ぶどうが実るトスカーナ

森の木々の葉が少し黄色っぽくなって来た頃、わが家の庭先のぶどう棚にも、ぶどうが実った。そろそろ食べ頃だ。

毎朝洗濯物を干しに行くとき、ぶどう棚の下を通るたびに手を伸ばし、おいしそうな一粒をついつい味見してしまう。3年前に夫のアントネッロが苗を植えたぶどうの木には去年から少しずつ実がなり始め、今年はずいぶんたくさんの量が収穫できた。

皮ごと種ごと食べる

それでも、ワインを作るほどの量ではないから、デザートとして食後に食べている。イタリア人はぶどうを食べるときに皮をむかない。盛り皿から食べたい分だけ房ごと切り取り、皮ごと種ごとムシャムシャと食べる。

イタリア人にとって、豊富にある果物の中でぶどうは最も身近なフルーツなのだろう。朝市の果物の屋台でもさまざまな種類のぶどうが山盛りになって売られている。陶器の伝統柄や銀製品のモチーフとしてもぶどうやぶどうの葉、つるをよく見掛ける。

9割がワインに

ワインの国イタリアで、特に良質のワインを生産しているトスカーナ州。州内でぶどうを栽培している農家は大小合わせて18万軒もあり、面積にすると5万8000ヘクタールにも上る。

栽培されるぶどうの90%がワイン用になり、残りは食用果実として販売される。トスカーナワインは、国内はもちろんイタリア以外でも人気があるから輸出量も多い。

ワイン

今年はワインの当たり年になりそうだ

今年は雨が少なかったものの、8月は気候が順調で、9月もお天気続きだった。だから、ワイン用のぶどうの収穫は遅めに始まった。例年に比べるとぶどうの収穫量は少ないが、質はとてもよく、ワインの当たり年になりそうだ。

ワイン農家では、天気予報とにらめっこをしながら、収穫するタイミングを計る。よく熟させて糖度をできるだけ上げたいけれど、雨が降ったり朝の湿気が増えてくると、カビの病気が発生してしまうからだ。収穫のタイミングは、ワインの出来を左右する大切な要素の一つ。例年に比べると遅めの9月後半に始まった収穫は、おそらく10月の1週目には終わるだろう。

家族で収穫する

家族や友人たちと収穫する農家も多い

小さな農家の場合、ぶどうの収穫は家族や友人など、身内で行ってしまう。一日か二日で終わるので、週末に家族が収穫のために集まる。

数年前に一度、私も小さなワイン農家を営む友人を手伝ったことがある。朝から友人や家族、親戚一同が集まり、皆わくわくしながら指示を待った。役割分担をされ、いよいよハサミを手にしてぶどうの収穫。手にずっしりと重い大きな房が見つかると何ともうれしい。ここまでぶどうを大切に育てた人の喜びを分けてもらえたような気持ちになる。

ワインへと変化する時の流れ

朝からはたらき、お昼は畑でピクニック。手早く食べてすぐに作業に戻るのではなく、パスタもありお肉もあり、ちょっとした持ち寄りパーティだ。しっかり食べてワインも飲んで、一休みしてからコーヒーを飲んで、午後の作業だ。夕暮れまでに終わらせなくてはいけないから、だんだん忙しくなる。

収穫されたぶどうをその場で絞り、金属タンクに入れてしばらく発酵を待つ。木樽に移されるのはまだまだ先だ。収穫の慌ただしさとは一転して、沸々とぶどうが発酵してくるのを待つここでの時間は、静かで、どこか神聖な感じがする。ぶどうがワインへと変化する奇跡の時間。

収穫が終わると、ぶどうの葉は一気に赤くなり、秋のトスカーナの風景によく映える。

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