チェリーピッターとチェリージャム

IMG_04361

小さい頃から、アメリカンチェリーが好きだった。私の母もアメリカンチェリーが好きで、初夏~夏にかけてスーパーの果物売り場にアメリカンチェリーが並び始めると、おやつによく買ってきてくれた。母がアメリカンチェリーをざるに盛り、ぱくぱくとつまみ食いする姿も、なんとなく覚えている。

アメリカンチェリーには当たりハズレがある。当たりは皮に張りがあり、果肉はしっかりしているのにジューシーでとっても甘い。ハズレのアメリカンチェリーといったらこれとは真逆で、皮はぶよぶよ、熟れ過ぎて甘くも酸っぱくもなく、果肉がどうも水っぽい。口に入れてかじった瞬間、「あ、ハズれた」とわかる。

IMG_3912

買ったものが当たりばかりの時もあるが、大抵ひとパックにいくつかはハズレが入っている。でも見た目にはわからないので、気をつけていても時々ハズレを食べてしまう。

そうすると悔しくて、次は甘いのを、最後の一粒は甘いのをといつまでも食べ続けることになり、気づけばざるに盛られたアメリカンチェリーはどんどんなくなってしまうのだった。母は、「お母さん、全然食べていないのよ」といつもあきれていたものだ。そしてそんな食べ方をしてしまうのは、大人になった今も変わらない。

アメリカンチェリーをジャムにしてみようと思ったのは、買った1パックがハズレだらけだった時のこと。安くなっていたアメリカンチェリーを買って帰って食べてみると、なんとこれが熟しすぎたハズレばかり、ということがあった。その時はだましだまし食べ切ったのだが、食べながら「これをジャムにできたら、ハズレでもおいしく食べられるんじゃないか」と思ったのだ。

IMG_3890

同じ頃、ふと入った銀座の松屋で、これを見つけたのだった。「オクソーのチェリーピッター」。

台所道具は一つで何役もこなせるものがいい。専用の道具なんて、モノがどんどん増えるだけ。そんなことはよくわかっている。このチェリーピッターはさくらんぼの種抜きとしてしか使えない。種の抜き方を工夫すれば、必要のない道具かもしれない。

でも、道具をどうやって便利に使うかは、その人の作る料理やかけられる時間、作業の得意・不得意で、自分で決めていいのだと思う。包丁じゃなくチェリーピッターを使いたいなと思ったら使えばいい。正解なんてない。何より、いいなぁ、欲しいなぁと思って手に入れた道具は、台所しごとを豊かにしてくれる。これってすごく大事なことだ。

……とか何とか言ってまぁ、私の場合、大好きなアメリカンチェリーをジャムにして、最後のハズレの一粒までおいしく食べるため。それだけのために何も考えず買ったのだけれど(笑)

IMG_3913

オクソーのチェリーピッターは、ホルダーにチェリーをのせて一握りするだけで、パチンという音を立てて、面白いように種が抜ける。ホルダーにはカバーがついているので、種を抜いたときに実がまわりに飛び散らない。カバーは外して洗うことができるので、カバーもホルダーもいつも清潔に保てる。

この種抜きが面白いったらない。丸いくぼみにチェリーを乗せ、真ん中の種めがけてまっすぐ、ホチキスを留めるようにパチン、パチンと抜いていく。子どもたちも「やらせてやらせてー」とやってきて、みんなでパチパチと種抜きをする。

チェリージャムの作り方

【材料】

  • アメリカンチェリー 400~500グラム
  • グラニュー糖 アメリカンチェリーの半量弱
  • レモン汁(ポッカレモンでOK) 大さじ2

【作り方】

  1. アメリカンチェリーを軽く洗って水に浸し、何度か水を変える。
  2. 1.の水気を切って、1粒ずつ拭きながら種を抜く。種抜き器がなければ、ナイフで切り込みを入れ種を抜く。
  3. 2.とグラニュー糖・レモン汁を鍋に入れ、20分程煮込んで出来上がり。

IMG_0434

「え、こんなにさらっとしているのに?」と思うくらいで火を止めて大丈夫。時間が経つととろみが出てきて、しっかり冷めるとちゃーんとジャムになる。

出来上がったジャムは極上の味! 市販のチェリーの瓶詰めを想像するとものすごく甘い味が思い浮かぶかもしれないが、手作りのジャムには果肉がしっかり残っていて、酸味もちゃんとある。本当においしい。

IMG_0454

トーストにも、ヨーグルトにも。中でも私のお気に入りは、市販の飲むヨーグルトを使って作るアイスバー。これに、たらりとジャムをたらすと、たまらない。ジャムのために買ってきたひとパックのアメリカンチェリーは、当たりも、多分あったハズレも、ぜーんぶおいしく食べ切れてしまう。

IMG_4072

こうやって自分のやりたい仕事にぴたりとはまった道具は、たとえそれが一つの役目しか果たせなくても、いいなぁ、愛おしいなあと思う。チェリーピッターがあるから、去年も今年も来年も、チェリージャム作りが夏の定番の台所しごとになっていく。

道具からはじまる台所しごとも、あっていい。だって、楽しいんだから。それでいいのだ。

  • この記事をシェア
トップへ戻る