茶香炉と番茶でほのかな香りを楽しむ

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昔、暮らしの中にアロマがある、というライフスタイルにあこがれて、アロマオイルとポットを買ったことがある。ミントやユーカリなど一部の精油(アロマオイル)は、虫よけや花粉症にも効果があるとも聞いていた。

しかし、ほどなくしてそれらすべてを手放すことにした。理由は、一緒に暮らしている猫たちの健康だ。

自然の植物の香りと違い、成分の凝縮された精油は猫にとって強すぎるらしい。かかりつけの獣医にも尋ねてみたところ、人や犬には無害でも、猫には分解・解毒できない酵素などが多く存在すると教えられた。精油由来の香りもその一つだった。

アロマに深くあこがれのあった当時の私にとって、それは大きな衝撃ではあったが、愛猫たちのためには早めに気づいてよかったのだと思う。

番茶や茎茶で十分

とはいえ、香りとともにある生活へのあこがれは、依然あった。

そんなとき、偶然、母と訪れたのが地元の茶屋だった。そこは文字どおりお茶の香りで満たされていたのだが、部屋の中心に置かれていたのが茶香炉だ。

茶葉を

茶葉を上皿に乗せて下から熱する

趣深い姿、そして、漂ってくる何とも言えない芳香。精油とはまた違った香りの楽しみを茶香炉に見いだすことになった。

茶香炉の基本的な構造は、茶葉を上皿に乗せ、下からティキャンドルで熱するというもの。「焙(ほう)じる」ことにもなるため、使用後の茶葉を焙じ茶として活用することもできる。

使う茶葉には茎茶がいいと教えられたが、私はそのとき家にあるものを使う。意外にも高級茶とされる玉露などは茶香炉向きではないそうだ。細かい茶葉ほど香りが立つ一方で焦げやすいため、粉茶などを使う場合はときどき皿の上をかき混ぜる必要がある。

香炉用にした茶葉

香炉用にした茶葉

わが家で常備しているのは、一般的には下級茶とされる番茶。香炉専用に徳用茎茶を買ったり、緑茶をあまり飲まない友人から少し古くなってしまった茶葉をもらったりもする。それでも十分、満足いく香りが得られる。

ふわりと届く香り

実は茶香炉向きと言われる茎茶を6~8畳の部屋でたいても、精油と比べると、ほとんど香りがしないこともある。しかし部屋を出て戻ってきた瞬間や、香炉の近くを歩いたときに、ふわりと動いた空気に乗ってお茶の香りが鼻に届く。それがなんとも言えない安らぎなのだ。

ほのかに漂う

芳香はとても穏やか

その香りには、夏には爽やかな清涼感を覚えるし、冬には温かみを感じる。とても不思議な感覚だ。芳香が穏やかなためか、アロマオイルをたいていた頃よりも、男性の訪問客に喜ばれることに驚いた。

茶香炉を使うと緑茶のカテキンによる消臭効果も期待できるという。先日、魚を焼いた後に茶香炉をたいてみると、いつもよりニオイが早く消えた。

茶香炉にはなかなか近づかない猫

茶香炉にはなかなか近づかない猫

茶香炉は普段猫のいるリビングではたかず、猫が立ち入らないキッチンで愛用している。そのため猫にイタズラされてしまったことはない。目の前にあったとしても、炎がちらついている状態であれば、猫は滅多なことでは近づかない。

電池式の方が安全かもしれないが、猫が手を出しにくいという意味では、キャンドル仕様の茶香炉はわが家に合っていた。とはいえ小さなお子さんがいる家庭なら、子どもの手の届かない場所でたいたり、大人だけが起きている時間に使ったりするほうがいいかもしれない。

炎の揺らめき

香りはもちろん、炎の揺らめきや、茶香炉から漏れ出る光の趣きにも癒やされる。

肉球を逆さにしたように見える

肉球を逆さにしたように見える

わが家の茶香炉は本体が穴だらけなのだが、ある日気づいた。穴の模様が猫の肉球のようだ、と。

なんだかずんぐりした岩のような風采の中に、そんな仕掛けが隠されていた。気づいて以来ぐっと愛着が増し、茶香炉を使う回数も増えた。

部屋を暗くして使うことも

部屋を暗くして使うことも

なんだか気持ちが沈んでしまうときは、茶香炉に火をつけて照明を落とし、壁に映し出される模様を眺めながら、穏やかに深呼吸している。炎の光とほのかな香りに包まれていると、少しずつ元気が湧いてくる。

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