わが家の畑と“イタリア野菜”

わが家の段々畑

わが家の段々畑

18年前、私たちがまだ、フィレンツェの反対側の丘に住んでいた頃のこと。近所に住む日本人の友人が、趣味で野菜作りをしていてとても楽しそうだった。

華奢な彼女が、くわを担いで楽しそうに家庭菜園に向かう姿をよく見掛けた。そんな彼女を見ながら、マイホームを買う時にはこんなふうに畑を作りたいな、できればキッチンの前に畑があったら便利だろうな……とぼんやりと思っていた。これが、私が畑に興味を持つきっかけとなった。

ひたすら耕した段々畑

結婚後、土地付きの一軒家を見つけて、部屋の扉もできていない頃に着手したのがキッチン前の畑作りだった。

まずは、茨や雑木を斧で切り倒し、地中の奥深くまで伸びた根を掘り返して、くわで土を砕いた。理想の畑をイメージしながら、ひたすら耕した。そうして出来上がったのが、土地の傾斜を生かした段々畑。 畑仕事が忙しくなるのは、種まきが始まる4月。5月の末にトマトやズッキーニの苗を植え付けて、6月半ばからキュウリやズッキーニ、7月半ばからミニトマトやナスといった夏野菜の収穫が始まる。

あくまでも家庭菜園だから、家族が食べる分だけを作る。ズッキーニやキュウリは、時期をずらして2回に分けて植え付けをすると、長い期間収穫できる。

日本の野菜と比べると、同じ野菜でも質感や味がずいぶん違う。昔は、日本と違う=おいしくない、と決めつけていた。でも最近は、イタリアの野菜に合った調理法で調理すればとてもおいしくなると思うようになった。

カボチャはパスタで

たとえば、日本のキュウリは、皮ごと食べられて、パリッとした歯ごたえがある。イタリアのキュウリは、皮がとても固いのでピーラーでむく。種も大きいので、縦半分に割って、種を取り除いてから切り分ける。

カボチャはとても水っぽくて、どんなに熱を加えても繊維が残ってしまう。プーリアに住む義母は、カボチャがクリーム状になるまで、スモークタイプのパンチェッタ(豚バラ肉)、タマネギと一緒にしっかり炒め、ゆでたコンキリエという貝殻状のパスタに絡ませる。この食べ方は、イタリアのカボチャでないとおいしくできない。

日本ではトマトは皮を湯むきすることもあるようだが、イタリアのトマトは皮をむかない。イタリアのトマトの皮には歯ごたえがあって、トマト独特のよい香りがする。

生では固くて食べられないキャベツも、根気よく加熱すると、独特の甘みが出ておいしくなる。

ズッキーニの花

ズッキーニの花

今では日本でも一般的になった夏野菜ズッキーニ。

私がイタリアに来たばかりの学生時代には、まだ日本でズッキーニが広く知られていなかった。だから、「イタリアにはこんなおいしい野菜があるのか!」と、下宿先で毎日ズッキーニのパスタばかり食べていた。

ズッキーニは日本だと炒めたりフライにするというイメージなのだろうけど、イタリアでの調理方法はもっと幅広い。細切りにしてレモンでマリネにしたり、ゆでたり蒸したりしてもおいしい。

7月は“ズッキーニの月”

私にとって、7月はズッキーニの月。

7月に入り夜の気温が上がってくると、小さかった苗が急に大きくなり、毎朝、黄色い美しい花が咲くようになる。その下から、次から次へと実が成長し、あっという間に大きくなる。食べ頃を逃すと味が抜けるので、ちょうどよい大きさで収穫し、どんどん食べる。

イタリアには色んな種類のズッキーニがあり、地方ごとにもかなり特色がある。

ズッキーニの苗

フィオレンティーノの株

フィレンツェで一般的に栽培されているのは、フィオレンティーノと呼ばれる、薄い緑色の地元種のズッキーニ。株が恐ろしく大きくなるので、苗と苗の間を最低でも1メートルは離さないとうまく育たない。表面には独特のとがりがあり、輪切りにすると星形になる。

日本でよく売られている、ツルっとした緑色のミラノ種に比べると、水気が少なく加熱しても崩れにくい。そして、味も日本のズッキーニよりよいと思うのは、私が地元びいきだからかもしれない。

冷たいズッキーニのマリネ

収穫した大量のズッキーニをモリモリ食べられるレシピとして重宝しているのが、「蒸したズッキーニのマリネ」。夫のアントネッロから教わった。

とても簡単で、暑くて食欲がないときでも(私の場合はめったにないが)食が進む一品だ。zucchininomarine用意するのは、ズッキーニ、ニンニクのみじん切り、白ワインビネガー、オリーブオイル、塩、ミントの葉。分量は適当に。

<作り方>

1.ズッキーニは洗って、両端を切り落とし、ゴロンと一本そのまま蒸し器で蒸す。

2.歯ごたえが残るくらいで火を止め、冷ましておく。

3.ズッキーニを食べ易い大きさに切り分け、ニンニクのみじん切り、白ワインビネガー、オリーブオイル、塩、ミントの葉を加えて混ぜ合わせる。

食べる前に冷蔵庫で冷やしてもおいしい。

外のテーブルで、ズッキーニのマリネをつまみに、キンキンに冷やした白ワインで「アペリティーボ」。6月末に中学校が終了したら、南イタリアのプーリア州の義父、義母の海の家にサッサと行ってしまった娘のユキは、宿題なしのバカンスを存分に楽しんでいるらしい。

アントネッロと私、二人だけの食卓でも、「ユキは今頃何しているかしら」「今日は電話あった?」と娘の話題になってしまう。

昼間の暑さが少し和らぎ、森から涼しい風が吹いて来た。山の夜はゆっくりとふける。

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