶどうのスキアッチャータは、香辛料として使われるアニスシードも効いていて、大人な雰囲気が漂う。どこかとがった不思議な魅力のある、9~10月限定の、フィレンツェの秋のお菓子だ。

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