ちっちゃくたって食パンだ

時々、パンを焼いている。

何年か前にホームベーカリーを買い、自宅でパンを焼いてみたら、そのおいしさにはまった。小麦粉の状態が変化するのが面白く、手でこねるパンにも挑戦した。台所の小さなコンベクションオーブンで、丸パンや総菜パンを時々焼いて楽しむようにもなった。

そうやってパンの世界にハマって甘いパンやしょっぱいパンを作って食べているうちに、普段食べているような、真っ白な食パンが焼きたくなった。

残さず食べられるサイズ

小麦の味がする、シンプルな食パン。それもホームベーカリーのように大きくてふわふわのパンではなく、小麦がみちっと詰まった小ぶりなものがいい。

子どもたちが残さず食べられるサイズの小さな食パンが焼けないものか。こんがり焼いた小さな角食パンをかじる子どもたちを想像したら、焼きたくてたまらなくなった。

ところが焼きたくなったからといってうちにはトースターサイズのコンベクションオーブンしかないし、そもそも食パン用の角型も持っていない。持っていたところでコンベクションオーブンには入らないから焼くすべがない。

そうだよな、作れないならお店で買うしかないんだよなとあきらめていた。そんなある日、たまたま立ち寄った食材店の片隅で見つけたのだ。まるでパウンド型のような、細長いパン型を。

長さ25センチで、高さが6センチの角型。ちゃんとふたもある。

この小さなサイズでパンが焼けるの? そう疑いつつ、角型を上から横から眺めたりふたを開け閉めしたりしてしばらく悩んだ。小さい食パンが焼きたいのは確かだが、ここまで小さなサイズだとどうなのだろう。頭の中で6センチ四方の小さい食パンを想像してみる。……かわいい。

小さな角型はわが家にやってきた。そして台所で小さな角型を前に、まるで娘が小さい頃に遊んでいた赤ちゃん人形「ぽぽちゃん」が食べるような、小さな食パン作りが始まった。

生地はホームベーカリーで作る。生地の量を確認するために、まずはふたをせず、山型パンで練習することにした。

強力粉は1斤分よりちょっと少な目の210グラム。これを五つに等分してくるりとまるめ、型に入れて焼く。コンベクションオーブンのサイズにもぴたりと合った小さな角型に入れ、180度で30分焼いてみた。

Photo by 富澤商店

ふたをすればましかくに焼ける Photo by 富澤商店

30分後、取り出した型からは、こんがり、ほかほかと小さな山が五つ盛り上がっていた。

横から見るとまるで芋虫のような、もこもこしたパンの山。さっそくナイフで切り分けてみる。

サイズ感がわかりづらいと思うので、りんごと比較。IMG_5943かわいい。かわいいのだ。手のひらにすっぽりと収まる、この小さな食パンが。小さくても、ちゃんと食パンなのだ。

自分で作ったくせに、「ちっちゃくたって食パンなんだぞ」と頑張っているようなそのいじらしさが愛おしい。食パンに母性など感じてどうするんだと思いつつも「ちっちゃいねぇ、かわいいねぇ」と食パンがまるで赤ちゃんを見立てるかのごとく、声を掛けたくなってしまった。

まずはサンドイッチ

この小さな食パンをどうやって食べるかは、焼いている時に決めていた。そのままがぶりと食べられるサンドイッチ。これしかない。

食パンを5ミリくらいの厚さに切り分け、好きなものを挟んで食べる。小さいから、挟む量は少しで大丈夫。冷蔵庫にハムとスライスチーズが1枚あったら、それぞれ四分の一ずつ挟むとちょうどいい。キュウリも卵もスライス1枚で十分だ。

何を挟むにしても少しの量でいいから、冷蔵庫の中に残った食材でいろいろできる。せっかくならば普段しないような組み合わせのものを挟もうと思った。冷蔵庫をのぞいて、ちょっとずつ残っていたあんことクリームチーズ、そしてバナナが目に留まった。

できあがった二種類のサンドイッチは、あんこ&クリームチーズ、そしてピーナツバター&バナナ。ちょっと変わった組み合わせのようだけれど、予想外においしい。IMG_5960小さいけれど食パンだからちゃんと耳もある。挟むものとパンの量とのバランスが絶妙で、ハンバーガーをかじったときのように、具が飛び出てきそうなボリューム感も味わえる。並べれば普通の食パンの8枚切りが1枚分くらいはあるから、おなかも満足してしまう。

子どもたちはこのパンを一目見て、「わー!かわいい」と飛びついた。「食パンの赤ちゃんだね」と言いながら、ぱくりぱくりとあっという間に平らげてしまった。普段は8枚切りのパン1枚すら残す息子も、二つのサンドイッチをぺろり。見た目の力は、すごい。

Photo by 富澤商店

オープンサンドにも Photo by 富澤商店

この小さい食パン、サンドイッチではなく、ぶ厚く切ってたっぷりのバターとはちみつをかけてもきっとおいしい。バターと砂糖をぬってトースターで焼けば、ラスクのようにもなりそう。

ひとつだけ難点を挙げるなら、サンドイッチにして食べるとすぐになくなってしまうこと。近頃の私は、サンドイッチをやめて普通にスライスしてけちけちと食べている。それでも分厚く切ってしまうので、結局同じことなのだけれど。

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