味のある家具たちとの暮らし

2年半前、念願だった家を建てた。

昔からインテリア雑誌や建築雑誌を見るのが好きだった私は、「もし家を持つなら、こんなふうに」と、理想の家を勝手に思い描いていた。

そしていざ家を持つという夢がかなったとき、現実を目の当たりにした。そう、「予算」という名の大きな壁……。

その壁にはねのけられながらも、それなりにこだわって造った家。でも、やはり理想とは少し違った。だから間取り図を手にしたとき、「家具だけは100パーセント思い通りに」と心に決めたのだった。

ていねいに作られた家具

まだ家を持つことが現実的ではなかった頃からあこがれていたのが、「広松木工」の家具だった。

福岡に本社のある広松木工は、「自分たちがよいと思うもの、美しいと感じるものを作り続ける」という信念のもと、一つひとつの家具を丁寧に作っている。私たちは、流行にとらわれず「よいもの」をひたすら追求し続ける職人さん方の強い信念と、そうして生み出された美しく思いのこもった家具に魅了された。

とはいえ、私たちにとっては一生モノの家具となるはず。たくさんの店をまわって膨大な量の家具を見てきたが、最終的に決めたのはやっぱり広松木工だった。写真② ソファは、ウォールナットのダイナミックな木目がお気に入り。天然木の温かさと、スチール脚の質感が何とも言えない調和を生み出している。温かくもありながらシャープなデザインが、リビングをスッキリ広く見せてくれる。

座面も硬めでしっかりしていて、カバーも頑丈だ。カバーはたとえ子供たちが汚してしまっても、自宅でザバザバ洗えるので、おおらかな気持ちで構えていられる。天然木の風合いを損なわないように、わが家では定期的に木工用の「みつろうクリーム」(尾山製材)を塗っている。

みつろうクリームを塗るのは、なかなか大変な作業。座面とスチール脚を除く木製部分に、クリームを塗り広げて、まずは30分置いておく。その後、乾いた布で乾拭きをして仕上げる。

慣れない姿勢で汗だくになりながら作業を終え、きれいになった木目を眺めてビールを飲む。最高に幸せなひとときだ。

小さな傷も味のうち

このソファがわが家に来た日のことは、今でも鮮明に記憶している。

あこがれだったソファがついに届き、もったいなくて座れずにしみじみ座面をさすっていたのだが…。気づけば子供たちがソファにピョンピョンと飛び乗って、跳ねているではないか。写真③とりわけ幼かった次男にとっては、このソファが大きな遊具のように見えたのだろう。「これが、お母さんが欲しかったソファ? 大きいねぇ! よかったねぇ!」。ピョンピョン跳ねながらも、私を気遣う子供たちの声に、うれしくてちょっと泣きそうだった。

もちろん、泣きそうになりながらも「もう、これ以上跳ねないで」と必死に止めに入ったこともしっかりと記憶している。

今でもモノを乱暴に扱うことがある子供たちだが、このソファはびくともしない。小さな傷はいっぱいついたが、その傷も家族の暮らしの記憶として、ダイナミックな木目にさらに一味加えている。写真④テレビボードは、繊細な格子のデザインと、重厚な天板の作りがたまらなく好きだ。扉を閉じたままでもリモコン操作ができるのもありがたい。これだけで十分存在感があるので、飾りも控えめにしている。

手を加えてさらにいとおしく

丸テーブルもそう。広松木工の本店で年に一度だけ開催される「スプリングフェア」で出合った天板。実はこの天板、ショップの隅っこに置かれ、破格に安く売られていたものだった。ソファと一体感が出るように、アイアン製の脚を購入し自分たちで取り付けた。写真⑤どこか懐かしい古ぼけた感じが、何十年も使い続けてきたような錯覚さえ覚えるから不思議でたまらない。脚を付けただけではあるが、「自分たちで手を加えた」ということで、いっそう愛着がわいた。

最後にダイニングチェア。細く美しいアームのデザインに、職人さんの丁寧な手仕事を感じることができる。チェア越しに眺めるリビングの風景が、私はとても好きだ。写真⑦正直なところ、家については「もう一度建てたい」「ここをやり直したい」と思う事も多くあるが、広松木工の家具にだけは何の不満もない。小さな傷も愛おしく、面倒だと思っていたメンテナンス作業もなぜか楽しい。

本物の家具は、使い続けるうちに増える傷も染みも、すべてが「味」になる。これから先も「味」のある時間を、この家具たちと一緒に重ねていきたいと思う。

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